第一話【8888:異世界転生?】I
砂嵐が吹き荒れていた。
だから、上、下、左、右、前、後ろ、どこを見たってソコにあるのは砂だけだった。
轟々と砂嵐は音を立てて吹き上がり続けていた。
その中を、彼はひたすら歩き続けていた。
だが砂嵐の果ては遠く、唯その視界に入る砂でないモノといえば、それはもう自分の手脚の他には何も無かった。
彼は思い出そうとした。
しかし、何故こうして砂嵐の中を彷徨っているのかは何も思い出せなかった。
いつからこうして歩いていたのか。
どうして、何処へ歩いているのか。
それでも記憶の整理を試みて、一つだけ思い出した事があった。
俄かには信じがたい記憶だが……、
自分は、空から落ちてきたトラックに圧し潰されて死んだ。
死んだ記憶があったのだ。
もしもそれが何かの思い違いか、或いは泥酔でもした時に見た悪夢の断片でなければ。
自分は一度死んで、それから何かが起きた結果生き返って、砂漠を歩き続けている?
考えれば考える程、記憶が混乱してゆく。
兎に角何か、この世界には砂嵐以外の何かは存在しないのだろうか。
不安に心が翳りはじめた「うぇ……?」
その時だった。
幼い少年の呆けたような声が聞こえた。
そして砂嵐は不意に無くなり、
雲一つない青空と何処までも広がる砂漠が目に飛び込んできた。
……否。
砂嵐が無くなってから数歩、彼が不意に振り返ったそこには、巨大な砂嵐が天高く吹き続けていた。
つまり、彼は今、ようやく砂嵐から抜け出したのだった。
改めて砂嵐の外の景色を見やる。
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