10.遠征準備
その日、朝早くに伝令が届き、城内は騒然となった。
俺達は、朝食の後謁見の間に呼ばれていた。今回は、ナビさんにより、緊急事態を知っていたため、速やかに移動する。
「ふぁぁ~、朝から何があったのよ、どたばたうるさくて、寝てられなかったよ」
状況を知らない、鈴があくびをしながら言う。
「まぁ、緊急事態ではあるかな?」
「何?あんた知ってんの?」
「いつも、思っていたが明は何故知ってるんだ?」
「秘密だ、それより急ごう」
「明くんが急ぐって事は、それほどの事態ってことだよね」
澪の言葉に、さっきまであくびをしていた鈴を含め、全員の顔が引き締まる。
謁見の間に着き、すぐに中に入る。
「お呼び立てして申し訳ありません」
「能書きはいい、今の詳しい状況を教えてくれ」
「どうやら、工藤様はご存じのようですね、今朝伝令が届きました、ガレオン帝国が陥落したと…」
ざわざわと、周りが騒がしくなる。
「ねぇ、ガレオン帝国って?」
「ガレオン帝国は、現在最も武力を保有する、人族の国です」
「その、ガレオン帝国が魔王の手によって、滅ぼされたってことだな」
「いえ、工藤様まだ滅びた訳ではありません」
「と、言うと?」
「現在、我が国との国境沿いにて、生き残ったもの達が、奪還作戦を計画しています」
「なるほど、なら俺達が呼ばれたのは…」
「ハイ、奪還作戦に勇者達を派遣してほしいと、使者が来たからです」
「解った、司達と俺も行こう」
「助かります、では、こちらで馬車を用意しますので、ご準備をお願いします」
「了解した」
直ぐに、国境沿いに行くため、謁見の間出る。
準備と言っても、特別しなければいけないこともないので、いつでも行けるように、ある程度支度をしたら、全員で、俺の部屋で待つことに。
「何か、大変な事になったわね?」
「そうだな、初めてこの国から出るのが、帝国を取り戻すためとはね」
「うん、それに、詳しい状況も、解らないらしいし…」
「僕達に、どこまで出来るか…」
「それに、武力国を倒すほどの、魔王となると、不安になるな…」
「あぁ、観光はちゃんと出来るのか、不安だ」
全員が、苦々しい顔をする。
「いや、ちょっと待って、今、一人だけ変な奴いたわよね?具体的には、一番最後!」
鈴が言うと、司達もこちらを見てくる。
「旨いもの、あるかなぁ?」
「だから、それどころじゃないって!」
「いや、鈴、重要なことだぞ?例えばだ、奪還作戦中は物資がないから、くそ不味いスープだけとか地獄だぞ?」
「それくらい、我慢しなさいよ!」
「よーし、わかった、ならお前は作戦中、スープだけな!」
「い、いや、それは…」
「まぁまぁ、二人共、落ち着いて」
「そうだよ、明くんも鈴も、いい加減にしなさい!」
「ふ、だが、明のお陰で、いつも通り行けばいいと分かったな」
「そうだ、気負っても仕方ない、ならいつも通りに自分達の出来る限りの事をするだけだ」
その後、準備のできた馬車に向かうが、緊急時なのに、少し準備に時間が掛かりすぎている気がする、何かあったのか?
馬車には、エレナ姫とアリシア、そして久しぶりに見るクロエが待っていた。
「お、お待たせしました」
「ずいぶん、時間掛かったな」
「あ、はい、いろいろありまして……」
エレナ姫もアリシアも疲れた顔をしている、クロエだけなぜか誇らしげ?楽しげ?な顔である、本当に何があった。
「まぁ、いい、急ごう」
そう言って、馬車に乗ろうとすると、クロエが止めに入る。
「お待ちください、それはエレナ姫の馬車です、明様達はあちらです」
そう言って、クロエが指差したのは、大きめの、エレナ姫が乗ると言う馬車の倍豪華な馬車、……あれに乗るって何の羞恥プレイ?
確認するようにエレナ姫を見ると、明後日の方を見る、おい、こら、こっち向け!
仕方なく、クロエに聞いてみる
「あれは、なんだ?」
「馬車です!」
「そうじゃない、何で、あんな馬車に乗らなきゃいけないんだ?」
「お気に召しませんか?……」
叱られた仔犬のように、しゅんとするクロエ、文句言いずら!
「えっと、本当に、私達が乗るの?エレナちゃん?」
「はい、残念ながら……」
どうやら、選択肢はないようなので仕方なく乗る。出発から不安を煽られるな、この遠征大丈夫か?
す「人間の国が一つ支配されちゃったんだね」
エ「……あのぉ」
み「うん、明くんが何とか取り戻してくれたらいいけど」
エ「……あのぉ」
す「でも相手は一番の武力を持つ国を倒す相手だよ?そう簡単に行くかな?」
エ「……すいません」
み「大丈夫明くんなら、皆の希望を取り戻してくれるよ!」
エ「あの!!」
す・み『え?』
エ「うぅ、やっと気づいていただけました……」
み「エレナちゃん何で泣いてるの?」
す「てゆーかいつから居たの?」
エ「最初から居ました!何で気付いてくれないのですか!」
す「ごめん、結構シリアスな内容だったので話に夢中になってた」
み「うん、ごめんねエレナちゃん」
エ「いえ、もう大丈夫ですので…ところで何で私は呼ばれたのですか?」
す・み『………』
エ「あの……」
す・み『なんでだっけ?』
エ「えぇぇ!?」
す・み『では、また次回!』
エ「そんな、ちょっと待っ……」




