第18.4話 疑義4
スタジオ練習が終わったのち適当に時間をつぶして、約束の時間に合わせて指定された地点へと向かう。
たどり着いた先はスナックであった。
「いらっしゃいませ」
そっと扉を開け店内へもぐりこむと、バーカウンターの向こう側にいた妙齢の女性が戸松にそっと呼びかける。
静かな語り口にもかかわらずその声はよく通り、スナックのママの声は酒やけしているものだという戸松の偏見を打ち砕く。
「すみません、お呼び立てしてしまって」
カウンター端の席に座っていた須川が戸松の顔を視認するや否や立ち上がり駆け寄る。
ふと気になり周りを見渡すが、店内にはほかの客はおらず戸松はホッと息をつく。
「いえ、お待たせしていたようですみません」
「私もまだ到着して間もないですから」
図らずもつき合いたての中学生のようなやりとりをしてしまったことに、二人して苦笑いする。
「とりあえずこちらへどうぞ」
須川が店員よろしく奥へと促す。
二人してカウンターに向かい横並びで腰掛けると、先ほどの妙齢な女性がおしぼりを手渡してくる。
「あ、戸松さん紹介しますね。こちらの方は山本加奈さん。私の叔母にあたる人です。叔母さま、こちらは戸松智久さんで、私たちのグループの音楽プロデューサーをしている人ですわ」
須川の紹介を受け、互いに会釈する。
「彩奈からお噂はかねがね聞いてますよ。その若さでプロデューサーにおなりになるなんて、敬服します」
「いえ、須川さん含め、皆さんのご協力あっての立場です。まだまだ若輩の身ですので、いろいろとご迷惑をおかけしてばかりです」
「あら、お若いのにずいぶんしっかりしていらっしゃるのね。さて、今日は私はあんまり立ち入らない方がよさそうですし、飲み物お出ししたら引っ込んでおきますね」
戸松が注文したドリンクをサーブしたのち、二人から距離をとる。
他聞をはばかる話がこれから始まることを、須賀から事前に聞いていたようであった。
「それで、いったいどうしたんでしょうか」
すっかりお膳立てされた雰囲気に飲まれ、単刀直入に内容へ踏み込む。
「戸松さん、しずくに何したんですか」




