2.国境沿い
夕食後、それぞれテントで休む事に、俺、司、敦の三人と鈴、澪の二人に分かれる。エレナ姫達は別のテントがあるらしい。
クロエも鈴達と同じテントを使えば?と聞いたが、馬車の番があるのでと言っていた、そこで、気になり夜中に隠密を使い覗いてみる事に、今回は隠密に加え、結界術で匂い何かも遮断する。
そこで見たものに俺は後悔する、馬車の中では、産まれたままの姿で、一心不乱に何かに祈りを捧げるクロエの姿が……
何に祈りを捧げているのかと思えば、前に俺が着ていた、奴隷服のようなボロ布だった、てっきりとっくの昔に捨てられたと思っていたが……
「あぁ、明様、なぜ貴方はそんなに美しいのでしょう、何故貴方はそんなにも輝いて見えるのでしょう、なぜ貴方はそんなに力強く逞しいのでしょう、あぁ、明様、明様、明様、明様………」
まさか、覗きをして背徳感より恐怖感が強くなるとは、思わなかった……
翌朝、朝食を食べている際、クロエが話し掛けてくる。
「ダークエルフという種族は、あまり寝ないでも大丈夫なのです」
き、気付かれてた!?
〈ハイ、昨夜、クロエはマスターの隠密を看破していました、本人は寝ない自分を心配してくれたのだと勘違いしています〉
ナビさん、もっと早く教えてよ!
〈あの場で教えて、声を出さない自信がおありですか?〉
うん、無理!絶対叫んでたね!
「慈悲深い明様のお心遣い、恐悦至極でございます」
あの所業に恐怖を感じていたとは、知らないクロエが惚けた顔で言って来る、悪い子じゃないんだけどな……
その後、馬車の旅は何事もなく、国境沿いに到着した。
警備をしていた、兵士に救援に来たことを告げ、直ぐに、部隊を率いる者に会う。
国境沿いの砦の中、案内された一室には、一人の女性?が居た、筋肉質の肉体、腹筋は割れていて、格好は一見盗賊のお頭か?と思うような物、後ろには、血で染められたような赤い鎧がある。
「久しぶりだな、エレナ嬢ちゃん?」
「はい、と言っても、一ヶ月ほど前にお会いしたばかりですが」
「ハッハッハ!そうだったな!」
「あの時は、このような事になるなど、思いもしませんでした……」
「何辛気臭い顔してんだ、アタシ達はまだ負けた訳じゃない、故郷を取り戻すんだ!そのための、援軍だろう?」
「そうでした、ご紹介が遅れました、こちらが……」
「聖剣使いだろ?こっちにも、情報は届いていたから、知ってるよ」
「……」
「ずいぶん、無口なやつだね?」
「あ、いえ、これは、その、」
「もう喋っていいのか?」
そう入る前に、エレナ姫に喋らないように言われていたのだ余計なことを言って、相手を怒らせたら不味いからと、人をなんだと思っているのやら。
「工藤 明だ、よろしく」
「アタシは、ダイア・ガレオンだ、ダイアでいい、よろしく」
「なら俺は明でいい、ところで、ガレオンって事は、あんたが皇帝か?」
「いや、アタシじゃないんだ、前皇帝の父上が、先の侵略でなくなって、実質即位したのは、兄上なんだが……」
歯切れの悪い、ダイアの話を聞いている途中、テントに大男が入って来た。
「ダイア!勝手に何をしているんだ!」
「兄上、客人の前です、お控えください!」
「黙れ、俺に歯向かうのか?」
兄上って事は、こいつが皇帝か?ダイアと違い横暴で、いかにも俺様主義っぽいな。
周りの兵士も露骨に、無理矢理従っているみたいだし。
「だいたい、俺はベアトリスみたいな、女の尻に敷かれているような、国の力を借りるなんてごめんだ!まぁ、股を開くなら別だがな」
国際問題にならないのかね?まぁ、そうなる前に、俺が消すけどな、こいつ今、澪や鈴に気持ちの悪い目を向けた、ここまで遠慮がないなら、こちらも遠慮はしないでいいよな?
スッと前に出て、バカ皇帝に提案する、こいつはもう、名前すら覚える気はない。
「俺たちの力が信じられないなら、試してみてくれないか?ただの模擬戦だと、本来の力が見えないかもしれないから、何か賭けると面白いかもな?」
「賭けか、いいだろう、俺が勝ったらお前ら全員、俺の奴隷だ!」
「な、兄上、何を……」
「いいだろう」
「明、お前まで……」
「ただし、俺が勝ったら、皇帝の座を頂くがいいか?」
「何ぃ?」
「そうだな、それじゃあ、賭け金が吊り合わないな、なら、俺達五人に加え、エレナ姫とアリシア、それにクロエも足そう」
「ふん、いいだろう、その勝負受けてやる」
「エレナ嬢ちゃん、いいのか?」
「ハイ、大丈夫です」
「嬢ちゃん……待ってくれ兄上!私も、賭け金に追加する!」
「ダイアが?ガっハッハ、こいつはいい、お前をいつも、屈服させたいと思っていたんだ!いいだろう、では闘技場で待っているぞ!」
「いいのか?」
「ああ、君たちだけに危険は背負わせない……」
危険ね……
「これは、大丈夫そうですね」
「お、エレナちゃん分かってきたね?明、本気であのおっさん、潰す気だよ」
「ハイ、あの目をしているときはとんでもない事をする時だと、分かるようになってきました」
「そ、そうなのか?本当に大丈夫なのか?エレナ嬢ちゃん」
「ハイ、大丈夫ですよ、あの目をしている時は」
「そういうものか?」
「ハイ、いずれ、ダイア様も馴れます、私のように」
「なんか、目が死んでないか?」
エレナ姫の心労はさておき、潰すのは確定なので、さっさと闘技場に移動する。
す「覗きはアカン!」
み「何で関西弁?」
す「いや、なんとなく」
み「でも、覗きはやだよね、明くんなら別だけど」
す「平常運転ね、それにしてもこの世界王族に一人はどうしようもないのが居るわよね」
み「うん、特に王様っていう分類の人ね、何でだろう?」
ナ〈そうゆう話だからでは?〉
す「久しぶりに出てきたと思ったら、元も子もない発言を……」
ナ〈では、また次回!〉




