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7.5話 姫と過去と一輪の花

 ーー


〈廊下〉


「あのクソ大臣共は何考えているですか!未来への投資に難癖つけて……」


 わたしは苛立っていた。自分の利益ばかり考えている大臣。それに媚びへつらう商人や組織…… これだから、他人(ヒト)は信用出来ない。

 ため息をつき、外を見る。


(ああ、鳥にでもなれたら……)


 そんな思いが頭の片隅をかすめるが、そんなことは無理だ。それが現実。わたしの生きる世界だ。


「どういたしましたか?怒ったあと、溜息までついて」


 レオルが、心配そうにこちらを覗き込んでくる。


「いや、何もないですよ。それより、希さまはどうされてるですか?」


 笑顔で応え、極力さりげなく聞く。別に気がある、とかいうわけではない。意識していると思われるのが(しゃく)なだけだ。

 今日の会議で問題視された張本人。如月希についてだ。保守派からの反対を押し切っての一大事業、必ず成功させなければならない。


「ああ、彼なら森ですよ。自主練習だそうです。まったくよく頑張ってます」


「危険ではないのですか?」


 彼の身に何かあれば問題だ。別に彼が心配な訳ではない。間違っても客人に怪我をさせられないだけだ。


(ああ、何を気にしてるですか!)


 つい、やきもきする。この頃、希の事が気になるのだ。恋ではない、と思う。自分の過去はまだ、心に大きな影を落としている。ヒトなんて、好きになれない……きっと。まあ、そんなわたしもヒトなのだけど。


「大丈夫ですか? アレンさま」


 レオルに声をかけられ、自分の世界に入ってしまっていたことに気づく。


「ええ、大丈夫です。 それより大丈夫なのですか?」


「ああ、希さまですね。大丈夫ですよ。見張りの者もいますし、事前にこってりと注意もしています。なんなら見にいきますか?」


 どうしようか、少し考える。と、ドタドタという足音と、荒い息づかいが近づいてきた。確か……門番のレイソンという男だ。外傷もなく足を引きずるでも、手をかばうでもない。そんなに急ぐことか、と思うと目の前で止まった。


「レオルさま! 大変です! 希さまが、希さまが!」


「どうした! 君は希さまの見張りとしてつけていたはずだが……?」


 レイソンはその言葉を聞き、ビクッと体を震わせる。そしてーー唐突に土下座した。


「すいません! 希さまの姿が見当たりません!」


「はあ!? それはどういうことですか!」


 思わず口を挟む。レイソンがこちらを見て、青かった顔をさらに青くする。そしてまた謝る。


「すいません! すいません!」


 ついに泣き出してしまい、話すら出来ない。泣きたいのはこちらだ、という台詞(セリフ)を飲み込み出来る限り抑えた声で聞く。


「どうしたのですか? 話してください。怒りはしませんよ」


 彼の顔を見たとき、わたしは自分の罪を思い出したーー



〈4年前 西レグ地域〉


「クーデターの様子は?」


「もうすぐ鎮圧されるでしょう。兵たちがよく頑張っていますよ」


 父さんとレオルが話している。ここはストメリア王国の掃き溜め、と呼ばれる西レグ地域だ。本営は布で出来ていて、柔らかい明るさに満ちている。

 なぜ、わたしがここにいるかはよくわからない。何をするでもなく、ただ父さんに将来のため、と言われて、来た。

 なぜ、クーデターが起こったのかもわからない。新しい法案に反対だ、とかだったと思う。はっきりとは覚えていない。

 ただ、ただ、なぜ誕生日にこんな場所にいなければならないのだ、という思いだけは確かだった。


(暇だなあ……)


 レオルですら構ってくれない。周りを見回す。皆、なにかしら仕事をしていて、やはり場違いだという感じがした。

 やはり、わたしも子供なのだ。暇に耐えることは出来ず、幕の端から外に出る。


「ああ、外だ!」


 思いっきり息を吸う。そこまで空気は美味しくない。それもしょうがないだろう。ここはスラムも近い。

 しばらくここにいようか、と思ったが騒ぎになったら面倒だ。布をあげ、テントに入ろうとする。

 ふと、焦げ臭いような匂いに気付く。料理人もいないしここ付近で戦闘はおろか、市民も避難している。本来してはならない匂いだ。大人に知らせればいいのだろうが、好奇心がムクムクと膨らんでいく。


(えーと、こっちかな?)


 匂いのする方へ、する方へと歩いていく。暗がりから、会話が聞こえる。


「おい、これでいいんだな」


「ああ」


「あとは、これに火をつければ一生遊んで暮らせるだけの金が手に入るってか。人生って楽だな」


 2人だ。格好から、ストメリア側の兵士だと思う。なんだろう、もう少し覗こうとする。不注意だった。ガサッと足音がなる。


「おい! 誰だ!」


 1人がこちらに近づいてくる。恐怖で足が動かない。


「あ、アレンさま!?」


 見に来た方が驚いたような声を出す。


「おい、なにしてんだ! 逃げられたら一巻の終わりだ!」


 男の手が迫ってくる。やはり足は動かない。


「よーし、いい子だ、いい子だ」


その声を最後に、わたしはもう2度と人を信じられなくなった。






 気がつくとわたしは城にいた。そして父さんが横でーー眠っていた。2度と起きない眠りに、ついていた。

 わたしはパニックを起こした。レオルが全てを話してくれた。裏切りがあったこと、わたしが人質にされたこと、そして父さんが身代わりとして、殺されたこと。

 兵士2人はすぐに捕まったようだ。だが、そんなことはどうでもよかった。ただ、1人しかいなかった家族が、最後の家族が殺された。それだけだった。

 母さんは病気で小さい頃死んだ。

 父さんは自分のせいで殺された。



 もう、大事な人は作らない。なら、こんな気持ちには2度とならないーー




「アレンさま! アレンさま!」


 また、現実に引き戻される。


「どうしたのですか?」


「どうしたじゃありませんよ。希さまが見つかったようです。様子を見にいきますか?」


「いや、いいのです。今は、そんな気分じゃないのですよ」


 そういい、自分の部屋に戻る。もう、疲れたです……

後半部分追加(今週中)&詳細描写(今週中)&他話も大幅改稿(今週分としてください。)

残念な作者ですいません……

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