第20.4話 フェス4
「みんな本当にお疲れさん。すごくいいパフォーマンスだったぞ」
控室に戻ってきたKYUTEに田中が労いの言葉をかけるも、4人の表情は晴れる気配もなく、部屋の中は鬱屈とした空気に包まれる。
「まぁなんだ、こんなアウェーなステージへ出るのを拒み切れなかったのは、正直なところ俺の責任でもある。本当に申し訳ない」
沈痛な田中の謝罪に戸松も居たたまれない心持となり、彼女らへ掛ける言葉は何が適当かを再び思索する。
「みなさん、先ほどは本当にお疲れ様でした。会場の反応を気にするな、と言われてもそれは無理な話だと思います。ただ、この数か月の猛特訓はちゃんと皆さんの実力となって今日のステージに表れていました。今日会場に来ていたファンや私たちのように、感動した人間もいたことだけは忘れないでください」
戸松がやっとのことで絞り出した慰労の言葉に、皆頷きはするものの雰囲気は好転することなく、失意のまま各々着替えやメイク直しへと向かう。
田中も急ぎ上層部への説明資料を作成しなければならないとのことで、その場を後にする。
「さて、姉ちゃんを連れてこないとな……」
これからさらに香坂へ精神的ダメージを与えることを意識すると良心の呵責に苛まれるが、紗枝をフェスまで連れてきてしまった以上、最早引き返せる段階はとうに過ぎ去ってしまっている。
煮え切らないまま会場の関係者席へたどり着くと、紗枝はぼんやりとステージを観覧している。
「あ、お疲れ様。……やっぱりこうなっちゃったね。そっちの雰囲気最悪でしょ」
戸松が隣に座ると、紗枝が苦笑いを浮かべつつ彼を迎え入れる。
現在歌声を披露しているアーティストは知名度もそれなりにあり、先刻との盛り上がりの差異が明らかに見て取れる。
「いや、ホントいたたまれなかったよ。で、これからさらにしずくとバチバチやりあうのか……。あのさ、気持ちって一体どこまで沈む余地があるんだろうね。……ってか、今更だけどごめん、こんなことに巻き込んで」
「……ハハッ、本当に今更だよね。ま、私がやるのはあくまできっかけづくりだけから。話すのは全部トモだし、責任をとるのもトモなんだから。ま、どんな結末を迎えるかは火を見るよりも明らかだけど、それでもしっかりとケジメつけてきなよ。全部終わっったら、ゆいっちと一緒に慰めてあげちゃる」
センスが悪い彼女の軽口も、この時ばかりは戸松にとって幾分かの救いとなっていた。




