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追放令嬢の妹には復讐の才能がない! そして復讐相手は愛が重い  作者: 亞月こも
第1章 姉様の婚約破棄、国外追放、そしてその罪状
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9 ハイドとのお茶会にもフォンが来た


(やっぱりこうなりますのね……)


 ニゲラとのお茶会から数日後。

 フォンの生徒会で会計をしている、マクロフィア公爵家のハイドとのお茶会だ。当たり前のようにフォンが一緒に来て、前回以上のお菓子と一緒にニコニコしている。

 ニゲラの時と同じようにフォンには筒抜けだったようだ。


(監視されている気分になってきますわね……)

 内心でため息をつく。姉様の件を調べるなと言われているから、フォンがいる場所でそのことは聞けない。当然、フォンを王太子から引きずりおろす画策も、本人の前でできるはずがない。どうがんばってもただのお茶会になる。


 気合いを入れる代わりに、おいしそうなケーキを見ておいしいものを楽しむ決意をした。自然と笑顔になる。


「フォン様、ハイド様、本日はありがとうございます」

「うん。僕の方こそ、入れてくれてありがとね」

「アリサ嬢からお誘いいただき光栄です」

 2人とも上機嫌で何よりだ。

 ハイドが丸メガネをクイッと上げた。


「トゥーンベリ公爵家では、北部にあるという地の利を生かした食物栽培や観光業に力を入れ始めたそうですね」

「はい。元々は魔法石の産出地として発展してきている地方なのですが、あまり取りすぎると魔法石化が追いつかなくて底をついてしまいますから。生産調整をしておりまして、その不足分を補った上で、より街が発展するようにという政策をとっておりますわ」


 という表向きの理由も真実だし、子煩悩な父が自分たちのためにおいしいものやおもしろい場所を増やそうとした結果でもある。が、後者はわざわざ言わなくてもいいだろう。


「魔法石の産出地はみんなそれにあぐらをかいているイメージがあったのですが、その先に進もうとするトゥーンベリ家の方針には感心しています。実際に成果を上げ始めているところを含め、お父様はやり手ですね」

「領地経営がお上手なマクロフィア家のハイド様からお褒めに預かれて光栄ですわ」


「ボクには歳の離れた兄がいて、今年家督を継いだんです。ボクは気ままな次男坊で。家格としてもつり合うし、ボクがアリサ嬢と養子縁組をするのはどうですか?」

(また政治的なものですわね)

 ニゲラからも似たようなことを言われた。公爵家の当主になれるというのは、継承権がない子どもにとって魅力的な出世の道なのだろう。


「光栄に思いますが、わたくしの一存では決められないので、正規のルートで両親に伺いを立てていただければと思いますわ」

 ニゲラに答えたのとほとんど同じように答える。養子縁組は家の問題だ。自分が決めることではない。


「時代は変わってきているのですよ、アリサ嬢」

「時代、ですの?」

「親が決めた結婚ではパートナーとして信頼関係を築き、二人三脚で領地経営をしていくのが難しいことがままあります。なので、相性がいい伴侶を自分で選び、親を説得する人が増えてきているのです」

「まあ、そうですのね」


 そういう人もいるのかと理解はしたけれど、自分で相手を選ぶという感覚がイマイチわからない。


「なので、外堀は後で考えるとして、まずは学舎にいる間だけでも、ボクとお試しでつきあってみませんか?」


(?????)


 ハイドは何を言っているのだろうか。お試しでつきあうというのがどういうものなのか、まったく想像できない。


「えっと、それってどういう……」

「女性はストレートな言葉を好むのでしたか。アリサ嬢、ボクはあなたが」

「騙されちゃダメだよ、アリサ」

 黙って聞いていたフォンが突然話を切った。


「ハイドには今、3人の彼女がいるからね」

「え」

 フォンは何を言っているのだろうか。

(3人の彼女?????)

 言葉はわかるのに理解できない。

 ハイドが軽く眉を寄せてから、メガネをクイッと上げた。


「どういう風の吹き回しですか? フォン様。今までボクが何人口説いていても、見て見ないふりをしてきていたというのに」

「学舎にいる間に遊んでおくように親から言われて来てるって聞いてたからね。僕に関係ない相手なら好きにすればいいと思ってるけど、アリサはダメだよ」


「なるほど? 既にフォン様が手をつけているということでしょうか」


 ゆっくりと目をまたたいたフォンが、いつもと変わらない笑みで口元に人差し指をあてる。


「3人だけの秘密ね」


(?????!)


「わたくしフォン様に手をつけられてなんていませんわ!」

 と全力で否定したいけれど、この場では飲みこんだ。

(何か理由があってハイド様にはそう思わせた方がいいということかしら?)


「なるほどなるほど?」

 ハイドがフォンとこちらを交互に見て、メガネの奥の目を細める。

「いったんそういうことにしておきましょうか。アリサ嬢、気が変わったらいつでもお声がけください。喜んでおつきあいさせていただきます」


「もし家同士でそう決まりましたら、よろしくお願いいたしますわ」

 ハイドの価値観とは違うかもしれないけれど、自分にとって交際とはそういうものだ。

(なんでフォン様がどことなく満足そうなのかしら?)

 不思議だけど、悪いことではないのだろう。


 フォンが用意してきたケーキを口に運ぶ。

(お い し い ……!)

 生菓子を王宮から運んでくるわけにはいかないから、連れてきている付き人が作っているのだろうか。


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― 新着の感想 ―
ハイドさんのキャラ設定好きです(笑)
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