3.帝位強奪
闘技場に着き、バカ皇帝と向かい合う。
「よく逃げずに来たな、褒めてやるぞ」
「そりゃどうも」
「ふん、ルールは簡単だ、どちらかが戦えなくなるまでだ!」
「本当に、それでいいのか?」
「なんだ?降参したら止めてもらいたいのか?」
「いや、そちらがいいならこちらは問題ない」
「ふん、せめてもの情けだ、武器を準備するまで待ってやる」
「それじゃ遠慮なく、来い、魔剣・小烏丸!」
取り出したのは、忍者刀の魔剣・小烏丸。
忍者刀なんだから妖刀じゃね?とナビさんに問い合わせたら。
〈神基準で、魔剣だからいいのです〉
と、謎の基準が出てきたので、それ以上は追求しないでおいた。
「ガっハッハ、なんだ?その爪楊枝みたいな剣は!」
そりゃ、お前から見たら爪楊枝だと思うが、嘗めてかかると痛い目にあうぞ?
「では、行くぞ!」
バカ皇帝が突進してくる、バカ皇帝の武器は大楯に大槍、リーチが長く当てればただじゃ済まない、当たればな。
「潜め、小烏丸!」
ここで、小烏丸の能力を紹介しよう簡単に言うと、忍者になれる能力だ。
「ふん、そんなもので何ができる!」
大槍が、俺を貫く、見ていたダイア達が、ざわつきだすが……
「な、なに?」
貫いたと思った俺が、黒い霧へと変わり驚くバカ皇帝。
『どこを、見てるんだ?』
俺達の声に振り向きまた驚くバカ皇帝、そう、振り向いた先に居るのは、六人の俺だった。
「な、なんだ、いったい何をしているんだ!」
「この世界には忍者なんていないから、珍しいだろ?」
多方向からの多重攻撃でバカを翻弄する、すると直ぐに隙が生まれる。
「ちょこまかと!目障りなんだよ!」
大きく振り回された槍で、分身ごと本体を吹き飛ばす気なのだろう、だが槍が凪ぎ払ったのは、全て分身だった。
「な、消え……ぐっ、体が動かない!」
「残念だったな、本体はずっとお前の影の中に居たのさ」
「影だと?」
小烏丸の能力の一つ影術、影潜りと影縛りだ。
「確か、戦えなくなるまでやるんだったよな?」
「ぐぅ、おのれぇ」
小烏丸で顎をかち上げる、もちろん峰打ちで。
「グハッ!……」
バカは、気絶し動かなくなる、勝負ありだな、ダイア達もそれが分かったのか近付いて来る。
「まさか、本当に勝ってしまうとはな」
「当然だ」
「それで、これからどうするんだ?」
「ふむ、とりあえず、このバカを起こすか」
そう言って、水を持って来てもらい、ぶっかける。
水魔法?いやだよ、もったいない。
「ぐっ、ブハッ!」
「お目覚めの気分はいかが?」
「ふん、最悪だ」
「それは何より」
「ちっ……」
「とりあえず、敗者の義務を果たしてもらおうか?」
「なんのことだ?」
「土下座しろ」
「なんだと、貴様!」
「お前、何か勘違いしてないか?お前は負けた、つまり、もう皇帝じゃないんだ、そしてお前はエレナ姫に無礼を働いた、土下座して謝罪するのは当然だろ?」
「ぬ、ぬぅぅ」
「あ、ちなみに、これ皇帝命令ね?」
「ぐ、ぐぅぅ、さ、先程は、無礼な振る舞いをして、申し訳ありませんでした」
「よし、よし、謝り方は知ってたみたいだな、じゃあ俺は皇帝辞めます!次の皇帝は、ダイアでよろしく!」
「な、なに!?」
「なんだ?聞くところによると、次代の皇帝は指名制だそうじゃないか?なら問題ないよな?」
ちなみに、誰に聞いたかと言うと、ナビさんだ、ナビさんマジ便利。
〈お褒めに預かり光栄です〉
「では、賛成のものは拍手を!」
パチパチパチ………
ワー、ワー、ワー、……
拍手だけならず歓声も上がる、ダイアはずいぶん人気らしい、まぁ、あのバカと比べたらな。
「はぁ、最初からこれが狙いだったのか」
「明くんが皇帝って、似合わないもんね」
「確かに、こんなちゃらんぽらんが、皇帝なんて無理でしょ」
目的がようやく分かったダイアがため息をする、澪達は最初から分かっていたのだろ。
すると、ダイアが突然膝間付き頭を垂れる。
「帝位、慎んで頂き申し上げます、ついては今までどうりベアトリス王国との和平を執りたいと思います」
これで国際問題にならないだろう、もっとも、エレナ姫にはその気はないだろうが。ひとまず一件落着か?
が、一人だけ納得していない奴が居るな。
「おい、ダイア俺に帝位を寄越すんだ!」
「兄上、ワタシはこれまで貴方の許されない行いを見過ごして来ました、だからこれはワタシ達兄妹の罪、一緒に償いましょう!この者を牢に入れなさい!」
「な、何を言う、ダイア!」
「兄上は牢で罪を償ってください、アタシは民達の安息を取り戻す事で償います!」
「もしも、ダイアが道を踏み外したなら、俺が聖剣の名の元に切り捨ててやるよ」
「それは、とても頼もしいな」
ダイアは苦笑いをしながら、見ていた兵士や冒険者に向き合い、宣言する。
「皆聞いてくれ!アタシは、ここに、自らの命を賭けて民の安息の地を、取り戻すと誓う、だからどうか力を貸してほしい!」
ウォー!!
先程よりも大きな歓声が上がる、これで本当に一件落着か。
み「明くんが沢山!?これなら一人くらい持って帰っても……」
す「いや、分身だから無理じゃない?」
ナ〈分身ですが実体を持たせる事も可能です〉
み「なら、明くんに囲まれながらの夢の生活も!?」
ナ〈可能です〉
す「それは流石に気持ち悪くない?」
ナ〈欠点があるとすれば、分身はあくまでマスターのコピーです、ですのでマスターをその気にさせなければなりません〉
み「そんなの出来てたら苦労してないよ!」
す「では、また次回!」
 




