4話 凄いまくらと勉強と
“さて、授業に移りますか”
ようやくアレンが正常運転となる。結局あの後泣いたりして大変だったんだよ?
「わかったよ。でも、何からするの?」
“ふ、これだからあんたはバカなのです”
アレンにバカ呼ばわりされる覚えは無いけどね。
“それはズバリ、言語しかないのです! こっちの言葉を知らなかったらレオルとすら話せませんよ?”
あれ?
「アレン、君みたいにテレパシーは使えないの? 」
“テレパシー……ああ、これのことですか? 確かにこれは便利ですね”
しかし、とアレンは続ける。
“これには3つの欠点があるのです。まず、これは一種の魔法で、なおかつ私たちの一族しか使うことの出来ない魔法だということです。使い方は公表しているのですが、どうも初代が呪いをかけたようなのです”
「呪い?なんでそんなものを?」
“さあ? 今となっても全くの謎なのです。なんせ数百年も前の話なので。また、ご先祖さまは随分優秀だったようでこの呪いは未だに解けてないのです”
「そうなんだ。じゃあ2つ目は?」
もう呪いがかかってる時点で聞いてもしょうがないような気がするけど、一応聞いておこう。
“2つ目は、たまに魔法に耐性がある方がいることです。こういう人には普通に話すしかないので。希さまにはいつか旅に出ていただくと思いますが、道ゆく人にもたまにいるのでそういうときにこまるのです”
「えっ!? いや、僕って旅に出るの?」
“そうですよ? 『来訪者』といえば旅です! これは譲れません!”
「そういう理由!?」
異世界転成と冒険は無関係です!
真面目な顔をしていたアレンがこらえきれなかったのか、プッと噴き出す。
“冗談です。あ、旅にでてもらうのは本当ですよ? いろいろと思い出すには刺激がある方がよいでしょうし、いろいろと経験を積んでおいて貰いたいからですよ”
コロコロと鈴を転がすように笑ってからアレンが話がそれましたね、と続ける。
“3つ目の理由ですが、これが一番重要ですよ! 最も切実かつ、現実的な話です!”
思わずごくりとつばを飲む。
「なんなの?」
“それはですね、ズバリ昨日のまくらにあるのです!”
「はあ?」
期待して損したな、というような顔をする。まくらごときに何があるんだよ……
“もう、そんな顔はせずに最後までちゃんと聞いてください。昨日のまくら、なんか変だったでしょう? 例えば……ちょっとビリっとしたとか?”
ああ、そういえばそうだったような。でもそれがどうしたんだろう?
“ふふ、あのまくらにはですね、なんと鴉竜の魔力を込めているのです!”
えっと、ドヤ顔のところ悪いんだけど
「なにそれ?」
アレンがずっこけかける。
いや、そんなこと知らないよ! 異世界から来たんだから。だからそんな可哀想な人を見るような目で見ないで!?
はあ、とため息をつかれる。
もう辞めてよ……
“しょうがないから教えてやるです。『鴉竜』とは竜の中でも特に知能が高く、応用力に優れるものの名称です。かつての来訪者が見つけたときに名付けたものらしいです”
おお、竜いるんだ。きっとでかくて強いんだろうなあ。
「へえ〜。で、その鴉竜の魔力が込められてるとなにがあるの?」
“もう、最後まで人の話は聞くですよ。鴉竜の魔力には、記憶力を高める効果があるのです。例えばそうですね……私達が入ってきたときなんと言いましたか?”
そんなこと覚えているはずがない、と言おうとするが、パッと出ててくる。
「『おはようです。いきなりですが、今日から本格的に勉強をはじめるのです』だっけ?」
“おお、流石です! 私は忘れてましたが”
おい!
「凄いのはわかったよ。でもなんでそれが切実で現実的なの?」
“それはですね”
「それは?」
“高いのです。これ。もうお城が幾つたつかってくらいなのです”
「……」
空いた口が塞がらないとはこのことだ。どんだけ高いんだよ。あれ? ってことは間違ってあんなものを壊してしまった日にはどうなることやら……
“嘘ですが”
「なんで言ったの!?」
思わず突っ込み、同時に安堵する。そんなに高かったら、ねえ?
“いやー、人を騙すのって楽しいですね”
「……」
なんていうやつだ。まあ、泣かれるより、こっちの方がずっといいけどさ。
“まあ、その超人的な記憶力を使ってここから毎日午前中は言語を覚えて貰います。記憶力は残りませんが記憶は残るので”
「よし。やるならさっさとはじめようじゃないか」
レオルがどこからか黒板っぽいものを持ってくる。そこに置いてあるのはチョークじゃなく、他のものだったりしてまた話が脇道にそれたりする。
空模様すらわからない部屋は、今日も小春日だった。
To be continue…
すいません
結局2000字とかいう不甲斐ない結果ですみません。
来週金曜1話+もう1話投稿するのでよろしくお願いします。
許してください!