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第4.4話 レコーディング4

「……どうしてそう思ったんですか?」

戸松の反応と返答内容に、これは何かあるな、と新垣は確信する。


「しずくと優美はもともと戸松さんの曲が好きだったんですけど、実際に戸松さんと会ってからしずくの様子がおかしいんですよね。優美も大概おかしなテンションですけど、あれは単なるファンとしての興奮ということで納得できます。ただ、しずくは元々冷静で地に足がついたタイプのはずなんですけど、今回の無茶なスケジュールで私たちに黙って作詞をしたり、練習も前のめりになったりして、様子が今までとかなり違うんですよね。あと、最初の顔合わせの時に廊下で二人で話し込んでいる姿が見えたので、以前からのお知り合いなのかなと」

新垣の指摘に、戸松は狼狽する。


「……鋭いですね。実は香坂さんとは中学時代の同級生なんですよ。香坂さんがアイドルをやっていて、しかもこんな形で再会するとは思わなかったんで、私も吃驚しています。私も中学での彼女しかよく知りませんし、そこまで深い付き合いがあったわけでもないので、様子が違う理由は残念ながら分かりません」

一息にまくし立てた後、後半部分は余計だったなと自省する。


「そうなんですね。一先ずは了解しました。話せることが増えたらまた教えてください。とりあえず連絡先を交換してもいいですか?」


(新垣さん、明らかに自分の話を信じていないよなあ……。連絡先交換するのは抵抗あるけど、拒否したら余計疑われるし、今後一緒に仕事をする上で支障も出るし、仕方ないか)

メッセージアプリで友達登録し、スタジオへ戻る。


「おーい、とまっちゃん。ボーカル仕上がったし確認に行くぞ」

廊下を歩いていると、コントロールルームから出てきた田中が声をかけてくる。


「分かりました」

「なになに?もう新垣ちゃんと二人きりで話す仲になったの」

「いえ、ちょっと雑談していただけですよ」

「そう。とまっちゃんは問題を起こすような人でないのは分かっているけど、彼女たちの商品としての性質上、あらぬ誤解を受けるリスクが少なからずあることは意識してね」

いつになく真剣な表情で忠告するあたり、やはり過去のプロジェクト崩壊は田中の中で尾を引いているのだろうと戸松は思案する。


コントロールルームにて歌唱に問題がないことを確認したのち、メンバーやスタッフのバラしが行われ、スタジオ内の空気も緩やかなものへと変わる

「とまっちゃん、一先ずお疲れさん。このあともアレンジ作業で忙しいとは思うけどよろしく頼みますわ」

田中も各種調整で忙しいようで、疲れた表情をしている。


「いやあ、レコーディングでゴッソリ体力持ってかれましたけど、この後も頑張んないとですね」

「すまんね。とりあえず腹も減ったし、飯でも食べに行かないか?今回はいろいろ迷惑かけちゃっているし、おごるぞ」

「いいですね、では、ゴチになります」

田中の誘いに嬉々として応じたところ、思わぬ横やりが入る。

「あっ、田中さんと戸松さんご飯行くんですか?」

種田の声が廊下に木霊する


「せっかくなんで、私たちもご一緒していいですか」

そう告げる種田のそばにはKYUTEのメンバーが勢ぞろいしていた。


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