第三話【0001:探索者】II
結城に問われたコタローは、一層得意気な表情で笑んだ。
「よくぞ訊いてくれた! 実は昨晩気絶していた振りをしながら考えていたんだけれど「えぇ……じゃあ何でさっきわざわざあんな話したの……?」本気で考え込んでいたので君達の話は何一つ聞いていなかったんだ。で、それで考えていた結論としては……」
コタローは自身の聖体……小型の青い円形レンズを手にして、話を続ける。
「結城の言っていた[世界を崩壊させた嵐]の正体は、ほぼ間違いなくコレだろう。そして、コレは……
プログラミング感覚で実世界の物質や物理法則を操作出来てしまう装置。
……が、本来の姿の筈だ」
「ぷ、ぷろ、ぐ……?」
「ああ、そこからだよな……まあ、簡単に言えば魔法だ。魔法は分かるか?」
「えーっと……呪文を唱えたら、物理法則を無視した現象を主に起こす事が出来る空想の技術……で、合ってるなら」
「大正解だ。現在の状態のコレは、その[呪文]にあたる部分が[限定的な無機物の分解]しか出来ない状態なのだろう。だとすれば、だ」
コタローは、砂漠の果てを睨む。
「コイツから暴走した破壊コマンドを停止させるコマンドを出力すれば、とりあえずエリアχの砂嵐は収まる筈だ」
「今更砂嵐を止めても、何の解決にもならないと思うけど」
「いいや。アレがあるせいで政府を作り直す必要が生まれたのなら、無くなりさえすれば一先ず元の国家機能は取り戻せる。そうすれば記憶の無い人々と資源を奪い合う必要もないし、あわよくば彼等を安全に治療する環境を整える事も可能だ」
「それで絶対に皆の記憶が戻る、って事じゃない、よね……」
「だがこれが最善の手段だ。それは君も、分かってるだろ?」
……結城は自分の握り締めた拳から、金属の擦れ合うガリガリという音を発する事しか出来なかった。
「その為に……その計画を完遂する為に、私は何をすればいい?」
「もう一度政府へ戻って欲しい。そして、聖体の情報を可能な限り掻き集めてくれ。出来れば[入力装置]或いは、関連する言葉の含まれた情報が特に必要だ。それから、聖体そのものの研究調査が出来る環境が欲しいけれど……今は無理だろうから、兎に角聖体に関する情報をくれればそれでいい」
「分かった」
小声で返して、結城はトボトボと砂漠の中を歩き、やがて二人の視界から消えていった。
「そんなに上手くいくかな……」
不安げな顔をして、サツキは独り言でコタローへ問うたが、
「ダメだった時はまた新しい刺客を捕まえて同じ事をするまでだ」
嗤うでもなく、苦しげでもなく、淡々とコタローは言い放った。
コタローは何一つ、サツキの考えで理解出来ない事は無かった。
「で? 結局私達との事がバレてたから、尻尾撒いて逃げ帰ってきたって?」
だからこそ、今はサツキの言葉の全てに若干同情できるふざけた悪意を感じていた。




