第三話【0001:探索者】E
「これは、しまったな……してやられた」
コタローはいつもの調子の軽口を叩いたつもりだったが、声が震えていた。
「か、返せ! コタロー君!」
サツキは慌てふためいていたが、実力では全く敵わない事を理解していた為に何も出来ない。
「おっとォ? 余計な事をしないで下さいよォお嬢さん? ……でなきゃガキを絞め殺すぞ」
「そんな事を、してみろ……! 君をバラバラに分解して、自然に還してやる事だって、僕は出来るんだぞ……!」
「出来ない」
双五は即座に、余裕綽々にコタローの脅しを否定した。
「そんな事が出来るなら、昨日の晩、[元]隊長が本気でテメエを殺しに行ったときにやってるハズだ」
「なーるほど……僕が女性にだけ甘いって線は考えないのか」
「まーあり得るとしたら、虫も殺せねえ優男ってとこだろ……だったら俺が殺される事も無え」
「……」
万策尽きた。
ここで双五を煙に巻いて逃げる手段を、コタローは思いつけなかった。
「さっきの通信、狙いが私だと思わせて、二人への注意を逸らす為にわざと傍受させたブラフだった……って事ね。本当にあなた、性根が腐り果ててる。心の底から失望した。同じ人間だとは信じられない」
「そんな事も想定できなかった、アンタの方が悪いと思いますけど?」
「兎に角、やめなさい。あなたの生きてきた道に泥を塗る事になる。こんな事をしなくても、私達で後で幾らでも「煩え! もうアンタの尻に敷かれ続けるのは真っ平御免被らせてくださいよォ!」霞……!」
結城の説得も虚しく、コタローを抱えた双五は一瞬にしてその場から姿を消した。
「そんな……、霞……」
夕暮れの砂漠。
最早諜報部隊は全員引き上げ、残っているのは目の前の事態に唯々狼狽える事しか出来ない情けない大人と、
「なんだかんだ言っても、あなたの事は……」
自身の暴力によってのみ従えていた相手に対して寄せていた矛盾に塗れた信頼を突き付けられ、茫然と膝をつく少女。
自身の無力を前に、今の結城は声を絞り出すのがやっとだった。
「信じていたのに……」
お久しぶりです、なんとか今回は帰ってこれました。これからも不定期で至らない事が多いと思いますが、応援してもらえると嬉しいです。




