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第五話

振り返れば駄文。

でも直すと整合性が\(^o^)/

何故アルケームに仁とリサがいるのか。

時は遡り、リサの家。


赤崎仁は困惑していた。

だってそうだろう。いきなり変な場所に飛ばされたら空腹で死にかけて、その後待っていたかのように家があり、かつそこの住人(リサ)に住んでも良いと言われた後、「君にしかできない大事な仕事」等と言われ、ヘラクレスに出された十二の難題の様な事を要求されるのかと思ったら、「友達になってくれ」である。


正直何か裏があるんじゃないか、と思うのが普通であろう。

しかし仁はその考えを否定した。

何故なら、目の前の少女があまりにも真剣な目でじっとこちらを見据えていたからである。


…裏があるとかそんなのバカバカしい、と結論し、差し出された手を取る。


「これから宜しく、リサ」


リサ・ライラ・アルトマン、『湖の魔女』に新たな友人ができた瞬間であった。



――

―――

―――


やったーとか言いながら嬉しそうに跳ね回るリサを仁は暫く眺めていたが、その視線に気づいたリサが真っ赤になってそれは終わった。

その後この部屋を使ってね、と二階の一つの部屋の前まで案内される。

やはりというか何というか、はたきがホコリを払っていて、雑巾が自らを水の入った金属バケツの上でツイストしたり汚れを拭き取っていたり、ホコリを開かれたガラス窓の外に追い出す団扇のようなものがパタパタやっていたりと、それぞれ独りでに(・・・・)動いていた。


もう今までの常識とかは捨てちゃったほうが楽かもしれない、と仁は思った。



そんな様子を二分ほど眺めていると、掃除用具+団扇もどき達が撤収していく。

リサも下に行ってしまってひとり残された仁は、回収した鞄を―――柔らかそうなシングルベッドとオイルランプの設置されたシンプルな木製デスクとチェアのある5畳ほどの部屋であった―――机の上に置き、中の物を取り出していく。


黒いハードカバーのファンタジー的設定辞典と書かれた本、ホワイトゴーレムが一~六巻、

缶ペンケース、ルーズリーフの袋、ノート、電子辞書と電卓、そしてスマホ用のソーラーパネルの付いたポータブルバッテリー。


と、その下に埋もれるようにして黒い丸っこいケースがあり、パカッと開けると黒い縁のメガネが出てくる。

仁はそこまで目が悪くないものの、教室の最後列あたりになると文字が見えづらい為、普段はかけていないメガネをカバンの中に仕舞っていた。


それも取り出して机の上に置き、空の鞄をくずかごの上で振って中に入り込んでいたチリなどを捨てる。


窓は腰の高さ程に設置された出窓になっており、太陽の光が差し込んでいる。

バッテリーを出窓の太陽光パネルを光に当てて充電すべく設置する。


窓の外を見ると広大な湖…と言うよりもはや海の様な湖と、天を貫かん勢いの高さの山が湖ごと周りの森をも囲んでいる雄大すぎる景色が見える。

…本当に常識って世界依存なんだなぁとしみじみ思いつつ、物が広げっぱなしの机へ戻る。


椅子に腰掛けて缶ペンケースの中から万年筆――中二病時代に購入して気に入り、高二の今でも使い続けている(金ペン)――を取り出して、上の線が引かれていないスペースに「現状まとめ」と書き込む。


1、2、3と番号を一行間隔で左端に書き込んでいき、10まで書いてから1の項に筆を戻す。

そして項目ごとにこんな内容を書き込んでゆく。


1、ここは異世界でほぼ確定。(魔術の存在から)

2、日本語は通じるっぽい。(あまりにも自然に聞き取れるから魔術?)

3、リサは魔術師だと思われる。(魔術に関する知識を結構知っている?)

4、リサと友人になった。

5、部屋が貰えた。住ませてくれるとの事だったので、家事手伝をする。

6、この世界は文明レベル的には中世ヨーロッパ辺りらしい。(家の内装と外観から)

7、アルハラン湖は物凄く大きい。

8、近隣諸国はキスタとエフェリアという国らしい。


とここでネタが尽き、残り二つに適当に書き込む。


9、リサはかなりの美少女。

10、リサは大人っぽいようで子供っぽい。


書いてからリサについて書いた僕って、と少し落ち込んだ。その時、後ろから


「ジン、何書いてるのー?」


とリサの声がする。吃驚して勢いよく後ろを振り向くと、後ろに居るはずのリサは居らず、振り向いた首の向きとは逆の方向に立っていて、先ほどまで書いていた「現状まとめ」を手に持っていた。思わずペンを持っていない左手で紙をひったくろうとするも、スッと避けられてしまう。


「んー、この文字何文字かな?エフェル語じゃないしローゼ語でもないし」


読めないらしく、少し落ち着きを取り戻す。

しかし、文字が読めないという事はますます日本語が通じるのはおかしい。

一体何故なんだろう、と思いつつ文句を口にする。


「日本語だよ…いきなり音もなく現れたりしないでくれないかな…あとそれ返して」


一応ドアは閉めていたはずである。リサは現状まとめを差し出し、仁が受け取る。


「ごめんねー。で、これなんて書いてあるの?」


ん?と首をかしげる。あざとい。実にあざとい。可愛い的な意味で。

が、当の本人は本当に文字が分からないだけの様である。天然か。


「これからどうしようかな、って色々纏めてたのさ」


嘘は言っていない。嘘は。正直に話せる訳がない。特に最後は。


「んー、これから良かったら買い物に行こう?ジンの荷物これだけなんでしょう?」


と言いながら机の上に広げたままの荷物たちを指差す。が。


「…あれ?そう言えばこの紙…え?」


唖然、と言った顔になるリサ。しまった、と思った時には後の祭りである。

中世ヨーロッパ(推定)にこんな紙(中性紙)なんてある訳無いじゃないか。そもそもこの机の上の物だって…マズイ。


「ジン、この紙…いや、この上の物…」


何がマズイってリサにとって未知の技術が使われまくっている机の上の物品が非常にマズイ。ガッ、とリサが腕を掴む。

既にリサは目をキラキラと、否ギラギラと輝かせながら顔を近づけてくる。

気分はまさにライオンににじり寄られる逃げ場なきウサギである。

…仁に、逃げ道は、なかった。



―――結局その後1時間半ほど素材やら製法やら仕組みやらを尋ねられ続けた。

電子辞書、電卓、スマホとバッテリーについては細部まで答えることはできなかったが、うろ覚えの知識と電子辞書先生に頼り、やっと解放される。

…リサは質問攻めの時終始楽しそうだったし、その顔を間近で見られたので苦ではなかった。



質問攻めが終わり、そういえば買い物に行くのだったのでは?と思い出し、リサに尋ねる。

リサはハッとした顔になり、ちょっと待ってて、と言い残すと部屋から出て行ったかと思ったらスカーレットの白いファー付きローブと、何かのカーペットの様なものを丸めた物を抱えて持ってくる。


カーペットのロールを床に置くと、はい、とローブを差し出してくる。

着ろ、って事だろうか。随分と暖かそうな素材で出来ている。


「買い物先って寒いの?これ凄く暖かそうだけど」

「ジン、その格好じゃ目立つよ?」


…制服でした、そうでした。

流石にブレザーを着込んだ上にこのローブを着るのは暑そうなので、空になった鞄にブレザーを畳んで押し込み、ついでにちょっと太陽光で暖かくなっているバッテリーと電子辞書、設定辞典を詰め込む。しかしこのローブ、見事にサンタカラーである。


ローブは前の方をボタンで止めるタイプだったが、外側から見えない位置にボタンがあるため止め終わるのに少し時間がかかった。ボタン自体も小さかったが。


「ジン、これ持って行っていいかな?」


リサがルーズリーフの袋を持っている。何に使う気なんだろう、と思いつつ全部無くなる様な事だと嫌なので10枚くらいならいいよ、と言う。


袋からルーズリーフを10枚程引き抜き金属製のクリップのようなもので挟み、いつの間にか肩から下げていた長方形の革製らしき鞄にそれを入れる。


持っていく物はそれでいい?とリサはカバンの蓋を閉じると、こちらに向き直る。

質問に頷いて肯定する。それを確認するとリサは先ほど床に置いたカーペットを広げる。


広げたカーペットには先ほど下で見た自動で中身をかき混ぜるガラス棒の入ったビーカーの下に敷いてあった布と同じような魔法陣が描かれており、その四隅に部屋の隅に置いてあった石のブロックの様な物を重りとして載せて固定する。


ローブの中に手を突っ込み液体の入った瓶を取り出し、その中身の赤い淡く光る液体を魔法陣に振りかける。

魔法陣は途端に強い光を宿し、地面と垂直に“穴”が開く。

仁は既視感を覚える。穴の縁は橙色に光り、自分の落ちた穴と似ていた。


まあ転移魔法みたいなものなのだろう、と仁は思った。何故なら、穴の向こう側にはトンネルが見え、その奥にある鉄格子の向こう側の窓から太陽の光が差し込んでいるからだ。

あの最初に飛ばされた幻想世界は一体何処だったんだろう、と思っているとリサが手を掴んでくる。


…仁は彼女すらいた事は無く、女性と手を繋いだ経験など皆無である。(母親を除く)

そのまま引っ張られ、穴の向こう側へ出ると穴は閉じ、鉄格子の前まで来ると手が解放される。

すべすべして柔らかい手だったなーと思い、直後何考えてるんだ僕は、と頭を抱える。


リサは仁の不審な行動には気づかず、右の人差し指の先で鍵に触れ、一言「開け」と言う。

ガチン、と鍵が空き鉄格子の扉部分を押しあけたところで気づく。


「…どうしたの?」


仁は必死に何でもない、とごまかして鉄格子を抜けると、その先にあった光景にぎょっとする。石づくりの小部屋の出口の扉のこちら側、つまり内側に札がビッシリ貼られているからだ。ちなみに仁はホラーが苦手である。


「あ、あれ何?ここヤバイ場所なの!?」

「ただの人よけの札だよー」

「人よけ貼りすぎでしょうアレ…」

「あんまり人に知られたくないんじゃないかな?」

「え、リサが作ったんじゃないの?」

「エフェリアに移動するにはここが一番便利だからね、バレなきゃ問題なし」


そう言うと鉄格子の扉に再び鍵をかけ、札ビッシリ扉を開いて外に出る。

一緒に外に出ると、物凄く大きな木の森を円状に切り開いたらしき巨大な街…の裏通りっぽい場所に出る。この街の多分中心であろう方角には周りを囲む巨大樹よりも大きな木が生え、上の方に建物が幹にくっついている。


そんな地球ではお目にかかれない景色を見ていると再びリサに手を掴まれる。


「ここはエフェリアの王都だから広いし迷ったら大変だよ?」


と言いつつ大勢の人の声がする方向に引っ張られていく。

他人が見たらこれなんて思うだろうと仁は考える。

二人の姿はサンタっぽいローブを着た(フードも被っている)奴が金髪の砥茶色のローブを着た少女に引っ張られている、という珍しい光景である。


ちょっと警察通報物かもしれない、と考えつつ歩いていくと大通りへと出る。

往来にはアニメやゲームでよく見るファンタジー世界の住人たちほぼそのままの人々が歩き回っている。


人々の格好と表通りの街の様子を見て、やっぱり一般的な(?)ファンタジーの世界だと改めて仁は思う。

先ほど見たでかい木の上にくっついていた家…と言うには大きいが、それも含めてそう思った。


その後服飾店――結構大きめの内装も凝った店だった――に行き、リサが店の売り子のお姉さんにあの人に合う服を適当に見繕ってください、と言って仁のローブを脱がせてくる。


「いや、一人で脱げるから」


と言って脱ぎ始めるとリサはちょっと残念そうな顔をする。流石にやって貰うのは恥ずかしい。

脱いで畳むとお姉さんが籐かごをもってこちらへどうぞ、と言うのでそれに入れる。


入れるとお姉さんはそれを置き、目盛の付いた白い平べったい紐の様なものを仁の腰に回す。採寸メジャーであろうそれの目盛を読み取ると、お姉さんは店内にある服を上下5着ほど持って帰ってくる。


「取り敢えずこちらの物など如何でしょうか」


と言ってくる。どれもファンタジー世界でNPCが着ていそうな服だった。

ただし、中々上等そうな生地で拵えてあり、作りもきちんとしているのでそれなりの場所に出ても通用しそうではあった。


リサは少し考えた後、その内の1着を選んで差し出してくる。


「向こうに試着室があるから着てみてー」


指差した先には現代と同じようなカーテンのかかった小部屋が3つほど並んでいる試着スペースが有った。

その内の一つに入って床のかごに試着する服を置き、右脇の鏡を見て固まった。

まるで仁の顔を少し整形して金髪蒼眼にしたような男が鏡の向こうに立っているからであった。


手を挙げる。鏡の中の人物も同様に手を挙げる。

手を目の前に持ってきてサムズアップ。同様にサムズアップ。


その後幾つか試して漸く現実であると受け入れる。

髪の毛も目も完全な自前だったし、顔も本物だった。

…この顔の方が受け入れられやすいだろう、と仁はポジティブに考える。


外からリサが急かすのでさっさと着替えて鏡で見てみると、なんだかコスプレっぽいが生地がいいのでそれなりに映える格好ではあると思った。

顔もまだ慣れていないので自分ではない感じがして新鮮だった。


その後リサとお姉さんに見せ好評を頂き、結局全部試着して全部リサが買った。

なんだか金貨を大量に支払っていたのは多分気のせいでは無いだろう。

最初の服に最後着替え、鞄にはまだ空きスペースが多くあったので制服と買った服全てそこにたたんで突っ込む。


店を出るとリサがお腹が空かない?と聞いてきたのでそういえば空いてきたな、と思ってうん、と返す。じゃあいいお店があるんだ、と再び手を引かれる。

ちなみにどんな飲食店なの?とリサに聞く。

と、リサは立ち止まって答える。


「アルケーム。錬金術師の集まるお店だよ!」




―――その数分後、これから長い付き合いになる二人の人物に仁は出会う事となった。


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