愛しのジュンちゃん
ほんと、腹立つったら、ねえんだ。
だいたい、あいつはよ、娘が嫁に行って、寂しいからとか言ってよお、17万円もする犬を買ってきたんだぜ。
何が寂しいじゃ、聞いて呆れるぜ。
今じゃ、その犬、ジュンちゃんの世話は、俺が全部やってるんだぜ。散歩、飯の世話、夜中のトイレもぜーんぶだ。あいつが自分で、面倒をみるからって言うから、許したのによ。呆れるぜ、全く。
えっ?
今じゃ、その犬だけが、俺の拠り所だってか?
うん、まあ、そんなところだな。
ジュンちゃんは、俺が帰ったら、真っ先に走り寄ってくるからな。可愛いさ。俺が怒ってるときは、俺の顔を、じぃーっと見て、切なそうな顔をしとるよ。「お前だけだよな、俺の気持ちを分かってくれるのは」って言って、撫でてやると嬉しそうな顔をしてるからな。
可愛いやね、ジュンちゃんは。
俺が家で仕事をしている時は、おとなしく自分のハウスに入ってるしさ。
それに引き換え、嫁よ、あいつは遠慮も無く、テレビの音をガンガン鳴らすんだぜ。「煩いから、ボリュームを下げろ」って言ったら、「ボリューム、下げたら聞こえないじゃないの。煩いんだったら、そっちが仕事場へ行けば良いでしょ」ってこうだ。
まったく誰のおかげで飯、食ってるんだって、言いたくなるよ。
でもよ、それを言っちゃオシメエだろ。ぐっと堪えて、ジュンちゃんに話しかけるのさ。「散歩でも行くか?」ってよ。
そしたらよ、ジュンちゃんが「キューン」って啼くんだ。切なそうな顔してよ。
で、思う訳よ。
朝から何回、散歩に行くんだって、ジュンちゃんも思ってるだろなってっよ。だから俺はよ、ジュンちゃんを抱いて、外へ出るのさ。
夜風に当たって、夜空を見上げて考えるのよ。
よくよ、男と女の中身が入れ替わっちまうドラマがあるだろ?
俺よ、思うんだ。
ウチの嫁とジュンちゃんの中身が入れ替われば良いのになあ……てよ。
……。
おっと、いけね、湿っぽくなりやがった。
今日はもうよすわ。
帰って、仕事の続き、しなくっちゃなんねえんだ。
だから、また明日な。




