転楽
私の生きる意味なんてどこに有るんだろう?私はそんな事を空を見つめて考えてた。
つけっ放しのテレビは女性芸能人の不倫、東京で若者に人気のデートスポット、そんなくだらない情報ばかりをまるでノイズの様に吐き出し続けている。これを聞いている位ならラジオの砂嵐を聴いている方が多少はマシだと言う事に私が気が付くのは、もう少し先の事だった。
そして私は無機質な文字をディスプレイから追いやり、ネット配信アプリ「プレパ☆」を起動する。私はココに居るんだと、私の声を届ける為に。
プレパの事は同じクラスのミカちゃんから聞いた、なんでもこういうアプリを使うと友達が出来たり、人気者になれたりするらしい。
ミカちゃんもこれで人気者になって年上の彼氏が出来たんだって言ってた。大人っぽいなあって思ってたけどもしかしたらそれが理由だったのかも知れない
そして、もしも私みたいなちんちくりんでも人気が出来るなら…そう思って私は家に帰ってからスマートフォンにアプリをインストールしてしまったのだった、崩壊へと足を踏み出してしまった事に気がつかぬまま···
最初の内は人なんて全然来なかった。まあ当たり前か、沢山の人が配信してる中でわざわざこんな所に来るような人がいる訳もないし
私は喋りは稚拙だしテレビで観る漫才師みたいに面白い事が話せる訳でもない。それなのにたまに気まぐれでフラッと訪れてくれるリスナーさんとお話をするのが何よりも楽しかった。
その後何回も配信を重ねているウチに少しずつ固定のファンの人が付くようになっていった。1人、また1人と固定ファンがつく度に私はこの人に必要とされているんだという感覚が頭の中を駆け巡ったのだった。
中でもその中の一人、HN『チャッピー☆』さんは特に私に優しくしてくれた。私の枠に来てくれる度に「声可愛いね」と言葉を掛けてくれるし、同じ県内に住んでいるという事もあり地元ネタでも盛り上がった
でもチャッピー☆さんは私に良く手の写メみせてほしいなあなーんて言ってくるのだけはちょっと困った。しかしチャッピー☆さん以外にも沢山の人から可愛いねーって言われて嬉しかったのもまた事実だった…
そして次第に私は変わっていった。まずは生配信の影響で睡眠時間が大幅に削れて行った。そして次に生配信アプリでセリフを読む事にした、男の人が好きそうなヤツ。告白する様なセリフやアニメやゲームでしか使われないような恥ずかしいセリフなど、女の私が見ても「さすがに…」ってなる様なセリフを読む事もあった。正直恥ずかしいし、読みたくなかったけど聞いてくれる人がリクエストして来るし、楽しみにしてくれてるから読んだけど、正直恥ずかしかった。
でも読み終わると皆が『可愛い』とか『萌えた』とか言ってくれて、私はとても嬉しくなるのだ
そう、私はとても幸せで満たされていたのだった。
この物語は実話をベースに書き上げています。
更新速度は遅いと思いますがご了承ください