マジンギガント
俺達は村長に教えてもらったマジンギガントがいるかと思われる山の中に入っていた。
「何で、ホースちゃんを連れてこなかったのよー! 私、もう疲れた!」
「しょうがないだろ、モンスターが多く住み着いている場所にホースを歩かせたら危ないだろ!」
すると、ノノはわがままを言うセナを庇う。
「【あ】さん! セナさんのことを悪く言わないでください!」
「だけど、コイツをこれ以上甘やかすとダメな人間に......」
ノノは俺の話を無視し、話を続けていた。
「セナさん、私がおんぶしてあげましょうか?」
「本当!?」
セナは目を輝かせて言う。
すると、話を聞いていたビッグさんが答えた。
「それじゃあ、そろそろ休憩にするか」
俺達は近くの木の下に座り休憩していると、おかしなことに気がついた。
「なあ、村長はこの山にはたくさんのモンスターがいるって言ってたよな?」
「ええ言ってたわよ」
「はい! おじいちゃんはモンスターがいるっていってましたよ」
「ハッハッハ! どうしたんだ急に【あ】君」
「......いや、モンスターがたくさんいるって言う割には周りも静かだし全然いないなーって思ってな」
俺が答えるとみんな黙り込んだ。
「......そういえばそうね。モンスターがたくさんいるなら、そろそろ1匹ぐらい現れてもいい頃合いよね」
「言われてみればそうですね」
「まあ、モンスターが現れないのはラッキーじゃないか。さあ、マジン探しを再開しよう!」
こうして、俺達は少し不思議に思う個所があったがマジンを探すことを続けた。
***
ビギナータウンから何キロと離れた山の奥に壊れ果てた宮殿が佇んでいる。
【あ】達が山の中に入った頃、ビギナー大陸のマジンに動きがあった。
「あーあ、腹減ったー。せっかくゴブリン共を脅して村の食料取ってくるように仕向けたのに呆気なく冒険者共に全滅されちゃってよー」
マジンギガントの座る王座の後ろには、この山に住んでいたモンスターの死体が積んであった。
すると、マジンギガントは【あ】達の気配に気づく。
「これからどうし......オッ! 人間がここに近づいてる! 何年振りに人間がここへやってきただろうなー? とにかく今日は楽しい一日になりそうだ!」
ギガントは満面の笑みで言う。
「さぁーて、人間がここに来ることだし、準備運動でもしてるかな!」
***
俺達は山の奥へと着々と進んでいた。
「おいおい、俺達結構歩いたよな? このままじゃあマジンに会う前に野垂れ死にすんじゃないか?」
「そうだなー、そろそろ見つかってもいいが......」
俺達は山の中を約3時間以上歩いていた。
すると、セナが突然叫びだした。
「ねえ、あそこに何か見えるわよ!」
「本当か!」
俺達が目にしたのは、壊れ果てた宮殿だった。
「あれなのか?」
「あれみたいね」
「あの中にマジンがいるのか」
「はい、あの中におじいちゃんが言っていたマジンが......」
俺達は真剣な表情になる。
「行くわよ! ノノ!」
「はい、セナさん!」
2人は走って、宮殿へ向かった。
「おい! セナ、ノノ、先に行くな!」
俺とビッグさんも後に続き走って向かった。
俺達は宮殿の中へ入ると、マジンらしき奴が準備運動をしていた。
「あ、あの王座の後ろに積んである死体って、ここに住んでいたモンスターじゃないか!?」
「......」
モンスターの大量の死体を目にした俺達はただならぬ雰囲気が漂う。
すると、マジンギガントは俺達の存在に気がついた。
「えっ! もう来たの!」
マジンギガントは正面に置いてある玉座へと急いで座った。
「へー、まずは自己紹介だな、俺様の名はギガント。ビギナー大陸のマジンを勤めている......」
ギガントは長々と俺達に自己紹介をした。
本当にコイツが伝説のマジンなのか? てっきり俺は、体格が物凄く大きく、恐ろしい顔のモンスターを想像していたが、俺達人間とあまり変わらない顔つきをしている。
「さて、自己紹介も終えたし、そろそろやろうぜ」
ギガントの目つきが飢えた狼のような目つきへと変わった。
「やってやろうじゃないの!」
セナが言い返すとマジンギガントから黒いオーラが体中を覆い出した。
「ハッハッハ! いいぞ、人間! これだから人間共は面白い」
なんて生々しいオーラだ。
俺はセナ達の様子を見てみると、その場にいる全員が険しい顔つきになっていた。
「これは、挨拶代わりの一発だ、絶対に......絶対に避けろよ」
俺意外の皆があの一発に危険を察知した。
「ヤバいのががくるわよ......」
「俺の相棒が危険だと悲鳴を上げている」
「す、凄い殺気を感じます......」
すると、マジンギガントは片腕を俺達の方へ向け、大声で叫んだ。
「俺様の必殺くらえ! ギガントブラスト!」
マジンギガントの必殺技はとてつもなく大きな大きさと音と共に俺達に向かってきた。
「あれはヤバいって! このままじゃ俺達死ぬぞ!」
「わかってるわよ、うるさいわね。あんた達、私の周りに集まって!」
ズドーン!!!!!! 宮殿に大きな音が響き渡った。
「おーい! 生きてるか人間?」
マジンギガントは俺達が死んでいないか確認している。
「あんた、人間様を舐めるんじゃないわよ」
セナは少しマジンギガントにイラついているようだ。
今まで腹立つことしか口に出さないセナだったが、こんなに怒ったセナを見るのは初めてだ。
「ほーう、お前ウィザードか? 面白くなってきたな」
マジンギガントは口の周りを舌で舐める。
セナはあのマジンギガントの必殺技をマジックバリアで俺達を守ってくれた。
「セナ君、次は俺と相棒に任せろ!」
ビッグさんはバトルアックスを構え、マジンギガントのもとへ走って向かった。
「おお! 次は、ウォーリアか? 面白い人間共がたくさんいるな、このパーティーは!」
ビッグさんはマジンギガントにバトルアックスを斬りつけた。
「おいおい、その程度かウォーリア? 俺様をもっと楽しませてくれ」
宮殿にバトルアックスを斬りつける音が宮殿に鳴り響く。
「これもくらいなさい! エレキサンダー!」
マジンギガントは余裕な表情で言う。
「ハッハッハ! これはピンチだな」
ギガントはそう言うとビッグさんを足で弾き飛ばし、セナのエレキサンダーをもう一方の片手で握り潰した。
「うぉっ!?」
「ビッグさん!」
ビッグさんは鈍い音と共に軽々と弾き飛ばされ、宮殿の瓦礫にめり込んだ。
すると、ノノは俺に叫んだ。
「ビッグさんは私に任してください! 【あ】さんはセナさんのフォローをお願いします!」
「......ああ」
フォローって俺は一体何すればいいんだ? だからマジンと戦うのはまだ早いって言ったんだ。
そして、セナはさっきよりもますます怒りが込みあがっていた。
「私の自慢の魔法を片手で握り潰してくれちゃって......」
セナはブツブツと独り言を言っていた。
「今、あのウォーリアを回復しているのはハイプリーストテスかな? それと、そこでボーッとしている奴は何の職業なのかな?」
ギガントは俺のことを観察している。
「うーん、その武器はウッドソードか? お前、もしかして冒険......おっと!」
セナはマジンギガントにもう一度エレキサンダーを放つ。
「ウィザード、お前の魔法は俺様には通用しない、学習するんだな!」
「うるさい! あんた、今にも私の強さを思い知らしてやる、【あ】! なにボーッとしてんのよ。ちょっとは手伝いなさいよ!」
俺は何も出来ない状態でいた。
こ、怖い。
あれがマジンギガント......俺がアイツと互角に戦えるのか?
いや、無理だ。さっき1対1でビッグさんが戦っても手も足も出せなかった相手だぞ、一体どうすれば......。
すると、俺はリカとの約束を思い出した。
『これだけは約束して、絶対に帰ってきて』
そうだ、忘れてたよ。アイツとの約束。
「はあ、もうお前らと遊ぶの飽きてきたわ」
ギガントは残念そうな表情で言う。
「クッ......」
セナはマジンギガントとの戦いでボロボロの姿となっていた。
「終わりだ、死ね!」
「さっさと起きなさい【あ】!」
マジンギガントガ シヨウシタ ギガントブラスト ヲ コピー シマスカ?
ーYESー ーNOー
「YES」
コピー カンリョウ ギガントブラスト ヲ コピー シマシタ。
ノコリ シヨウカノウ カイスウ 10カイ。
「必殺ギガントブラスト」
「ギガントブラスト」
俺とギガントのギガントブラストは競り合い、ギガントの表情に動揺の顔つきが見られた。
「......ハッハッハ! なぜ俺様の必殺技を使えるのか知らないが、面白い! いいぞ、ハッハッハ!」
お互いのギガントブラストは打ち消し合い消滅した。
「もういつも遅いのよ、あんたは」
セナは泣きそうな表情で俺を叱る。
「悪いな、だがもう大丈夫だ」
すると、ギガントは俺に笑いながら質問してきた。
「お前の名は何と言う」
「俺の名前は【あ】だ! よく覚えとけ!」
「【あ】か......変な名前だな」
「うるせえ!」
ギガントはにやけた表情になり、叫んだ。
「さあ! 最終ラウンドを始めようか! 【あ】! ギガントブラスト」
「ああ、これで決めてやるよ! ギガントブラスト」
するとセナが俺に叫びながら言った。
「うー、悔しいけど今回だけはあんたに助太刀してあげるわ!」
セナに続き、ノノの回復魔法の治療を終えたビッグさんが俺逹に駆けつける。
「【あ】君、俺も助太刀するぞ!」
そして、セナとビッグさんは魔法を放った。
「ノヴァファイヤー」
「スラッシュアックス」
さっき、ビッグさんを治療していたノノも俺達に補助魔法を唱えた。
「オールパワー」
ノノが魔法を唱えると、力が漲るのを感じた。
これなら、いけるかもしれない。
「ハッハッハ! これは絶体絶命のピンチだな!」
マジンギガントはこのピンチな状況に笑っていた。
「くらえ! 俺様のフルパワーだ!」
すると、ギガントブラストの威力がさっきよりも強く感じた。
「......お、重い」
すると、セナは俺達に叫んだ。
「皆! あともう一踏ん張りよ!」
「ああそうだな!」
「そうだな、セナ君!」
「頑張ってください、皆さん!」
そして俺達はマジンギガントに全ての力を込めに放った。
「「「「いっけーーーーーー!!!!!!」」」」
ギガントは笑いながら俺達に言った。
「ハッハッハ! 実に面白かったぞ! 人間共、ハッハッハ! ハッハッハー!」
こうして、マジンギガントの笑いは宮殿全体に響き渡り、静かに消えていった。