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悠馬の能力


「ねえ俺どうすればいいの?」

メドゥーサがウエディングドレスをつくっている間にもう少しこれからのことケルベロスと話すことにしたのだが、やはり結婚の方が気になる。

「そうだな。まずはお前の能力を確認しないとな」

ケルベロスにはこの言葉が勇者退治をするにあたってなにをすればいいかを聞いているように聞こえたらしい。実際勇者退治のことも気にはなるが今はそれどころではない。メドゥーサは可愛いから結婚も構わないんだけど。むしろしたい!

「んじゃあステータス確認して見ろよ」

「俺ステータスの見方わからないんだけど?」

「ほれ、そのへんに丸い形の白いのないか?」

とても分かりにくに説明だったが視界右下に白い丸状のものが見つかった。

「これを押すと分かるの?」

押してみると四角い画面が表示されステータスらしきものが浮かんだ。

黒瀬悠馬 十六歳 職業??? 能力 能力奪取 保有能力 なし

「こんなんだけど見える?」

「他人に公開するってボタンないか?それ押してくれれば俺も見えるから。あ、俺が見た後は消しとけよ?」

「了解っと」

「お!見えた見えた。能力奪取?なんだそれ?」

そのボタンを押すと、どういうわけかケルベロスにも見えるようになったようだ。この世界のステータスアイコンは少し無用心な様だ。

「言葉の意味からして他人の能力を奪えるってことかな?」

「まじかよ、それってチートじゃね?」

この能力ってもしかして生前にやったことに由来してないよな?もしそうなら一生万引き犯の意識が消えなさそうだ。

「おっまたせしましたぁ!ウエディングドレスが出来ましたよぉー!」

「おー!で、俺のタキシードは?」

ウエディングドレスを着たメドゥーサがやけに上機嫌に部屋に入ってくる。

「まだでーす」

「おいおいまだかよ」

メドゥーサが何故か嬉しそうに答える。悠馬との結婚はそんなに嬉しいことだったのだろうか?あって一日も経っていないのに。そしていまさらだがどうやってつくったんだ。一から縫ったにしては早すぎる。

「ねえそれどうやってつくったの?」

「これは魔族の協力者だったジキル先生がつくってくれた機械でつくりました。作りたいもののイメージを機械におくると自動で生成してくれるんです!」

「なにそれすごい!あとでやり方教えて!」

「もちろんです!その前にこれを!」

メドゥーサが出したのは結婚式の俺の衣装らしきもの。悠馬は実際の結婚式を見たことがないのでなんともいえないのだが。

「よし、じゃあ着ながらでいいから勇者のこと話すぞ」

「うん。お願い」

悠馬は今着ている制服を脱ぎながら答えた。

「十人の勇者はそれぞれ持っている能力が違うんだ」

「炎の勇者、水の勇者、風の勇者、土の勇者、光の勇者、剣の勇者、槍の勇者、弓の勇者、拳の勇者だ」

「炎、水、風、土、光、剣、槍、弓、拳、一人いなくない?」

一本ずつ指折り数えしながら悠馬が言う。

「もう一人は勇者九人のすべての能力を使うことの出来る能力をもっていて、全の勇者と呼ばれています」

「善ってのは良いことをするって意味の善と全てって意味の全がかけらられてんだよ。結構くだらねえよな」

「十人の勇者か、なるほど」

悠馬が深く考え込む様に顎に手をつける。十人も勇者がいるのなら確実に三人では人手不足だからだ。

「あ、でも土の勇者は今欠番だから大丈夫だ。新しく召喚されたにしても大した奴は呼べねえよ」

ケルベロスのその一言に少し、いやかなり安心した。十人が一人減っただけだというのにこうも安心出来るのは少し不思議だ。

「あ、そろそろできると思うので先に行ってますね。できたらお届けにきます」

「ありがとう。あとそのウエディングドレス、似合ってるよ」

「ほ、本当ですか!?」

「嘘なんかつかないよ」

メドゥーサが顔を赤くして悠馬を見る。その表情がとても可愛らしくて悠馬も少し顔を赤らめて視線をずらした。

「えへへ〜なんか嬉しいですね〜」

「イチャイチャしてねーではやく取ってきてくれよ」

お互いに顔を赤くしているのを見てケルベロスがやれやれというふうに手を広げた。

「では結婚式を始めます。なあ、これでいいのか?」

「知らないよ。俺もやるの初めてだもん」

魔王城の一部屋。ウエディングドレスを着たメドゥーサとスーツを着た悠馬の結婚式が始まった。が、

「なあ悠馬、次は何するんだ?」

「えーと、なんだっけ」

「誓いのキスですよキス!」

「ん?それって指輪交換した後じゃない?」

その結婚式は凄くぐだぐだとしていた。ここにいる皆が結婚式など始めてとのことでうろ覚え状態の結婚式が行われている。こんな茶番をやる必要はあるのだろうか。

「えーそれでは誓いのキスを」

結局キスをすることになった。指輪の交換はなしである。まあ指輪は作ってないから仕方ないのか?

「さあ、いっきにいっちゃってください!んー!」

そう言うとメドゥーサは目を閉じた。

(もうここまできたらいくしかない!)

悠馬は覚悟を決めメドゥーサの唇に自分の唇を合わせた。

メドゥーサの唇は柔らかくてしっとりしてて甘い匂いがした。

キスはレモンの味とかいう表現があるが、あれは嘘だったらしい。味とか全然分からない。

「プハァ」

しばらくして唇を離す。心なしかメドゥーサは少し残念そうな顔をした。

「よし!これで二人は晴れて夫婦だ!」

「初めてのキスだったんですが、なんかいいものですね。またしてくださいね」

(メドゥーサって思ったよりぐいぐいくるなあ)

メドゥーサの意外な一面を知った気がした。

「ん、なんかステータスアイコンが光ってるんだけど。なんでか知らない?」

「さあ?なんでしょう?」

「ってかステータスアイコンってなんだ?」

「あ、適当にそう言っただけだけどあの丸いやつ」

悠馬は光っているアイコン(仮)をタップした。

するとステータスが一度光ってからもとに戻った。

「なんだったんだ?」

「もう一度確認してみたらどうです?」

「うん」

黒瀬悠馬 十六歳 職業??? 能力 能力奪取 保有能力 [ドレイン]

「あ、能力が増えてる。ドレイン?」

「ドレインは私の保有能力の一つですよ!」

「なるほど!メドゥーサの能力を奪ったんだな!」

「まじで!?」

悠馬が驚いたようにステータスに食いつく。色々弄ったりしてみたもののドレインの詳しい情報は分からなかった。

「あー確かにそういうことなら納得できるのかな」

ドレインの情報はメドゥーサに聞けば解決することだし特に問題はない。そう油断しているとメドゥーサからいきなり過ぎる提案がきた。

「試してみましょう!」

そう言うとメドゥーサはいきなり悠馬にキスをした。

「んん!!?」

試してみようとはどういうことなのか。いきなり唇を押しつけてみたメドゥーサは悠馬が唇を離そうとすると更にぐいぐいと迫ってきた。つまりメドゥーサのキスは思ったより濃厚だった。

「そろそろいいんじゃねえか?」

「!!プハァ」

窒息死しそうな程の唇を吸われたがケルベロスの一言でなんとか生き残れた。ありがとうケルベロス。

「ムゥ〜ケルベロスさん、余計なこと言わないでくれませんか?」

メドゥーサがさっきまでは想像できない怖い顔をした。これが女の子という存在か。

「いっ!?ごめんなさい」

ケルベロスが怯える姿を初めてみた。まあ出会って一日も経ってないんだけど。

「じゃあもう一回しましょう」

「いや!まずは確認しようよ!ね!?」

「そ、そうだぜ!そうだよな!」

悠馬もケルベロスも必死にいう。

「……そうですね」

メドゥーサの言葉を聞いたあと悠馬は尻餅をついて、ケルベロスは額の汗を拭った。

黒瀬悠馬 十六歳 職業??? 能力 能力奪取 保有能力 [ドレイン] [石化の魔眼]

「おお!増えてる増えてる」

「そうですか!やりましたね!」

「それよりメドゥーサは大丈夫?能力なくなってたりしない?」

「多分大丈夫だと思いますが」

メドゥーサは自分のアイコンを操作する。しかし能力欄から二つの能力は消えていなかったらしい。

「大丈夫です。ちゃんとありますよ」

「よし!そうと分かれば特訓だ悠馬!」

「特訓?何の?」

「お前だって何もしないで勇者に勝てるなんて思ってねえだろ?だから特訓するんだよ!」

そういうとケルベロスが悠馬の手を掴んで走り出した。

「おおい!何すんだよ!?」

「特訓といったら走り込みだ!あと俺の能力も覚えてもらうからな!」

「ええ!?能力を奪うって」

悠馬はさっき能力を奪った方法を思い出しぞっとした。

「ヤダヤダヤダ!絶対イヤー!!」

「悠馬さんいえ、ダーリン頑張ってください!」

メドゥーサがガッツポーズをしながらいとも軽く言う。

「あなたはそれでいいのかよー!!」

「でも、披露宴が終わってからにしてくださいね?」

メドゥーサの顔は笑っている。だが明らかに笑っている声ではない。いったいどこからそんな声がでるのか疑問だ。

「あ、じゃあ披露宴やるか」

ケルベロスはメドゥーサがこうなるとやけに大人しくなるんだなと悠馬は実感した。

「では、披露宴を開始しましょーう」

しかしこの三人が披露宴などできるはずもなく、またしてもぐだぐたな披露宴が幕を開けた。


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