第一話【8888:異世界転生?】II
ALL MEW MATERIALS 8888
広大な、あまりにも広大な砂漠が広がっていた。
いくら目を凝らしても、周りには植物も建造物も何一つ無かった。
そして遠く彼方の黄色い地平線から上は、そのまま空の果ての宇宙にまで吸い込まれてしまいそうな、徐々に藍色になってゆく空が頭の天辺まで続いていた。
鬱くし異世界だった。
としか例えられなかった。
それは彼のボキャブラリーが記憶喪失によって機能不全に陥っているからだけではなく、
こんな景色を生まれてこの方見た事が無かったから。
だから、この世界は鬱くしく、そして異世界だった。
そんな風に表現するしか無かった。
思わず見とれて、
ずっとこんな所にいれば干からびて死んでしまう。
という当たり前の生命の危機にすら気付かなくなってしまう程に。
ぐらり、と彼の視界が揺れた。
魂が少しずつ脳天から蒸発し始めた。
立っているハズなのに身体が崩れ落ち、
思わず腕で近付く地面を押しやろうとしたが、
その腕もくにゃくにゃに曲がってしまい、
あっという間に砂を食べさせられてしまった。
確かに暑さは苦しく口の中の砂は不愉快なのに、
意識が天高く昇ってゆく感覚は何処か開放感があった。
こんなに綺麗な場所で眠りにつけるのなら悪くはないかもしれない。
そう思い始めた、
「おーい! 君! 大丈夫!? しっかりして!」
その時だった。
女性の声がした。
そして、声のする方へと顔を向けながら瞬きをした、
「ふぁ!?」
その一瞬の間に自分の居場所が砂漠から何処かの日陰に変わっていた。
「んなっ!? ……あっ、……ああ」
思わず跳び起きた。
そこは何処かに建てられた掘っ立て小屋の中らしかった。
そして、まただ。
何処からともなく幼い少年の声が聞こえ……。
否。
ようやく彼は気付いた。
そして「お、気がついたか。いやーびっくりし「いきなりで悪いんだけどさ、キミ鏡持ってる?」へ?」自分を助けてくれたのであろう、砂漠の遊牧民族染みた服を着た緑髪の女へ問う。
「いや、君って……あのさ、一応私、君よりお姉さんだと思うけどなあ……」
「人は見かけによらないものです。僕多分今は天才美少年の姿をしてると思うけど「天才美少年」ホントは40過ぎのハゲオヤジだから「40過ぎのハゲオヤジ」さ、分かったらさっさと鏡」
怪訝な顔を見せながらも、女はポケットの中の手鏡を渡し、彼は遂に自らの今の姿を目の当たりにした。