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第四話

超設定回。


ゆっくり読んでね!

リサに仁という友人ができた時間から数刻後。東北東へ900km。巨大な壁に囲まれた、これまた巨大な木が中央に生えている、その根元に広がるようにして存在する国があった。

国名をエフェリア王国。エルフの国である。


――リサの家はアルハラン湖の湖岸にあり、それは広大な森とさらにそれを囲むシッカ山脈によって囲まれており、それは我々の世界ではカルデラと呼ばれる地形であったが、その規模は内側の直径約300km、外側の直径500km、連なる山々の高さは平均5000mとおよそ馬鹿げた規模であり、そのシッカ山脈の傍にエフェリア国があった。


エフェリアはエルフによって建国され、その1800年に及ぶ歴史のうち、1度たりとも自国内に侵攻されたことはなかった。


シッカ山脈及びエフェリアはエトス大陸最大の森、大樹海の内側にあり、エフェリアに最も近い大樹海の端に位置するローゼリアも、あまりに侵攻にあたって現実的でないその距離と樹海の道を大軍で侵攻する困難さ、途中現れるであろう多くのモンスター、そしてエルフとの交易途絶による損失も鑑みて、概ね良好な関係を築いていた。


さて、エフェリアはエルフが建国した国であるが、その住人の7割強がエルフ、その他人間、ドワーフ、獣人等で構成されている。

国のトップはエルフの王であり、それを支える王妃はそれと同時に優秀な占い師でもあった。


エフェリアの王妃にとって占いができることは必須条件であったが、現王妃サラ・エーフは特に「大きな出来事」を予知するのに長けていた。

月始めと月半ば――占星術師達の努力の甲斐あって現代とほぼ変わらぬ暦であった――の満月の日に王妃による占いが行われる。


そして今日、月は満月であった。占いを行うに当たり、その正確性の向上も兼ねてその日の仕事は前日と後日に回して占いを行う月が最も高い位置に来る時間(午前0時)までゆったりと精神を落ち着けるというのが慣習だった。


王妃サラは月の2回のこの休日、自室でゆったりと本を読む…のを建前にして鍵をかけ、空間跳躍の魔術を用いて城外にこっそり遊びに行っていた。


普段常に傍らにいるメイドやら親衛隊やらも、王妃の勤めである占いの精度を左右すると言われては鍵をかけた部屋の外を掃除やら警護する他に無く、また政治上の都合で結婚はしたものの400も年上―――エルフは人の10倍は生きると言われている―――の夫である王も、特に干渉はしていなかった。


さて今回も朝の会食を済ませ、分厚い自室のドアに鍵をかけ、魔術師のユニフォームとも言えるローブ――至ってシンプルな深緑色の――を着て、空間跳躍の準備を整えていく。


ビロード地の布をワードローブから取り出し、床に敷く。2m四方の正方形の布の上には淡く光る青い線で魔法陣が描かれており、サラはその上に青い輝く液体を注ぐ。

液体の注がれた魔法陣は一層輝きを増し、ズアッという音と共に“穴”が開く。


地面に対して垂直なその穴は人が通れる大きさで、その向こう側にはザバザバという水音が響くトンネルの様な場所に通じており、トンネルの先の方には鉄格子のはまった外への出口がトンネル内に光を届けていた。


躊躇いなく穴を通り抜け、直後穴が閉じる。出口のトンネルの通路の地面には先ほど敷いた布と同じ形の魔法陣が描かれている。その横を奥の方から流れる水がトンネル内を通って外の水堀へ放出されていた。


鉄格子には鍵のついたドアがあり、それを鍵で開けて外に出、鍵を再びかける。

このトンネルは本来ならば城外脱出用の経路の一つで、高い壁に囲まれた王都、さらに都に囲まれる城の、街への脱出経路であった。


外の樹海への脱出経路も存在するが、この街への脱出経路はサラによってより低コストにするなどの手が加えられていた。そして月二回、このトンネルは使用されていた。


鉄格子を開けた外側も、木の扉のついた窓――光はここから差し込んでいた――のあるトンネルと同じ石レンガ造りの小屋のようになっており、様々な武器の入った箱(有事の際用)などが設置され、外への扉の内側には人よけの札がびっしり貼られていた。


その少し手を伸ばすのを躊躇しそうな扉を押し開け、外へ出る。

人気のない細い裏通りへと出て、さらに歩いていくと人々で賑わう大通りへと出る。

そこは数多くの商店が立ち並ぶ商店街で、食料品店やら鍛冶屋やら雑貨屋やら魔術具屋等などが軒を連ねていた。


サラはそれには目もくれず、大通りの人ごみを避けながらある場所を目指す。

月二日の休みはそこに行く為に外に出る、と言っても過言ではなかった。

小さな長方形の硝子窓が幾つかはめ込まれた木の扉をギィと押し開けると、内側に取り付けられていたベルがカランカランと鳴り響く。


「おや、いらっしゃい「ラサ・フレア(・ ・  ・ ・ ・)」嬢。今日は何にするかね?」

「ブレンドティーでお願します」

「了承した。席に持っていくのでしばし待ちたまえ」


入口そばのカウンターの奥に居た初老の男性に話しかけられ、注文をした後さらにその奥―――天井はドーム型になっており、昼間であるにもかかわらず表面に夜空が投影され、それぞれの主だった星には名前が付随している―――へと進んでいく。


ドーム内には月と太陽、そして地球(?)の模型…と言ってもやはりその表面の雲は動いており、非常に精巧かつ緻密な現実のそれを映しているとわかる球体が、太陽の模型を中心として地球が動き、さらにそれを中心として月が回転していた。

現実と同じ動きであろうそれは非常にゆったりとした動きで、動いているのか否かは一目では判断しづらかったが、その回転軌道には光る円が描かれている。


そんなホールには、木の植わったプランターが上に乗ったハーフウォールで区切られた幾つかのブースに机と椅子が置かれており、サラはその中を通路側から覗き込んでいく。

相変わらず雰囲気のいい店であるのに人はまばらで閑古鳥が鳴いている。


と、目当ての人物を見つけてそのブース内に入る。

その人物は白いローブにサンダル姿の、茶髪の男性だった。

彼の本名は知らないが、彼は自らを『薬師』と名乗っていた。


「やあラサ・フレア嬢。この前言っていた茸の成分抽出には成功したよ」

「こちらも例の花の根から簡単に取り出す方法を発見できまして、量を確保できました」

「これで完成までは後一歩だね」

「ええ。完成し、量産に成功した暁には…」


くっくっく、と二人のいかにも悪そうな笑いが木霊する。

この場所はアルケームと言う飲食店で、錬金術に長けた者たちが集まり、お互い協力し合って様々な物を創りだす会議を行う場所として一部では有名であった。

錬金術の天才(変態)達の集会所、と。


しかし、ある程度の知識・技量・そして協力を必要としていて、かつ害意のない者だけがこの店は発見できるように幾重にも認識阻害の結界が張られていた。

大通りに面しているが、数少ない人間だけがこの店に入ることができる。


ここエフェリアの最大の輸出品は錬金術によって作られた薬品の類である。

樹海のど真ん中、かつ魔力濃度の高いこの地は珍しい薬草がワンサカあるので、錬金術師たちが集まってきてはこの地で研究を行っている。

そしてその中でも能力の高い者たちがここアルケームに集っている。


錬金術師の技術は国を栄えさせることも滅ぼすことも可能ではあるため、害意の無い腕の立つ人間を欲する者たちが安心して集えるようにここのマスターがアルケームを100年ほど前に設立した…らしい。


サラは元貴族、かつ300年前に体系化した錬金術の術師であった。

幼い頃から占術も教わってきたためその能力も高いが、八歳の時に錬金術の本を手に取ったことが始まりで錬金術の道を歩み始め、政略結婚で18で王妃となり、2年経った今でも研究を続けている。

そしてある満月の日、ここアルケームを発見し、以後入り浸っている。


アルケームは会員制であるが、発見できれば会員権が貰えるという仕組みで、サラも会員であるが偽名…ラサ・フレアという名前を使っていた。


会員同士は相互扶助の義務と権利があり、研究に行き詰まったり助言が欲しい場合、入口のマスターに声をかければ条件に合う人物を会員の中から紹介してもらえるという仕組だった。研究が完成したら報告し、利益の2%を店に入れるのが条件ではあるが。


そしてサラ、否ラサ・フレアの研究している内容と合致する研究を行っていたのがこの白いローブの男だった。


…ちなみに二人が開発しているのは冒険者向けの総合回復薬(傷・疲労・魔力等)の安定的量産技術の確立である。

この二人の今の顔を見れば完璧な悪役だが、やっている事はマトモな事だった。


と、カランカラン、と入口のベルが鳴り、誰かが入ってくる。

店内は割と静かな為、入口付近の会話が筒抜けで聞こえてくる。

ちなみにブース内の会話はブースの外に漏れないように術がかけてある。

ここでの会話は冗談抜きで世界を変える可能性があるので、技術情報漏洩防止の為である。


――「おお、三年ぶりか…ようこそ『湖の魔女(・ ・ ・ ・)』後ろの連れの方は誰かね?」

―――「…その二つ名、あんまり浸透させないでよね…こっちのはジン、友達」

―――「ほう、友人とな」

―――「えっとどうもご紹介頂きました仁です。宜しくお願します」

―――「ジン、そんな硬くならなくてもいいんだよ」

―――「え、でもなんかここの責任者さんっぽいし…」

―――「いいのだ、ジン君。別に硬くなる必要はない」

―――「は、はあ…」


どうやら古参の会員が友人を連れてきたらしい。

しかし湖の魔女という二つ名には聞き覚えがない。


―――「マスター、『良縁』をお願いしたいんだけど」

―――「了解だ。少々待ち給え…13番ブースへどうぞ」


13番ブース、すなわちこのブースである。それを聞いてラサと男は姿勢を正す。


――「ねえ、湖の魔女って?」

――「家の近くにあるからってアイツが勝手に付けたのよ」


声の主達がだんだんと近づいてくる。


―「アイツってちょっと…」

―「いいのよ、旧友だし」

―「所で13番ブースって何処かな」

―「ココじゃない?」


ぬっ、とブースを少女が覗き込んでくる。その後ろには少女と同じ髪と(・ ・ ・ ・)目の色(・ ・ ・)をした男性が立っている。




―――この日、不幸な高校生と『泉の魔女』『薬師』、そしてサラが一堂に会す事となった。

シッカ山脈の内側、東京~名古屋間の距離ぐらいの直径があります。


大きいことはいいことなんだろか

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