第一話【8888:異世界転生?】IIII
それらを片っ端から破壊してゆく無数の黒い重機。
逃げ惑う住民らしき人々を次々に拘束する、全身を迷彩服で覆ったガスマスクの男達。
……重機が何か音声を発している。
機械的な女性の声だった。
『コチラ、新日本政府軍デス。非国民ノ皆様、オ早ウ御座イマス。国土ノ不法占拠ハ法律ニヨリ禁ジラレテオリマス、速ヤカニ戸籍登録ヲ行ウカ、コノ地域カラノ立チ退キヲオ願イ致シマス。コチラ、新日本政府軍デス。非国……』
その言葉通り、拘束された人々は何か書類のようなものを押しつけられている。
「何度も言うとるだろうが! ワシ等はそのナントカの登録っちゅうのはやらん!」
「いい加減にしてください! このまま手続きを拒否するのなら、海にでも放り捨てなきゃいけなくなりますよ! ちょっとココに名前と年齢とお住まいの場所を書いて下さるだけでいいんですよ! そうしたらあなた方の身の安全を我々が保障させて頂きますから!」
「ウソばっか言いおって! そんならお前等の言う事を聞いたマツモト村をぶっ潰したのはどういう事じゃ!」
「ですから! ここは我々の国土なんです! 現在のあなた方は戸籍が無く不法占拠をしている状態なので、一度皆様を保護させて頂いた上で土地を再分配致します!」
「何でわざわざそんな事をせにゃならんのじゃ! ここは元々ワシ等の土地じゃい!」
「手続上の事ですのでご了承願います!」
少年はその時、理解した。
(なーるほど。アレがこの世界の[魔王軍]ってワケ)
だが今の自身には彼等と戦う力は無い。
(どうしたもんかね……)
そう、思っていた時だった。
「でやあああアア!!!」
サツキの雄叫びと共に重機の内一つがひしゃげた。
よく見れば、緑髪の女がキックで突っ込んで重機を破壊していた。
そのまま彼女は次々に破壊した重機を踏み台に飛び跳ね、次の重機、次の重機、と踏み継いで壊してゆく。
「サツキ! ぶっ壊せ!」
捕まえられている人々の内一人が叫んだ。
「何……!?」「またあの暴力学者か!」「止めろ! 死なない限りはどんな手を使っても構わん、公務執行妨害だ!」「しかし……!」「狼狽えるな!」「は、はいっ!」
新政府軍の兵士達は上官らしき男の指示で慌ただしくショットガン、RPG、ガトリング砲等を構えて追い撃つがサツキは器用に避けて回り、躱してゆく。
「やはり[聖体]使いには適わんな……」
「感心してどうするんですか!」
「喚いてどうする。今回は此方にも打つ手があるだろう」
「……また[諜報]に借りが出来ますね」
「こんな状況で貸しも借りもあるか」
そんなやり取りを部下と交わした上官は不意にトランシーバーを取り出すと、捻くれた苦笑いを浮かべた。
「此方実動部。例によって[聖体]違法所持者が行政執行の妨害に入った。応援を頼む」
『了解。聖体使いがいるのですね?』
「ああよ。だから出来たらあんたに直々に来てもらいてえんだけどな」
『私でなければいけませんか? 副隊長が、もうそちらにいる筈ですが』
その言葉に上官は脳裏へ[?]を浮かべながら周りを見回した。
右、左、そして
「うぉ!?」