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9.魔王ゴースト

鈴の顔で、鈴の声で話すそれは紛れもなく鈴ではなかった。


「貴女は誰、鈴に何をしたの!?」


澪が問い掛ける、司と敦もかなり興奮してるな、特に敦は今にも飛びかかりそうだ。


「前に会ったことがあるって言ってたよな?悪いが覚えがない、何処で会ったんだ?」


あくまで冷静にまずは相手の情報を聞き出す。


「ふふふ、ガレオン帝国の謁見の間です」


「ガレオン帝国の?なるほど魔王・ゴーストか?」


「ふふふ、正解です」


「鈴をどうする気だ?」


「別にどうする気もありませんよ、ただこの方が話しやすいのです、彼女とは波長が合うようでしてね」


「話し?」


「はい、聖・魔剣使いの貴方と話がしたいのです」


「素直に従うと?」


「思っていますよ、貴方の知りたいことを教えてあげるのですから」


「知りたいこと?」


「大聖堂で待っています」


「待て!」


鈴の足元に魔方陣が浮かび、その中に鈴が吸い込まれていく。


「くっ、鈴は、鈴はどうなったんだ!」


「落ち着け敦、恐らく大聖堂に移動しただけだ」


「な、なら直ぐに大聖堂に…」


「敵の罠かもしれない、ちゃんと準備をした方がいい」


と、突然胸ぐらを掴まれる。


「お前は鈴が心配じゃないのか!?」


「心配じゃない訳じゃない、だが焦って鈴に何かあったらどうする!?」


「……」


「それに、奴は話がしたいと言っていた」


「それを信じるのか?」


「少なくとも、騙すためには回りくどいと思う」


「私もそう思います、騙すためならカティになって来れば事足ります」


「むぅ」


「かといって無闇矢鱈に突っ込んでいいって訳じゃない、鈴を助けたいならちゃんと準備をするべきだ」


「敦君鈴を助けたいのは皆同じ気持ちだよ、だから落ち着こ、ね?」


「……わかった」


「よし、なら準備をしよう」


「その前に明くんは手当てが先だよ」


「ん?」


見れば右手が拳を強く握り過ぎて血が出ていた。


「……明、お前の気持ちも考えず、すまない」


「いや、どうやら俺も感情のコントロールはまだまだらしい」


「私はそうゆう明くんの方が好きだよ?」


「さぁ、準備しよう」


澪が「好きだよ?」のポーズで固まっている中準備を始める、今は澪に構っている暇はない。……いつもか


固まっている澪はエレナ姫に任せ、俺はクロエに手当てしてもらう。

その間ナビさんに確認したい事がある。


〈大聖堂の様子ですね?〉


さすがナビさん話が早い。


〈現在大聖堂は人払いがされているようです〉


人払い?


〈はい、普段働いているシスターや神父を始め、警備の聖騎士まで近づいてはならないと言われているようです、入る事を許可されているのはマスター達のみです〉


ますます怪しいな。


〈いえ、どうやら罠の類いや魔物も居ないようです〉


そうするといよいよどちらか分からなくなるな。


〈はい、行ってみないと分からないです〉


しょうがない当たって砕けろか。


「明様、わたくし達が偵察に行きますか?」


「いや、クロエ達は予定通り露店商をしてくれ」


ナビさんがわからない以上、もしもの時の保険をかけておきたい。


「クロエ達はもしも俺達が明日の朝までに戻らなかった時にベアトリスに報告に行って貰いたい」


「畏まりました、御武運を」


準備を整え大聖堂へ向かう。



大聖堂近く、人払いをされているからか付近に人影はない。


「行くぞ」


大聖堂の扉を開き中に入る、中を進むと直ぐに目的の人物を見つける。


「ずいぶん寛いでいるな」


「久しぶりの身体だからね、楽しまなくちゃ」


ゴーストは鈴の身体を謳歌しているらしく、大聖堂の礼拝堂で食事をしていた、なんて罰当たりな。


「君たちも座りなよ、立ち話じゃ疲れちゃうよ?」


「………」


「別になにもしないよ?わたしは話がしたいだけだからね」


「……わかった」


全員に目配せをしてイスに座る、礼拝堂に似つかわしくない白いテーブルクロスのひかれたテーブルにゴーストがお茶を置く。


「毒は入ってないよ?」


「念のため鑑定させてもらうぞ」


「傷つくな~」


「どの口が言うのか」


鑑定の結界普通の紅茶のようだ、こちらを害する気持ちは本当に無いらしい。


「じゃあ早速話をしようか」


「その前にこちらの質問に答えて貰おう、でないと落ち着かない奴がいるんでな」


言うまでもなく敦だ、いや、敦だけじゃないな、澪と司そしてエレナ姫までも落ち着きがない、人質が俺達にここまで効果的なのは予想外だった、何か対策を考える必要があるな。


「ふふふ、わかったよ、じゃあ質問どうぞ?」


「まず、鈴は無事なのか?」


「もちろん、前に言ったように身体を借りているだけだよ、ただ、わたしが暴食をしていたから少し体重が………」


「そこいらへんは本人に謝ってくれ」


「あはは……」


何か気が抜けたな、こいつは本当に話をしたいだけのようだ。


「次に、前に会った時と喋り方が違うようだが、どちらが本当のお前だ?」


「それは前のわたしだね、今はこの身体に引かれていると言っていいかな?」


「それはなぜだ?」


「わたしの力が残り少ないからだね、だから戦わなくとも時期に消滅するよ」


「なるほど、ならその残り少ない時間で俺達に話したい事とはなんだ?」


「ふふふ、やっと本題に入れるね」


自分で残り少ない命だと言っているのにずいぶん楽しそうに笑うな。


「さて、単刀直入に言うと、ある魔王を倒して貰いたい」


「魔王を倒す?」


「そう、彼は元人間で闇に囚われ魔王になってしまったんだ」


「ま、待ってください!元人間の魔王って……」


「驚く事はない、現代の魔王のほとんどは元人族だよ」


「そ、そんな………」


エレナ姫がショックを受ける、俺は驚きはするが、まぁ一つの可能性として考えていたのでさほどショックではないかな。


「それで、倒してもらいたい魔王って?」


「彼の名は魔王・デス、現代の魔王を束ねる者」


「………あんた生前は中二病だったろ」


「わ、わたしが名付けたんじゃない!彼が名乗り出したんだ!」


「そいつ中二病だろ」


「まぁ、あながち………」


中二病の魔王を倒せってなんかな……


「彼は間違いなく君たちの障害になる、彼の事を詳しく知りたいのなら、エルフの国へ行くといい」


エルフの国か……


「それに君たちのお友達もエルフの国に居るよ」


「それは、鈴をこれから連れて行くと言う事か?」


「いやいや、そんな事はしないよ、それにこの子にそこまで嫌な事はしたくないかな?」


「ん?」


「え?」


何か話が噛み合わないな?


「えっと、友達を取り戻すためにここまで来たんだよね?」


「あぁ、鈴を取り戻すためにな」


「明くんひょっとして日野君の事じゃない?」


………あ!澪に言われてやっと思い出した。


「友達なんだよね?」


「………いや」


「えぇ~今の間で普通否定の言葉出てくる!?」


「嘘でも友達と言いたくない相手って居るだろ」


「できればエルフの国に行って貰いたいのだけど……」


「今、行く気が少し無くなったな」


まさか魔王に勇者(笑)を助けるよう頼まれるとはな。

そうこう話しているうちにタイムリミットが来たようだ。


「さて、そろそろ時間だね、最後の時を教会で迎えられるのは悪くないね」


「最後に一つだけ聞かせてくれ、あんたは百年前の勇者なのか?」


「ふふふ、やっぱり気になるか、君たちが何処まで知っているか知らないけどわたしは勇者じゃないよ」


「なるほど」


「今ので何かわかったのかな?」


「あぁ、たぶんな」


「ふふふ、やっぱり君は彼とは違うね、彼は君ほど頭の回転が良くなかったよ、だから失敗してしまったのかな?でもね、経験上頭が良すぎるのも身を滅ぼすよ」


「肝に命じておこう」


「うん、うん、年上の言う事は素直に聞くいい心掛けだよ」


「年上ね」


「あら、何か引っ掛かる言い方だね」


「何でもないさ」


「………もっと別の出会い方があれば仲良くなれたかもね?」


「……どうだろうな」


「ふふふ、そこは嘘でもうんと言って欲しかったな?それじゃさよなら聖・魔剣使い、君たちの未来に幸多からん事を願うよ」


そう言ってゴーストらしき気配は消えた、同時に鈴が糸が切れたように倒れる。


「鈴!」


一番に飛び出した敦が鈴を抱き留める。


「鈴、鈴!」


「ん~、もう食べれない~」


だろうな、敦の呼び掛けに寝言で答える鈴、思わず突っ込んでしまう。

見ればゴーストが食べていただろう料理の皿は山のように積み重なっていた。


「これは鈴には言わない方がいいな」


何はともあれ魔王・ゴーストとの話し合いは終了した、一先ずは宿に戻り休もう。


ゴ「という訳で今回は魔王・ゴーストでした」


み「うん、前回の後書きでちょっとネタバレしてたからね?みんな気づいてたよ」


す「うぅ…」


み「鈴大丈夫?」


す「ゴーストのせいで体重が……」


ゴ「いや、一概にわたしのせいとは言えないのではないかな?日頃の不摂生が……」


み「お願いやめてあげて、鈴のライフはもうゼロよ!」


ゴ「仕方ないな、では、また次回!」


ナ〈いえ、貴方に次回はありませんよ?〉

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