3.帰国そして集合
明くる日、早朝にベアトリス女王国に帰るため馬車に乗り込む。
「工藤様、やはりカティ達に一声掛けるべきではないでしょうか?」
「平気だ挨拶なら昨日したからな」
「しかし……」
「もう二度と会えなくなる訳じゃないんだ、あとこれ以上駄々を捏ねると置いてくぞ?」
「うっ、はい、わかりました」
ようやく乗ったエレナ姫を確認し、クロエに発車を促す。
しばらく馬車を走らせ街門をくぐる、入って来た時と違い、出る時は荷物を調べる事はなかった。無用心だな。
「さて、そろそろ頃合いか?」
「ハイ、もうよいと思います、これ以上は息がつまってしまうかもしれません」
念のためクロエに確認し、同意を得る。
「ねぇ、そう言えば気になってたけど、これ何?」
「大きいから、食べ物とか?」
「え?でも食べ物はメイドさん達の馬車に積んでたよ?」
「ふっふっふ、気になるか?」
「工藤様?嫌な予感がするんですけど……」
袋に近付き、縛られていた紐を解く。
『………』
そこには、縛られたカトリア王女の姿があり、クロエを除く全員が絶句する。
「な、何をしているんですか!?」
一番最初に立ち直ったエレナ姫が叫ぶ。
「何って、ベアトリスにご招待?」
「いや、明、あんたこれは招待じゃなくて誘拐なんじゃ……」
「そうとも言うな」
「何平然としてるんですか!?」
「ちょ、ちょっと待って明、確か袋って二つ無かったかい?」
「何を言う司、もう一つならそこに転がっているだろ?」
「ま、まさか……」
「お察しの通り、クリスティア女王だ」
エレナ姫が慌てて袋を開ける。
「ほ、本当に、クリスティア猊下じゃないですか……」
「だから、そう言っただろう」
「どうするんですか!問題になりますよ!?」
「平気だ、許可なら取ってある」
「誰にですか!?」
「ウレイト卿」
昨夜、製造技術を渡すついでに、クリスティア女王とカトリア王女をベアトリスに連れていく事を伝えた、最初は渋っていたが新しい技術を優先して渡す事を約束したら快く他の貴族や大臣を説得してくれた。
「なので、問題なし」
「問題大有りです!そもそも本人達が了承してないじゃないですか!」
「なら、本人達に聞いてみれば良いだろ?」
俺はカトリア王女とクリスティア女王の口に噛ませていた布を外す。
「カティ、大丈夫ですか?」
「ありがとう、エレナ大丈夫よ、工藤さんお話はわかりましたがいくらなんでも……」
「魔王ゴーストの討伐……」
「え?」
「幽閉された、法王の救出……」
「えっと、工藤さん?」
「市場での騒動を納めるための技術の流出……」
「………」
「さて、クリスティア法王、カトリア王女、一緒にベアトリスへ行って頂けますか?」
『はい』
うん、姉妹そろっていい返事だ。
「く、工藤様……」
「どうした?ちゃんと了解を得たぞ?」
「了解を得たというか、脅したと言うか……」
「ゴーストに操られた、どっかの誰かの救出……」
鈴が余計なことを言うので、黙らせる。
「うぅ、そうだった、今回あたしも助けられる側だった……」
「鈴さん、もういいです、あれはもう話を聞かない姿勢です」
「うぅ、ごめんねエレナちゃん、力になれなくて……」
鈴とエレナ姫の間の絆が強くなったもよう、良いことだ。
「よし話も纏まったし、クロエ、ベアトリスに急いでくれ」
「畏まりました、明様」
しばらく馬車を走らせ、休憩のため止まる。
「うぅ……」
「情けないな」
止まるや否や、呻いていたのは鈴ではなく、カトリア王女。
「も、申し訳ありません、馬車に馴れていなくて……」
「大丈夫ですかカティ?今お水を持って来ますから」
「ありがとう、エレナ」
「馬車に馴れていない?」
「はい、前は良く乗っていましたが、ここ数年鎖国をしていましたので……」
「こんな所に弊害があったか、仕方ない、クロエ少しペースを下げてくれ」
「畏まりました、ゆっくり進んでも、二日後の夕方には着けると思われます」
「わかった、ならそれで頼む」
クロエとこれからの打ち合わせを軽くしていると、エレナ姫が信じられないとゆう目で見てくる。
「どうした?」
「い、いえ、まさか、工藤様がカティの体調を考えて下さるとは思わず」
「……意味もなく連れて来たと思うか?」
「え?意味あったの?」
鈴は意味がないと思ってたのかよ。
「い、意味ですか?」
エレナ姫もかよ……
「では、工藤さんは、私とお姉さまに、何かしていただきたい事があると?」
「その通りだ、それが終わるまでは丁寧に扱うさ、何、難しい事ではない、少し話を聞かせて貰いたいだけだよ」
「話しですか?それなら、ルクレアでも良かったのでは?」
「そうです、カティの言う通り、わざわざベアトリスに行かなくとも良いのではないですか?」
「一国だけならな、だが考えてみろ、俺達は余りにも知らなすぎる、今まで後手に回りすぎている」
「そ、それは……」
「仕方ないじゃ、もう済まされないぞ?これから先は後手に回るのは危険すぎる、只でさえ魔王の動向が掴めてないんだから」
ここで、ようやく決心がついたのか、クリスティア法王が声をかけてくる
「わかりました、ベアトリスに参りましょう」
「お姉さま、よろしいのですか?」
「カトリア、元よりこれは世界の危機、協力しないなど、有ってはならない事、何より助けられた恩があり、助けに来ていただいた積がわたくし達にはあります」
「わかりました、工藤さん、私も出来る限りの助力をします」
「………」
「工藤さん?」
「いや、すまない、やっと法王らしい姿が見れたなと、思って」
「ふふふ、これでも元は聖女と呼ばれていましたから」
「そうか、第一印象が、あれだったからな」
人間第一印象って大事だなと、しみじみ思う。
「……工藤さん、お願いですからあれは、忘れてください、妹共々お願いします」
「考えとく」
記憶とは得てして、自由に消せないものである。
「そう言えば、工藤様気になる事が一つ有るのですが」
「何だ、エレナ姫」
キョロキョロしながら、エレナ姫が質問してくる。
「メイドの姿が見当たらないようなんですが……」
「はい!はい!あたしも気になってた!」
「まさかとは思うけど、明、置いてきたなんて無いよね?」
エレナ姫の疑問に、鈴が同意の声を上げ、司が失礼な事を聞いてくる。
「司よ、さずがの俺もそんな事は、まだしない」
「まだ?……なら、メイドさん達は?」
「ちゃんと居るだろ、そこに」
「いや、二人しか居ないよね?」
「うん、明くん他の人は?」
現在、メイドはクロエと僕っ娘のアネスのみ、他はと言うと……
「澪?ベアトリスの近隣には、ルクレア以外にも、国があるよな」
「え?うん、そうだね?」
「……工藤様、まさか」
「エレナ姫、仲間外れは良くないと、思わないかい?」
「や、やっぱりそうなんですね、残りのメイド達は……」
「絶賛働いて貰ってる、ガレオン帝国で」
そう、メイド達はガレオン帝国で、皇帝であるダイアをベアトリス女王国にご招待中だ、ここでのご招待の意味は言うまでもないだろう。
「明、幾らなんでもそれは……」
「はっはっは、何を言う司よ、三国会議を教えてくれたのは、司じゃないか!」
「い、いや、確かに言ったけど……」
「大丈夫よ司、あたし達は、明が原因だって証言してやるから」
「そうです、私達は司様の味方をします!」
「ありがとう、鈴、エレナさん」
「まぁ、結局三国での情報共有と、これからについての話し合いは必要な事だしな」
三国で足並みを揃える、それぞれの向きを揃える、大切なことである、特に共通の敵が居る場合はな。
「と、言うわけで昼飯を済ませたら直ぐに出発だ」
「わかりました、なってしまったものは仕方ありません、諦めましょう、しかし!今後何かする際は必ず言って下さい!」
「善処しよう!」
満面の笑みで返すと、エレナ姫は項垂れる。それを慰めるカトリア王女。
「大変ね、エレナ」
「うぅ、カティ、引き取って貰えませんか?」
「絶対、嫌!」
失礼な王族はほっとき飯にするか。
さて、さて、クリスティア法王とカトリア王女を誘拐……否、招待してから二日半後、ようやくベアトリスに着いた。
道中では特に何も無かった、強いて上げるなら、途中カトリア王女が馬車に酔いリバースしたり、それに貰いリバースしてクリスティア法王もリバースしたり、その姉妹リバースが近くに居たエレナ姫に掛かるなど、まあそれぐらいか?あとはルクレア法国内で、珍しい魔物が出て切り伏せたくらいか、その際クリスティア法王とカトリア王女が直ぐに城に帰らないととか言ってうるさかった、伝説のーとか言ってたか?
まあとにかく何も無かった。
〈伝説上の危険極まりない魔物を倒した事より、法王姉妹のリバースが印象に強く残るあたり、さすがマスターです〉
とにかく無事に?ベアトリスに着けましたとさ。
「エレナ姫、もう少し離れてくれ、臭い」
「……ごめんなさい、エレナ」
「いいえ、いいのですカティ、仕方ない事です、工藤様がデリカシーの無いだけです」
「ありがとう、エレナ」
「……でも、申し訳ありませんが、私はお風呂に行って来ますね?」
「……ごめんなさい」
着いて早々、エレナ姫は浴場を目指す、俺達は……
「見つけたぞ!明!」
「見つけましたよ!工藤様!」
おぉ、ダイアとミレナ女王が怒りの形相でこちらに来る、何か帰って来たって感じだな。なにわともあれこれで三国が揃った。
す「やっと三国のトップが集まったのね」
み「うん、不本意な形でね、何か成果があると良いけど……」
す「じゃないと救いが無いものね」
す・み『では、また次回!』




