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第11.2話 対談2

戸松の自宅兼スタジオは、都心からはやや外れてはいるものの23区内には辛うじて属している。

当日、歩きなれた道を進み最寄り駅まで行くと、集合時間20分前にもかかわらず香坂がすでに到着していた。

近づいてくる戸松を視認すると落ち着かない様子で髪先を弄ぶ。


「おはよ、ずいぶん早いね。いつ着いた?」

「つい4,5分前かな。なんとなく落ち着かなくて早く家を出ちゃった」

「そうなんだ」

「トモの家に行くのも久しぶりだね。場所も状況も以前とはだいぶ違うけど」

香坂が意味ありげに呟き、二人の間を沈黙が支配する。


「そうそう、そういえばおばさんと紗枝姉は元気?」

余計なことを口走ってしまったと後悔したのか、香坂が若干慌てて話題を転換する。


「二人とも元気にしてるよ。姉ちゃんなんかしょっちゅう俺ん家に遊びに来ているし」

姉の近況を話しているうちに、ほかのメンバーやスタッフたちが改札から姿を現す。


「おはようございます。あら、しずくは随分と早く来たのね」

「まぁね。メジャーデビューもしたことだし、プロ意識を持って早めの集合を心掛けなきゃね」

新垣の問いに対し、香坂がサラリと打ち返す。

二人のやり取りに気づかないふりをしつつ、人数がそろったところで皆を家まで先導する。


道中、戸松、田中、編集者たちスタッフメンバーでインタビューの段取りを打ち合わせる。

「今回はせっかく戸松さんのスタジオでインタビューを行うので、記事は音楽要素重視で、KYUTEの娘たちの写真もスタジオでのオフショット的な感じで行きましょう。ちゃんとしたグラビアは別ページに掲載する予定ですが、それはまた別の日に撮影スタジオで撮ります」


細かい内容を詰めていくうちに家に到着したため、鍵を開けて皆を中へ案内する。


「うわぁ、これが戸松さんのスタジオなんですね!見られて感激です!」

種田が興奮した面持ちで機材回りを見渡す。


「そう仰っていただけて幸栄です。インタビューが早めに終わって余裕があれば、DAWデータとかもお見せするんで楽しみにしていてください」

種田の熱量にあてられて、つい喜ばせたくなるような提案を持ち掛けてしまう。


「本当ですか?それすごく見たいです!”Startin’ our KYUTEst Story”のデータとか是非見せてください」

種田がより一層目を輝かせ、戸松の手を握り大きく上下に揺さぶる。


「確かにそういうデータは興味をそそられますね。私は個人的に、” アネモネの花は暁に消えゆく”の制作データがみてみたいです。あの曲がやはり一番戸松さんを象徴しているような曲がするので。よろしければ、その時の制作風景なんかも解説してください」

種田と戸松のやり取りを眺めていた香坂が会話に滑り込む。


「あー、確かに、アネモネのほうもすごく気になります。うーん……」

「はいはーい、雑談はそれまでにして、そろそろ対談を始めようか」

種田が自身の世界に入り込んだところで、田中が”タイミングよく”対談開始の合図を投げる。

戸松が机を見やると、編集者の記録準備等、スタッフの準備が整っている。


「それじゃ、まずはKYUTEのみんなに先日のメジャーデビューについていろいろと聞いていきましょうか」

全員が着席したことを確認すると、モデレータとしての役割も担う田中がKYUTEからレコーディングやライブの感想を引き出していく。


「さて、こうしてKYUTEは華々しくメジャーデビューを果たしたわけですが、その音楽プロデュースを一手に担う若手作曲家のホープ、戸松さんにも今回話を伺ってみたいと思います。ずばり、まずはKYUTEの第一印象を教えてください」

「そうですね……。音楽的な観点からすると、各個人の癖は強いものの、全体ではバランスがとれたユニットだな、と。調理の仕方にさえ注意すれば大化けするだろうな、と思いました」

「なるほど。確かに”Startin’ our KYUTEst Story”もアイドルソングの王道を踏襲しつつ、各メンバーの持ち味が生かされるようなパート分け、構成になっていましたね。今後は彼女たちをどんなコンセプトでプロデュースしていきたいですか」

「先ほどお話ししたことと重複しますが、彼女たちの個を生かしていきたいです。今、この業界は多くのアイドルが鎬を削るレッドオーシャンです。幅広い方にKYUTEの魅力を感じてもらうにはキャッチーさを維持する必要があります。一方で、そればかり追求してしまうと、音楽も凡庸なものになってしまいます。理想論にはなってしまいますが、普遍性の中に独自性をどこまで盛り込むことができるか、KYUTEというユニットを愛してもらうには、この点をとことん追求する必要があると思います」

「なるほど、ありがとうございました。区切りもいいのでここらで一旦休憩しましょうか」

田中が〆の言葉を放ち、辺りの空気が弛緩する。


「いやぁ、成り行きで引き受けてもらったプロデューサー業だけど、とまっちゃんになってもらって良かったなって今になって実感してるよ。こんなにも熱く語るとまっちゃんを観れただけでも僥倖かも」

田中が小声で語り掛ける。


「そういえばそうでしたね。これだけどっぷり関わっていると、そんなことすっかり忘れていましたよ。確かに、さっきは柄にもなく熱く語ってしまった気がします。文章にするときには程ほどにお願いしますね」


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