第一話【8888:異世界転生?】IIIIII
青色の光が夕暮れの橙色をした空を劈き、
少年の身体は光を放つ。
最初に左胸のポケットの中に収まったディスプレイから。
次に全身を巡る動脈の全てから。
最後に、
彼の前に広がる、
救いたい全てを映す瞳から、
その全てから青色の光を放った。
「何じゃあ……!?」「まさか、サツキが今朝拾ってきた子供か!?」
「さっきの女が逃げたのか!?」「いや、違う! 色が違う! あの女は緑だが、コレは……!」「おい! 諜報の副隊長は何処だ!? 今直ぐ呼び戻せ!」
「おぉー、何だこりゃ。もう光り輝く大スタァってカンジになってんじゃないの」
少年は不安も恐怖も感じなかった。
それもその筈。
「無事に起動出来たようだね、もう一人の僕」
今、少年の隣には40過ぎのハゲオヤジの幻影が立っていたのだ。
「それにしても驚いた。これは一体どういう事なんだい? 僕が2人いる筈はないから……きっと君は僕の見ている幻覚なんだろうね」
「幻覚、か……ま、今の僕はそんなところだし、それでいいかな」
「含みのある言い方してくれちゃって」
「悪いが今は時間が無いんだ。簡単にソイツの使い方を説明するから、よく覚えておくように」
2人がそんなやりとりをしている間に、兵士達が少年を包囲してしまった。
「聖体違法所持者! 大人しく投降しなさい!」
「あーあ、長話してたら囲まれちゃったよ」
「心配ご無用。先ずはこいつ等全員を見回すんだ」
「み、見回す? ……見回すだけ?」
「いいから早く!」
言われるがまま少年はぐるりとその視界に映る全ての人間と、ついでに遠くで未だに破壊活動を続ける重機を見回した。
その直後、
「うおっ!?」「何だ!?」「くっ!」
少年を中心にした砂嵐が突如現れ、吹き荒れ始めた。
そして砂嵐に呑み込まれた兵士達は、
「うあ……っ!? 何ィ!?」「ひっ……! どうなって……!?」「総員退避! 退避だ! 一旦退けぇーーー!」
持っていた武装火器やトランシーバーを全て砂に変えられてしまった。
「えっ……おい……!? これ、おい!?」
誰かの命を間違って奪ってはいないか。
そう慌てる少年とは対照的に、
ハゲオヤジは自慢げに笑んでいた。
「安心しろ、もう一人の僕。それで人は殺せない。その聖体の機能は[出力装置]にあたるんだが、入力装置も制御装置も記憶装置も無い現状だと起動したところで簡易記録装置に残されている最後に実行されたコマンド、即ち[人工物の破壊]しか出力しない。だがそれしか使えなくたって、こういう事が出来るってワケさ」
言い終えた彼が指差した先へ少年は目を向ける。
さっき発動した砂嵐の影響なのだろう、破壊活動に従事していた重機も一つ残らず砂となって空へと吹き上げられていた。
「成程、そういう事か。っていうかやたらと詳しいな過去の僕。その怪しい話は何処情報なんだ?」
「それは、きっと……この世界を旅し続けていれば、君はいつか
[世界の真実]
を知る事になるだろうから、今は、気にしなくてもいい」
意味深な言葉に、少年は首を傾げる事しか出来ない。
今は。
「さあ、あとは君が決める事だ。
6つの聖体を全て集めた時、君はこの世界の全てを思うままに操る事が出来るようになる。
その時、君は
救世主になるか、
魔王になるか、
或いは、
全てを消し滅ぼす破壊神になるか……
好きに選ぶといいさ」