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懐かしむ

ジャンルを強いて言うなら、逆エッセイとなるのかな?

 俺の母ちゃんはよ、40才で俺を産んだんだな。

 今で言う、高齢出産ってやつよ。で、俺を産んでから体調が良くなかった。

 身体を壊してよ、俺が9才の時に死んだんだ。何しろ、俺を入れて、12人も子供を産んだんだから。身体が持たなくなっちまっていたんだろうよ。


 一番上の兄貴は、俺より20才も上さ。親子みたいなもんだ。

 先に生まれた兄達に、「母ちゃんは、お前を産んだ所為で早死にした」って、子供のころから何度も聞かされたんだ。もっとも、12人もいた兄弟だけどよ、子供のうちに5人が死んだ。だからまあ、何度も言いやがったのは、直ぐ上の兄貴だな。5つ上のよ。


 オヤジは俺が12才の時に死んでさ、だから貧乏だったぜ。それまでだって、貧乏だったけどよ。子供が多いとな、仕方ねえやな。

 それでも、オヤジのやつは、お妾さんを抱えていやがった。子供心に憎らしかったね。家が貧乏なのに、自分だけは妙にめかし込んでやがったし、おまけに妾だ。ムカついてしようが無かったよ。母ちゃんが可愛そうだってな。


 あっそうそう、俺には腹違いの同い年の妹がいるんだぜ。同じ中学に通ってたんだ。相手はどうだか知らねえが、俺は妹だって知ってたさ。

 オヤジが俺に耳打ちしたんだな。それで知ったって訳よ。

 オヤジっちやよ、俺が発明した「灯油ポンプ」をよ、どこかのおっさんに売っぱらいやがったんだぜ。

 そうよ、あの灯油ポンプよ。

 俺が図面を書いたんだ。

 嘘じゃねえって!

 そんでもってよ、学校の先生に見せたら、これは良いから、直ぐに特許を取れって言って、特許を取ったんだ。それをよ、オヤジのヤツ、どっかへ売っぱらいやがった。

 えっ、それは何とか言う発明おっさんだってか?

 違うぜ、ホントは俺なんだぜ。

 俺が醤油樽から醤油を片口、片口って知ってるか?

 それに移すときに、栓をゆっくり緩めるんだ。片口で受けながらよ。俺、面倒くさいから勢い良く、その栓を抜いたんだな。そしたらよ、ビュアーって醤油が吹き出たんだな。俺は醤油まみれよ。

 で、何かいい方法はねえもんかって考えて、図面を書いたのよ。

 まっ、信じてくれなくても良いけどよ。

 オヤジのヤツ、あん時の金、一銭も俺にくれなかった――。

 妾のところに持って行きやがっただぜ、きっとよ。

 何? 20年で特許権は無くなるってか!

 そうか、じゃあ、もう何にもねえな。


 けどよ、発明は他にもあんだぜ。

 昔の風呂は、夜にゃあ、真っ暗でよ。蝋燭を灯して入るんだ。だから俺は、豆電球を取り付けたんだぜ。

 電源は、風力回転の発電機を家の屋根に据えてよ、自転車の発電機あるだろ、走るとタイヤに擦れて、発電するあれよ。あれをタイヤじゃなくて、風力で回転させたんだ。羽を付けてよ。

 まあ、これはオヤジの手も借りたけどな。屋根の上に据えるのが、子供の俺にはな――。

 風呂に入ってるとな、風の加減で、豆電気が暗ーくなったり、ぼわーっと明るくなったりするんだ。面白かったなあ……。


 でも俺、まだガキだったからなあ……。

 それによ、目先の金の方が大事って言うか、小金欲しさって言うか、中学ん時から、小遣い稼ぎに働いたんだぜ。近所の家の田植えも手伝ったし、夏は川に入って魚を獲るのさ。まあ鮎が一番、金になった。今のように解禁日も無きゃ、入漁券も要らなかったからな、取り放題よ。で、獲れたら業者に持って行くんだな。目方で買ってくれるって寸法よ。

 秋にゃあ、そうだ、稲刈りよ。まあ、年中、ボロ布やボロ鉄くずも探し回って集めて、これまた業者に売りに行ったな。

 昔から、何かしら働いてたな。


 俺は学校の勉強なんてからっきしダメだった。嫌いだったしな。

 けど俺は、こう見えても器用な方でよ、ラジオなんかも分解しては、組み立てたりしてたな。

 短波ラジオも組み立てたりしてよ。

 その頃よ、セスナ機がよく飛行訓練かなあ、空を飛んでてよお。俺、その短波ラジオで周波数を探し当てて、セスナ機に喋るんだ。翼にセスナ機の番号が、でっかく書いてあったから、「~機、応答願います」って言うんだ。そしたらよ、セスナ機がよ、機体で返答をくれるんだ。翼を右左と上下させてくれるんだ。それが嬉しくってさあ……。

 昔の空は青くってな、そこにセスナ機だ。俺の呼びかけで、翼を下げたり、上げたり――。

 ロマンだろ?

 そうか、わかってくれるか。うんうん。


 まったく、俺は遊んでばっかりいたなあ……。

 それでもまあ、何とか高校へは行った。利口な奴らが少ない学校でよ、けど貧乏だったから、公立だぞ。言っとくが、そのころ公立は、全くのアホでは入れねえぞ。

 俺の母ちゃんは、小学校の先生してたんだぜ。だから俺の元々のIQってのか、あれは良い方なんだぜ。

 でもまあ俺は、勉強なんてのは二の次さ。

 オヤジはもう死んでたから、上の兄貴に面倒、見てもらってよ。

 だからその頃から、今で言う、アルバイトだな、学校はそっちのけで、大工の見習いアルバイトに精を出してたな。死んだオヤジが懇意にしてた同業者が、大工の見習いとして雇ってくれてたんだな。


 俺はよ、そっちの方面じゃ、結構、才能があったみたいでよ、親方が可愛がってくれたんだな。

 だから小遣いにゃあ、事欠かねえ。まあ、金持ち高校生だな。時代はよ、高度成長期ってヤツでよ、年の割には、結構な額の金を持ってたんだぜ。

 そいでよ、その金持って、ちょっと街に行った訳よ。ビックリしたねえ、綺麗な姉ちゃんがいっぱい居てよ。金は持ってるだろ、だからブイブイ言わしたねえ。

 ブイブイって、何ってか?

 そんなのブイブイったら、ブイブイよ。

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