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6話:米騒動2

 7月24日、25日の新聞では、それぞれ20日未明同海岸に於いて女房共46人集合し役場へ押し寄せんとせしをいち早く魚津警察署に於いて探知。20日未明海岸に集合せしを警察署がいち早く探知し解散せしめと魚津の動きが克明に報じている。


 また8月9日の『高岡新報』は、魚津町にては、米積み込みの為客月一八日汽船伊吹丸寄港に際し細民婦女の一揆が起こり狼煙を上げたると、魚津でも7月18日以来一揆が起きていることを記している。その頃、東水橋町、富山市、魚津町以外にも、東岩瀬町28日、滑川町、泊町31日など、富山県内での救助要請や米の廉売を要望する人数はさらに増加し各地で動きが起きた。


 翌月8月3日には当時の現・富山市で2百名弱の町民が集結し米問屋や資産家に対し米の移出を停止し販売するよう嘆願。 8月6日にはこの運動は、激しさを増し東水橋町、滑川町の住民も巻き込み千名を超えた。住民らは米の移出を実力行使で阻止し当時1升45銭の相場だった米を35銭で販売させた。


 以前から魚津市大町の十二銀行「北陸銀行の前身」倉庫前には「魚津市の自然と文化財を守る市民の会」により記念柱が立てられた。1914の第一次世界大戦開始の直後に暴落した米価は、周りの物価が少しずつ上昇していくなかで、約3年半の間ほぼ変わらない値段で推移していたが、1918年の中頃から急激に上昇し始めた。


 大阪堂島の米市場の記録によれば、1918年の1月に1石15円だった米価は6月には20円を超え、翌月7月17日には30円を超えるという異常事態になった当時の一般社会人の月収が21円。7月末から8月はじめにかけては各地の取引所で立会い中止が相次ぎ、地方からの米の出回りが減り8月7日には白米小売相場は1升50銭に暴騰した。


 この背景には資本主義の急速な発展が指摘されてる。第一次世界大戦の影響による好景気「大戦景気」は都市部の人口増加、工業労働者の増加をもたらした。他、養蚕などによる収入の増加があった農家は、これまでのムギやヒエといった食生活から米を食べる生活に変化していった。また明治以降都市部の中流階級では大量の白米を少ない副食で食べるという食習慣が定着した。


 一方で農業界からの人材流出のために米の生産量は伸び悩んだ。大戦の影響によって米の輸入量が減少したことも重なり、米価暴騰の原因となった。米価格が高騰することにより、地主や商人は米を米穀投機へ回すようになり、次第に売り惜しみや買い占めが発生し始めた。事態を重く見た仲小路廉農商務大臣は、1917年9月1日に「暴利取締令」を出した。


 そして、米・鉄・石炭・綿・紙・染料・薬品の買い占めや売り惜しみを禁止したが、効果はなかった。常軌を逸した商魂を表す口語の動詞「暴ったくるは」、この「暴利取締令」の「暴利」に由来する。1918年4月には「外米管理令」が公布され、三井物産や鈴木商店など指定七社による外国米の大量輸入が実施されたが米価引下らなかった。


 社会不安:米価の暴騰は一般市民の生活を苦しめ、新聞が連日、米の価格高騰を知らせて煽ったこともあり、社会不安を増大させた。寺内正毅内閣総理大臣は1918年5月の地方長官会議にて国民生活難に関して言及した。しかし、その年の予算編成において、救済事業奨励費はわずか3万5000円のみであり、寺内の憂慮を反映した予算編成になっているとはいえなかった。


 このため、警察力の増加をもって社会情勢の不安を抑え込む方針が採られ、巡査を増員するという措置が採られた。労働者の団結権すらなかったこの時代、厳しい抑圧と苦しい生活に喘ぐ一般庶民の怒りの矛先は、次第に高所得者、特に米問屋や商人に向けられるようになっていった。

*この情報は、当時の新聞から抜粋し記載しました。

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