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やはりこのクソゲー世界はおかしすぎる。  作者: キング
第一章 【ビギナー大陸】
5/10

魔法少女セナ

 俺はギルドの酒場で食事をしながらジュースを飲んでいた。

 しかし、本当はリカに昼食のおつかいを頼まれていたのだが喉が乾いてしまい少しの間ギルドでひと休みしていたのだ。


 最初は大人ぶって酒を注文してみたが、あまりにも俺の口に合わず酒場のオススメのジュース【プルプルスライムの贅沢炭酸ジュース】を飲んでいた。


「うまいな......」


 俺は大人っぽく口ずさんでいると遠くから揉め事をしている声が聞こえた。


「なんでよ! なんでスカルドラゴンの討伐を一緒に行ってくれないの!」

「だから何回も言ってるだろ! スカルドラゴンはこのビギナー大陸で上級クエストなんだぞ! 俺達じゃ手に負えないんだよ!」


 クエストに行くか行かないかについて言い争いみたいだ。


「さっきから言ってるじゃない! 私は上級職のウィザードなのよ。あなた達は見てるだけでいいのよ!」

「だから、俺達は中級職達が集まったパーティーだ。そのクエストは出来ない、他の人に当たってくれ」


 ギルド内が少しの間静かになったので、言い争いが終わったみたいだ。


「さて、喉も潤ったことだし家に帰るかな」


 俺はテーブルから立ち上がり、ギルドを出ようとすると。


「あっ!」


 ストン!!!


 つい、俺はブカブカの服を着た魔法使いのコスプレをした小さな女の子のヒラヒラのマントを踏んでしまった。


「ごめん、お嬢ちゃん大丈夫かい?」

「イター、なにあんた私のお気に入りのマントを気安く踏んでんのよ! 魔法で消し飛ばすわよ!」

「えっ......」


 こんな可愛い顔をした小さな女の子がとてつもなく口の悪いことを言ってきたので困惑してしまった。


「お、お嬢ちゃん......大人に向かってその口の効き方はいけないんじゃないのかなー?」

「あんた何言ってんの? こう見えても私20なんですけど」


 この子は1人でおままごとでもしているのだろうか?


「そっかー、20なんだねーすごいすごい!」


 俺は女の子に話しを合わせるとイライラした表情で女の子は言う。


「あんたこれ以上私をバカにすると眼球抉るわよ」


 はぁ、俺子供の面倒見るの慣れてないんだよなー。

 それとこの子物凄く腹が立つ。


「ごめんごめーん、じゃあ何か代わりにお兄ちゃんがおもちゃ買って上げるから許してー」

「ホントに殺されたいようねあんた......だけどお詫びしてくれるならこのクエスト、私と一緒について来て」


 俺の目の前に見せられたのは上級クエストのスカルドラゴンの討伐クエストの依頼の紙だった。


「これって、さっき奥で揉めてたのってお前だったのか!」

「そうよ、だけど安心しなさい......」

「私は上級職のウィザードなのよ、だろ?」

「な、なんで私が次言う言葉が分かるのよ! も、もしかして私のストーカー?」


 彼女は俺をゴミを見るような目で見上げている。


「ちげぇーよ、俺はお前みたいな生意気なガキには興味はねぇーし、さっきから大声で言い争いが聞こえてたんだよ!」

「ガキとは失礼ねあんた! だから私は20でちゃんとした大人なんですけど!」

「ふーん、そっかぁ~」


 このガキが俺より年上の訳がないだろ、どうせ大人に憧れた痛い奴なんだろうな。


「あんた信じてないでしょ」

「うん? 信じてるよー」

「そういいわよ! 受付所に行って私のギルドの登録証を見せて上げる。それを見て私が20って証明出来たらこのクエストに行くことは決定ね!」

「あー! いいぜ!」


 俺はドヤ顔で言い放った。


「だけどお前、ウソは書いてないだろうな?」


 すると、彼女は突然笑い出した。


「あんた知らないの! この優しい姉さんがギルドの知識の無い赤ちゃんに分かりやすく教えてあげまちゅね」


 コイツ、マジで腹立つからぶん殴りたくなってきた。


「あのね、あの登録証には特殊な魔法がかけられていて、嘘のことを書いても登録出来ない仕組みになっているよ。だから25歳やらテキトーな名前を書いても登録出来ないってわけ」


 ふーん、良く出来てる仕組みだな。

 それじゃあギルド内で偽名を登録している冒険者は誰ひとりいないってことか。


「わかったよ、とにかくギルドの登録証を見ればいいんだろ」

「そうよ」


 俺達はギルドの受付所へ行き、受付所のお姉さんにこの生意気なガキの登録証を見せて貰った。


 うっ......マジでコイツ20なのか。


「ま、当然の結果よ」


 彼女は勝ち誇った顔をしている。


「ふーんそっか~、20なんだー」

「そういえば気になってたけど、あんたはどうなのよ!」

「えっ! 何のことかな~」


 今一番振られたくない事を聞かれた。


「ねぇねぇお姉さん! コイツの登録証見してー」

「お、おい! なんで俺の登録証を見るんだよ!」

「だってー、レディーの情報見といて、あんたの登録証だけ見せないのは不公平じゃない」


 コイツ、まともなこと言うな。


「さあ、見させて頂戴」

「かしこまりました」


 受付のお姉さんは俺の登録証見せた。


「ププッ、可愛いわねあんた。私より2歳年下じゃないの」

「う、うるせー!」

「それと、なによ名前が【あ】ってマジウケる!」


 俺の名前のことで笑い出すと、近くで聞いていた受付のお姉さんは必死に笑いをこらえていた。


「まっ、これでお姉さんのお願い聞いてくれるわよね」


 俺の体をチョンっと触りながら言ってくる。


 ウザイ。


「だけどお前、上級職のウィザードだったら1人で行けるんじゃないか?」

「私も1人で行きたかった所だったけど、このクエストは2人以上じゃないと行けないのよ」


 クエストには条件があるクエストもあるのか。


「てかどうしてお前はスカルドラゴンを倒したいんだ?」


 俺は彼女に質問してみた。


「あなたには関係ないでしょ! ただスカルドラゴンの素材が欲しいだけよ」

「ふーんそっか、まあ改めて俺の名前は【あ】だ。よろしく」


 何か理由があるらしいが詳しいことは聞かず、自分の自己紹介をした。


「プププッ、やっぱりあなた変わった名前で最弱職の冒険者は可哀想ね」


 コイツが20だからって、これ以上舐められるのはダメだ。

 

 俺は彼女に真顔で言ってやった。


「これ以上俺の名前のことを触れると一生背が伸びなくなる呪いをお前にかけるからな」

「わ、わかったわよ! そんな怖い顔で言わないでちょうだい!」


 俺もこの名前でいじられるのも慣れてきたが、コイツだけには言われたくない。


「次は私の自己紹介ね。私の名前はセナ、よろしく。たとえあなたが最弱職の冒険者でも見てるだけで良いから大丈夫よ」


 その言いようだと、俺はいらないみたいだな。


「さぁ行くわよ、出発進行!」


 コイツ、やる気満々だな。


「ちょっと、返事はー!」

「おー!!!!!!」


 俺達はスカルドラゴンを討伐しに向かったのだった。



 ***



 お姉さんに地図を渡され、俺達が着いた場所はボロボロに成り下がった墓場だった。


「随分と広い墓場だなー、日本の墓場の2倍以上デカさだぞ」


 しかし、構造は外国にある墓場に少し似ている。


「日本? 何言ってんのあんた」

「いや、何でもない」


 俺達はそんなくだらない話をしていると洞窟へとたどり着いた。


「そろそろわね」

「俺、こんなに緊張したの高校の面接以来に緊張するぞ」

「だからあんた、さっきから何言ってんの」


 墓場の奥に進むに連れて場の空気が冷たくなっていった。

 

「あれか?」


 地面の下で寝ているスカルドラゴンがそこにいた。


「そう、あれがクエストの討伐目標のスカルドラゴンよ」

「なあ俺が予想してたよりもデカいんですけど......」

「さぁ、つべこべ言わずに行くわよ!」


 コイツ、何も考えずにつっこむ気か。


「突撃じゃー!!!!!!」


 セナは雄叫びを発し、走って行った。


「オイ、待てよ!」


 こうして、俺とセナ対スカルドラゴンの戦いが始まったのだった。



 


 

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