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幻獣の卵

 森の中に作られた馬車一台が、やっと通れる位の路を一台の馬車がゆっくり進む。

揺れる馬車の中で、アイザックさんに光魔法を教えて貰っている。


「ライトアロー!」


 ユキトが馬車から、外に向かって光魔法Lv1の魔法を放つ。


「相変わらず直ぐにマスターしますね。光属性の魔法は聖属性とも言います。アンデットやアストラル系の魔物に効果が高い魔法です」


光魔法は、

Lv1 ライトアロー

   ホーリーバリア(魔物除け結界)

Lv2 ライトジャベリン

Lv3 ホーリーシールド 浄化

Lv4 サンクチュアリィ(聖域)

Lv5 ホーリー

闇属性の対極の性質で、Lv5で覚えるホーリーは、雷魔法Lv5のトールハンマーの光魔法版の様な強力な魔法らしい。



 あれ? なんか魔力を感じる。

 その時不意に、ユキトは森の中に何故か自分の事を呼んでる様な不思議な魔力の反応を感じた。


「爺ちゃん!馬車を止めて!」

「どうした、ユキト」

「なんか森の中から、僕を呼んでる様な気がする!」


 馬車を止めて貰いユキトは森の中へ入って行く。


「気をつけるんだぞ!」


 ユキトが森の中に分け入り、魔力を感知して探すと、大きな木の幹に其れは有った。


「……グリフィン!」


 鷲の頭と前脚、獅子の身体に鷲の翼、巨大な漆黒のグリフィンの死体が横たわっていた。


「ユキト、何か見つけたか?」


 ヴォルフさんが背後から声をかけて来た。


「ほぅ、グリフィンの死体か、しかも此奴はユニーク個体だな」


 僕はグリフィンの翼の下から、呼ばれている感じが強くなっているのを確信し翼を退けてみると、其処には僕の頭よりも大きな卵が現れた。

この死んでるグリフィンが親で、翼で玉子を護ろうとしてたのかな。


 僕が卵を抱き上げると、卵が僕の魔力を吸い始めた。吃驚して落としそうになったけど、危ない感じもしなかったから、そのまま卵が魔力を吸うのに任せる事にした。ドンドン魔力を吸い込み、僕の魔力量の半分くらい吸い込んだ所でやっと収まった。僕の魔力を吸い込んだ卵は、白かった色が薄く虹色に輝いている。


「グリフィンの卵か珍しいな。ユキトその親グリフィンの魔石と爪と羽根を取っとけ」


 ヴォルフさんに言われ魔石等を取って、アンデットにならない様に土魔法で埋めてから、卵を抱いて馬車まで戻った。


「おや?何の卵だい」


 アイザックさんが興味津々で、僕の抱いてる卵を見ている。

 僕は先程森の中で見た事を爺ちゃん達に説明した。


「ふむ、不思議な事もあるもんじゃ、ユキトはその卵に呼ばれたのじゃろう。まぁ、危険はあるまい大丈夫であろう」

「ユキトの魔力を吸い込んだんだろ、魔物の卵は魔力で成長するからね、暫くは時々魔力を流し込んであげな」

「うん!分かった」


 それから馬車は森を抜け、草原に入って3日目に卵に変化があった。卵を拾ってから時々魔力を流し込んでいたが、その日もユキトが魔力を流し込んでいると「ピシッ!」卵にひびが入った。

 やがて段々ひびが増え一瞬光ったと思ったら、卵の中から漆黒のグリフィンの赤ちゃんが産まれた。


 ピィ~!


 グリフィンの赤ちゃんが、ユキトを見つめ鳴いた。

ユキトは何故かグリフィンの赤ちゃんと魔力の繋がりを感じた。


「この子、どうしたらいいかな?」

「ユキト君は召喚魔法を使えますよね。難しいと思いますが契約をしてみてはどうですか」


 アイザックさんに言われて契約を試みる。

 僕は何故か成功すると確信していた。魔力を流すとグリフィンの赤ちゃんが契約を受け入れ、名前を付ける様に求められる。

 僕は『ルドラ、君の名前はルドラだ』すると召喚魔法が発動する。光る魔法陣が浮かびグリフィンの赤ちゃんが光って消えた。

 僕は自分の魔力内にルドラを感じ、契約が成功した事が分かった。


「成功した様だねユキト君」

「はい、無事に契約出来ました」


 ユキトはルドラを召喚する。魔法陣が輝きルドラが現れユキトの胸に飛び込んできた。


 クルルゥ!


 ルドラがユキトに甘えて頭を擦り付ける。

 ユキトがルドラの頭を撫でる。


「しかしグリフィンですか、グリフィンが人と契約を結ぶなんて聞いた事ありませんね。グリフィンは神々の乗物、気位が高く人になつきませんから」

「アタシも聞いた事ないね、しかもそのグリフィンはユニーク個体だろ。幻獣の類いじゃないか」

「何を食べさせたら良いのかな?」

「基本魔物の肉で構いません。最も送還してユキト君の魔力内に居れば、余り食事はしなくても大丈夫ですよ」

「漆黒のグリフィンか、ユキトの髪の毛も黒だし鎧も黒だからお揃いで丁度良いじゃねぇか」



 その日の野営地で食事の準備をしているとき、ルドラがユキトに抱かれ喉を鳴らしている。


「中々可愛いじゃねぇか。そういやアイザック、こういった召喚獣は自分よりも上位の存在を食べるとより強くなるんだよな」

「えぇただ強くなるだけじゃなくて特殊な能力を得る事もありますね」

「ノブツナ、火龍の肉まだあったんじゃねーの」

「ふむ、少し待て」


 ユキトはルドラに、爺ちゃんのアイテムボックスに入っていた、火龍の肉を切り分けてあげてみると、その身体の何処に入るのか完食してしまった。

 肉を食べ終わったルドラが、光って少し大きくなり前脚の鷲の爪が鋭くなった気がする。ルドラは満腹になったのかユキトの膝の上に登り寝てしまった。


 ユキトがルドラを鑑定してみると、


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ルドラ 0歳 雌 グリフィン


レベル:1

称号 :大空の覇者

HP :300/300

MP :800/800

筋力 :80 (+40)

耐久 :80 (+40)

敏捷 :100 (+40)

知力 :80 (+40)

魔力 :80 (+40)



スキル 

飛行 体力回復強化 身体強化Lv3 

気配察知Lv1 直感 風魔法Lv3 

頑強 龍のブレス(火属性)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ……うん、とても強い。火属性のブレスを出せる様になってる。(+40)は僕と契約したからかな。

ロンバルドに着くまでに、少しレベル上げをすれば更に安心だな。


 次の日から馬車を走らせながら、索敵の魔法と気配察知を使い周囲の魔物を見つける。

ルドラに勝てそうな魔物が居ない事を確かめると。


「ルドラ、適当に暴れて来て良いよ」


 ルドラはユキトの膝の上から飛び立つと、魔物に向って飛んでいき魔物を狩って戻って来る。


 ロンバルドに着くまでのあいだ、ルドラだけで魔物を狩りに出掛けたり、時にはユキトと一緒に魔物を狩ったりしながら進んでルドラのレベルも上がり、まだ生まれて数日なのに身体もかなり大きくなった。今ならオークどころかオーガでも簡単に斃すだろう。


「ねえアイザックさん、グリフィンってこんなに早く大きくなるの?」

「多分魔物の肉が影響してると思うよ。始めに食べた火龍もそうだけど、その後ルドラが狩った魔物も大体はレベルが上の個体だっただろ。自分よりも上位の存在を食べると成長が促されるみたいだね」


 そんな話をしていると。


「馬鹿が居るぞ!」

「面倒ね、ルドラにでも任せればいいのよ」

「ふむ、其れも一興だな」

「前と背後を挟まれてるね、盗賊なの?」


 僕にも、囲まれているのが分かった。


 爺ちゃんが馬車を止める。

 すると前後を挟み込むように、装備もバラバラの薄汚れた10人の男たちが現れた。


「オウ、オウ、オウ!命が惜しかったら金目の物を全部出しやがれ!」

「なんだ!ジジイ、ババアだらけじゃねえか!」

「オッ!なんだ綺麗なガキが居るじゃねぇか、ヘヘヘッ、高く売れるぞ!オラ、ガキも寄越せ!」


 盗賊達が、ニヤニヤしながら近づいてくる。


「五月蝿くて敵わん!ユキト、ルドラに黙らせろ!」

「ルドラ!みんな殺って良いよ」


 ルドラは馬車を飛び出すと、前を塞ぐ盗賊にブレスをを吐きだした。

 前方に居た盗賊達は、叫び声を上げる暇もなく炎に包まれ命を落とした。

ルドラは直ぐに旋回すると、背後に居た盗賊達に風魔法のウインドカッターを空中から連続して放つ。不意を突かれた盗賊達はなす術もなく倒れて行く。


「ユキト!ルドラに一人残す様に指示しな!」

「ルドラ!一人残すんだ!」


「アースバインド!」


 地面から、土の鎖が出てきて盗賊を拘束する。


 ルドラが残した盗賊の一人をバーバラ婆ちゃんが土魔法で拘束する。


「ユキト、土魔法にはこういった使い方もあるんだ。覚えときな」

「じゃあ、後は俺の出番だな」


 ヴォルフさんが盗賊の方に歩いて行く。

 ルドラが戻って来て僕の膝の上に収まる。撫でてあげると嬉しそうに喉を鳴らす。


「婆ちゃん、ヴォルフさんは何しに行ったの?」

「尋問さ、盗賊のアジトを吐かせに行ったのさ」

「ユキト、今の内に死んだ盗賊のステータスカードを回収するんじゃ」


 爺ちゃんに言われて、ルドラのブレスに焼かれた盗賊達を見ると、ステータスカードが落ちている。死んだらカードが残るんだ。ユキトは回収して戻り不思議に思って聞いてみる。


「爺ちゃん、カードを集めて如何するの?」

「街で冒険者ギルドに提出するんじゃ。ギルドの魔道具で犯罪歴を調べてこ奴らが名のある盗賊達だったら別に報奨金が出るんじゃ、要らんがの」

「オウ、近いみたいだから寄り道するぞ。あとユキト、後ろの焼いといてくれ」


 ヴォルフさんが戻って来て言うので、ルドラを抱いて後ろへ歩いて行くと、婆ちゃんが拘束してた盗賊も死んでた。僕はカードを回収してからファイヤーボールを放ち盗賊の死体を焼き尽くす。


「寄り道って何処に行くの?」

「盗賊達のアジトだよ、こいつらで全部って事はないだろう、嘘か本当か分からねえがあと10人は居るって言ってやがったからな」

「こういう碌でもない奴等は、生かしておくと泣かされる人が増えるからね」



 街道を離れて少し走った場所に、盗賊のアジトはあった、廃坑跡を住処にしているみたいだ。


「ユキト、ここはユキト独りで殺るんじゃ!」

「……分かった」


 見張りに立つ2人を鑑定して見ると、ちゃんと盗賊ってでてる。僕は身体に魔力を流し気を纏い身体能力を爆発的に上げると、縮地を使い一瞬で盗賊に近寄り大刀を抜き放ち、一息で声を上げさせる間も与えず、2人の見張りを斬り棄てる。

 大刀を鞘に戻し、腰からナイフを抜いて廃坑を探ると、まだ 10人位の気配を感じる。聞いてた人数と違うな、やっぱり盗賊系のジョブでスニークスキルを覚えとけば良かったかな。僕は出来るだけ気配を消して、索敵と気配察知を最大限に使いながら、廃坑に入っていく。


 奥に進むと、入口に近い場所に小部屋があり、中に3人の気配を感じる。遮音結界を張り部屋に跳び込む。

ベッドの置かれた部屋で3人は寝ていた。


 ユキトは一人づつ頸を掻き切っていく。


「……ふぅー、良く考えたら人を殺すのは初めてだったな……少し気持ち悪いけど我慢出来るな」


 部屋を出て先に進むと、少し広い部屋に5人が居るのが分かった。気配を消して近づいてアイテムボックスから投擲用のナイフを出し両手に持つ。


 近づいて行くと、盗賊達の話し声が聞こえる。



「しかしお頭、今回は大当たりでしたね」

「あぁ奴隷商人の馬車を襲ったわ良いけど檻の中に一人しか居なかった時はハズレだと思ったがな」

「お頭、味見しないんですかい」

「バカ野郎!売値が半額になるだろうが、大金が入るんだそしたら幾らでも遊ぶ女なんか買えるだろう、ちょっとは我慢しやがれ!如何しても我慢できなきゃそこら辺の村でも襲って犯してこい!」



 うん!こいつら皆殺し決定!

 ユキトは部屋に遮音結界を張り、二本のナイフを投げると同時に部屋に跳び込み、一人づつ斬り倒していく。ユキトには盗賊の動きが、とても遅く感じられた。

 二本のナイフが、二人の盗賊の喉に刺さる。ユキトは、部屋に跳び込むと、盗賊の一人に突きを放ち胸を突き刺すと、抜く勢いのまま横に車輪に回して、もう一人を斬り捨てると、最後の一人を返す刀で首を飛ばした。結局盗賊達に反撃される事もなく、部屋の中に居た盗賊を5秒も掛からず斃した。

 ふぅー、息を吐き出しユキトはそこで残りの気配を探ると奥から2人の気配を感じた。


 音を立てずにドアを開け、見張りの男を斬り伏せた。




????side


 私はなんて愚かなんだろう。一人で村を出て旅をするなんて、私は浮かれて居たのだろう。

旅先で出会った親切そうな商人に薬を盛られるなんて……、次に私が目を覚ました時私は、檻の付いた馬車の中に裸同然の姿で乗せられていた。

 私はこの馬車が奴隷商人の物だと分かった。逃げようと思い魔法を使おうとして発動しなかった時、私が奴隷に落とされた事を理解出来た。

 何故なら、魔法を使う事も自ら命を絶つ事も出来なかったから。既に契約で縛られているという事だ。

でも私を奴隷に落とした商人にも不幸が訪れる。

盗賊に襲われ奴隷商人は殺されたのだ。私は盗賊のアジトにある檻に移された。これから何処かの貴族にでも売られるのだろう。檻の前で見張りをしている盗賊の男がイヤラシイ目で私の身体を舐めるように見ている。



 !!結界魔法が使われた事を精霊が教えてくれた。

私も精霊が教えてくれなければ気付かない程の見事な魔力制御、一体誰だろう。盗賊の中には此処までの魔法使いは居なかったはず。


 すると、私の身体をにやけ顏で見ていた男が崩れる様に倒れた。私はその時初めて誰かが部屋に入って来たのに気付いた。


 そこに立っていたのは、濃いグレーのローブのフードを目深に被り片手に細身の美しい剣を持った、身体の大きさから子供だろう。

 彼は剣を鞘に収めると、フードを外しローブを脱いで檻の隙間から投げ入れて、そのまま部屋を出て行ってしまった。


 でも私は衝撃を受けていた。彼が投げ入れたローブを抱きしめ先程の少年の事を思い出していた。フードを外した彼は、美しい黒髪に涼しげな瞳、整った顔立ちの綺麗な少年だった。私は、彼の顏を見てから胸のドキドキが止まらなかった。


 あぁ、此れが私の初恋なんだ………。

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