第14.3話 2ndシングル3
「それじゃ、まずは表題曲から行こうか。一晩しかなかったけど、テーマは決まった?」
打ち合わせテーブルについて早々、北山が切り出す。
「EDM基調でメロディの譜割も細かいので、ラップまでは行かなくともライムを意識した歌詞が映えるかな、と。メジャーデビュー間もないアイドルの曲ということも勘案すると、自己紹介ソングがいいかなと思ったんですけど、如何でしょう」
「ほう」「へぇ」
戸松、北山の両者そろって、香坂の思考プロセスに感心する。
戸松自身にはテーマへのこだわりはなかったが、聞いているときの気持ちよさを重視してメロディを作成したため、作詞作業にあたってはフローやライムを意識するよう依頼するつもりであった。
「俺はすごくいいと思います。それにそのテーマに至るまでの過程、職業作詞家として求められる素養を持っているなと感心させられました。とはいってもテクニカルな方向に走りすぎてもいい詞になる訳ではないので、書きたい内容を第一に作詞にあたっていただければと思います」
「私も異存ないかな。私が言いたいことは智久君が全部話しちゃったし、さっそく作業に入ろうか。智久君、現時点での曲の最新データあげてちょうだい」
「大丈夫、もうあげてます。いつものところに格納しているんでよろしくっす」
「さっすが我がベストパートナー、阿吽の呼吸だね」
北山が戸松の肩を指でつつく
「自己紹介をテーマにした件、メインの理由はさっきお話ししたとおりなんですけど、実はもう一つきっかけがありまして」
香坂がふと口にする。
「え、そうなの?なになに?」
北山が興味深げに先を促す。
「私とトモが同級生だったって言いましたよね。二人がこうして離れて、再会するまでに随分と時間が経ちました。二人ともあの時から変わったところもあれば変わらないところもあるわけで、私のことを改めて知ってもらういい機会だなと、この前トモと話して思った次第です。」
「なるほどね。智久君、せっかくしずくちゃんがこう言ってくれているし、作詞が終わって落ち着いたら智久君のこともいろいろと話してあげたらどう?君もいろいろと大人になったんだしさ」
北山が含みのある言い方をしながらあっけからんと笑う。
兎にも角にもすんなりとテーマが決まり、作詞作業は快調な滑り出しを見せた。




