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第22.2話 父娘2

田中との打ち合わせから戻り迎えた夜、何もする気力が湧かずダラダラしていたところ、携帯のバイブレーションが着信を知らせる。

億劫ながら端末を手繰り寄せて画面を見やると、田中の名前が架電者として表示されている。

昼間あれだけ会話に興じたにもかかわらず、まだ話すことがあるのかと若干呆れつつも応答ボタンをタップする。


「すまん、助けてくれ」

開口一番に不吉な言葉を発する田中の声色は焦燥に駆られており、戸松の不安を煽り立てる。


「そんな深刻そうに、一体どうしたんですか。……まさか昼に話した須川さん関係でさらに火がついたとか言わないですよね?」

「……そういう察しのいいところ、とまっちゃんはやっぱりサイコーだよ。ま、内容は最悪なんだけどな……。実は、須川ちゃんからKYUTEをやめさせられるかもしれないって相談が来た」

冗談めかして伝えた予想はピンポイントで当たったものの、内容は想像だにしない程に突飛なものであり、戸松はすぐに咀嚼することができず、口をあんぐりと開けてフリーズする。


「ついさっき須川ちゃんから連絡があってな。もうKYUTEでの活動はさせないと父親が息巻いているみたいだ」

「昨日の今日で急な話ですね。なんでそんなことになってるんですか?」

戸松の当然の疑問に、田中も唸りながら首を傾げているようである。

電話越しのため田中の姿は見えないものの、戸松にはその様相がありありと想像がつく。


「それがなぁ、須川ちゃんも随分と感情的になっていて、言っていることが要領を得ないんだ。そんなわけで、はっきりとした理由が現時点では分からなんだ。どうしたもんかねぇ」

あのおっとりとした須川が癇癪を起こす姿が全く想像できず、思わず笑いがこみ上げてくるが、そんなことをできる雰囲気でもなく、喉元まで出かかった笑い声を押し殺す。


「とりあえず、今すぐできることは何もなさそうですね。明日になれば須川さんも多少は落ち着くと思うんで、ヒアリングかけてみたらどうでしょう。あ、ちなみに、このことを他の3人は知っているんですか?」

音楽プロデューサーが音楽以外の領域に思い切り首を突っ込むことの是非が、ほんの少し頭をよぎるものの、無関係と切り捨てるにはすっかり情が湧いてしまっている。


「どうだろう、そこまでは俺も分からんな。ともあれ、明日になったら須川ちゃんから直接話を聞くのは賛成だ。俺みたいなおっさんとサシで話をするのも辛かろうし、とまっちゃんも付き合ってくれるとありがたい。前は近づきすぎて舐められるなよとか言っておきながら、こんな時はとまっちゃんの若さに甘えちゃうっていうのも小狡いよなぁ、俺も」

田中の自嘲が天然なものなのか、戸松が断りにくくなることを企図して発したものなのか、戸松には区別しようもない。

尤も、この問題に片足を突っ込んだ以上、田中の発言とは関係なしに、自分ができることをしなければ後味が悪くなりそうな気がしてならなかった。


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