幕間.表パーティー(澪視点)
「はぁ……」
何度目になるか、ため息をつく。ため息の理由は簡単、明くんが居ないから。
魔物を退けた、戦勝パーティーなのに、その立役者である、明くんは現在部屋で寝ているらしい。無理矢理連れて来ようかとも思ったが、疲れているかもしれないし、辞めておいた、だけどやっぱり……
「はぁ、つまんないな…」
「つまらなくて悪かったわね」
隣に居る鈴が、膨れっ面で言ってくる
「んー、別に~」
「気のない返事ね、明がいないだけで、こんなになるなんて」
「鈴だって、いつもみたいに、料理爆食いしてないじゃん」
「あ、あたしだって、毎日そんなに、食べる訳じゃあ…」
途中で言葉につまる鈴。
「……司くん達、大変そうだね」
「そうね、明の代わりに、女王様と挨拶してるのよね」
明くんが来なかった代わりに、司くんは今、国の偉い人達と話をしている、それに付き合い、敦くんも一緒に回っているが、二人共笑顔が硬い、その理由は緊張ではなく。
「何で、明くんの事を、伏せられなきゃいけないんだろ」
そう、あくまで今回は、勇者である私達が、活躍した話しになっている、それに対し二人だけではなく、私や鈴も不満があり、今にも爆発しそうなのである。
「国のためってやつなんじゃない?」
冷ややかな目で、会場を見る鈴が言う。
そこにエレナちゃんが近づいてくる。
「確かに、国や世界のために、勇者様の活躍は必要です、ですが、私もお母様も納得して、やっているわけではないのですよ」
「じゃ、何でこんな風になってんの?」
「世界の希望のためですかね……」
「その希望のために、明くんが誰にも正当な評価を得られないでいいと思ってるの!?」
「そんなことありません!」
叫ぶ澪に、思わず叫び返すエレナ姫。
会場が一瞬、静まり返るが、直ぐに喧騒を取り戻す。
「ごめんなさい、大きな声を出しちゃって……」
「いえ、私の方こそ、ですがどうか信じてください、いつか必ず、工藤様には正当な栄誉を授け、世界に知らしめると約束いたします」
「うん、絶対だよ?じゃないと、二度と口聞かないからね、エレナちゃん」
「それは、嫌ですね」
「あー、うん、二人共、青春してるところ、悪いんだけど、明が黙って授けられるのを、待つと思う?」
「……」
「気づいたと思うけど、多分明なら自分で取りに行くよね?」
「た、確かに」
「何か、私達って……」
「エレナちゃん、ダメ!それを言ったら、恥ずかしくて、この場にいられなくなるから!」
「そ、そうですね!忘れましょう!」
私とエレナちゃんが、自分達の空回りぐわいに、紅くなっていると、窓の外に、キレイな水晶の雨が降っていた。
「キレ~、何かの、魔法かな?さすがファンタジー世界」
「そうですね、どこかの国の方が用意したのでしょうか?」
「明くんも、部屋で見れてたらいいな……」
「……澪さん、少なくとも、私やお母様、アリシア達は、工藤様の偉業を知っています、もしも、工藤に不利益があったら、私達が、出来る限りの事をさせていただきます、どうか信じてください、私達を」
「うん、信じてるよエレナちゃん!」
その後は、司くん達も加わり、夜は更けていった。




