A:第一話
(あれ、ここどこだ?)
(さっきまで学校にいたはずだけど)
(体が重いしなんだか違和感がある)
(それになんだか匂う、汚物みたいな匂いだ)
(え・・・・・・)
目を開けた瞬間、俺は絶句した。
ゴブリン、漫画やアニメに出てくるそのままの姿の化け物が目の前にいた。
(なんだ?ドッキリ?まさかの異世界転生?)
目の前のゴブリンは粗い息の口を近づけて俺の匂いを嗅いでいる。
(まさか捕まったのか?異世界のスタート地点がゴブリンの目の前とかアンラッキーすぎる)
少しでも生き残りたい一心で拳を振り上げ、体の違和感の原因が分かった。
緑の肌に短い腕。
あばら骨が浮き出た胸にポッコリと出た腹、体にはボロボロの布切れのみ。
(ゴブリンだ・・・・・・)
俺は振り上げた拳を下げ、脱力した。
(マジか、まさかの転生先がゴブリン?!)
(目の前のゴブリンも、さっきから匂いを嗅いでくるだけで全く攻撃してこない)
(仲間・・・って認識でいいのか?)
俺の匂いを嗅いでいたゴブリンは俺が目を覚ましたことを確認すると、俺の側から離れていった。
遮られていた視界が開け、自分がいる場所が分かった。
(洞窟?)
周囲にはゴブリンの死体らしきものや負傷したゴブリンが座り込んでいた。
(ゴブリンの巣の中ってことか、ッテ)
体を動かそうとして、自分の体が負傷していることに気が付く。
(体を動かすまで殆ど痛みはなかったけど、結構ひどい傷だな)
全身が切り傷や打撲の跡で覆われている。
見た目の割に痛みはほとんどない、というか動かさない限り全く痛みはない。
(ゴブリンの体だからか?こんな傷、普通なら悶絶どころじゃない)
痛みに耐えながらゆっくりと体を動かす。
(動くと痛むけど、大した痛みじゃないな。これなら歩くくらいはできそうだ)
早くここを離れようと負傷した足を引きずりながら近くの穴を目指して歩く。
(さっき俺の匂いを嗅いでたゴブリン、死んだ仲間の死体を食ってる)
(このままここにいたら俺まで食われるかもしれない)
鉛のような体を引きずり、近くの穴の入り口までたどり着いた。
「うっ・・・・・・」
穴の先には大量のゴブリンの死体があった。
(ここはゴミ捨て場か?さっきの部屋は負傷したゴブリンを休ませておくための部屋ってことか)
(ここも危ない、他のゴブリンに死体と勘違いされたらたまったもんじゃない)
来た道を戻り、別の穴を目指して歩く。
(この穴は何もない、他の部屋に繋がる通路の一部か?)
迷うことを恐れ、右の壁を伝い洞窟の奥へと進む。
2,3部屋程度進んだ後、大きな空間がある穴までたどり着いた。
(ここは・・・、ゴブリン村?)
洞窟の中に土や木で作られた建物が何軒も建っていた。
そこでは大量のゴブリンが生活しているようで、食事をしているゴブリンや建物を建てているゴブリンがいた。
(結構大規模な洞窟なのか)
「おい、何してる?」
ビクッ
横からいきなり話しかけられ、驚いて振り向く。
「お前、死体部屋にいたやつか?」
「は、はい」
思わず返事をしてしまったが、聞いたことがない言語なのに理解することができる。
目の前のゴブリンは俺と違い、上半身にもちゃんとした服を着ていて服装は人間と大差ないように見えた
「言葉が話せるのか?あの部屋にいたやつは下級のやつだけかと思ったが・・・
そういいながら俺の体をじろじろと眺める。
「まあいい、目が覚めたなら治療部屋まで行け。場所はわかるな?」
そう聞かれ、俺は小さく首を横に振る。
「っち、お前本当に中級か?もしかしてこの間の戦いで進化したタイプか?まぁいい、付いて来い」
目の前のゴブリンに付いて行き、ゴブリン村の奥へと進むと、白い布で覆われた建物にたどり着いた。
「追加の負傷者です、治療お願いします」
目の前のゴブリンが布をめくって中に声をかけ、中に入れと合図を送る。
指示に従い中に入ると、装飾品を付けた魔術師のような見た目のゴブリンが中にいた。
「生き残りがいたのかい、死体部屋にいたやつだろう?あの部屋には致命傷の下級兵しかいなかったはずだが・・・」
魔術師の見た目を下ゴブリンは俺の体をじろじろと眺め、口を開いた。
「身なりからして、先日の戦いで進化したみたいだね。おめでとう、あとで服を用意させよう。とりあえずこっちに来な、傷を治療しよう」
魔術師ゴブリンに手招きされ、ゴブリンの近くの椅子に座る。
「ひどい傷だが、いくつか治りかけの傷もあるね。進化の影響で治癒能力が上がったんだろう。そうでなきゃ死んでたよ」
そういいながら、俺の体の傷口に手を添えブツブツと何かを呟いた後、魔術師ゴブリンの手が緑色に光る。
「おお・・・」
(魔法ってやつか?光を浴びた場所の傷口がみるみる内に治っていく)
数分程度の時間をかけ、魔術師ゴブリンは俺の全身の傷を治した。
「こんなもんだろう、多少の違和感はあるかもしれんが日常生活には問題なかろう」
そう言うと、立ち上がって隣の部屋に入っていった。
数分程度待っていると、俺を案内したゴブリンが着ていた服と同じ服を持って魔術師ゴブリンが戻ってきた。
「これに着替えな、今日からお前さんも中級ゴブリンの仲間入りだ。キウボ、この街を案内してやりな」
(キウボ?俺を案内してきたゴブリンのことか?)
「はい、わかりました。おい、ついて来い」
受け取った服に着替え、俺はキウボについて行った。
「まさか本当にこの間の戦いで進化したやつだったとはな、下級からの進化なんて初めて聞いたぜ」
「は、はぁ」
(進化って珍しいものなのか?)
「俺はキウボ、お前は・・・って進化したばかりなら名前なんて無いか。まぁいいや、ついて来いよ。この街を案内してやる」




