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第22.4話 父娘4 -the Past of Ayana-

「ねぇ、彩奈。一緒にアイドルやらない?」

大学に入り、穏やかでありつつも無為な日々を過ごしていた大学2年の折、2限を終え学食へと向かっていたところ、新垣に呼び止められる。

彼女の傍らに佇む種田の表情は、破顔一笑という言葉が似つかわしい。


「……え、どうしたの急に」

あまりにも突拍子のない発言に思考が追い付かず、ワンテンポおいて口をついて出たのは、陳腐な返答。

元々鈍臭くて人付き合いも下手な上、家では蝶よ花よと過保護に育てられた結果、今の自分が浮世離れしている自覚は十分にある。

顔立ちと歌唱力は確かに平均よりも秀でていると認識しているものの、ダンス力、トーク力、愛嬌……といった要素を持ち合わせているわけでもなく、新垣が自分を誘う理由が全く思いつかない。


「今度学祭があるじゃん。昨日優美と話していたんだけど、去年は何にもしないまま終わっちゃったし、今年は何かやりたいねーって話題になってさ。サークルに入っていない私たちが何かできるとすれば、有志で申し込みができるステージ参加かなって」

新垣の説明に合点がいく。


「あぁ、千里ちゃんも優美もアイドル好きだもんね。それをそのまま出し物のネタにしようってことになったのね」

「ご明察!昨日の段階ですっかり二人で盛り上がっちゃって。アレもコレもやりたい……なんて延々語り合ってさ」

種田が鼻息荒くして、揚々と捲し立てる。


「言いたいことは分かったけど、何で私?知ってのとおり、私ってトロいし、そういうのではあんまり貢献できないと思うよ」

「そりゃー、彩奈と一緒にやりたいから?所詮学祭のお遊びだし、より楽しくできる方がいいに決まってんじゃん。ってか、彩奈はビジュアルでも歌の上手さでも超絶戦力だって」

こういうグッとくることをサラッと言いのけるあたりが、新垣が男女問わず人気を博している理由なんだろうな……と、話を聞きながらとりとめのないことを考える。


「……分かったわ。せっかく誘ってもらったし」

逡巡ののち、了承の返事を二人へ打ち返す。

新垣の言葉に絆されたのもそうであるが、自身が抱く劣等感を拂拭する機会たり得るのでは、との期待。

小学生から中学生にかけての時分に男子からドンくさいと揶揄われ続けて以降、心にはずっととげが刺さったままである。

恋愛に今のところ興味はないが、男性に恋慕の情を抱かせるようになれば、ようやく彼らを上の立場から見下ろすことができるのではないか。

そのために自ら動き始める勇気はなかったが、その契機を外生的に与えられるのであれば、それに乗っからない理由などありはしない。


尤も、新垣たちの軽いノリで始めた活動が、後々自分の身の振り方を大きく左右することになるなど、当時は思いもしなかった。


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