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追放令嬢の妹には復讐の才能がない! そして復讐相手は愛が重い  作者: 亞月こも
第1章 姉様の婚約破棄、国外追放、そしてその罪状
12/62

12 不快に感じるのは自分の心が狭いのだろうか


 アルピウムとフォンとの3人のお茶会は平和に終わった。

 辺境伯家は国防のかなめで、行ったことがない自分たちには想像できないような戦いの話を聞けて楽しかった。


 レオントポディウム辺境伯家が守る西の一角は、山脈が隣国との国境になっている。国境越えの道はけわしく、隣国とのいさかいはない。

 代わりに、時々山からモンスターや野生動物が降りてきて悪さをするため、領地の騎士団や兵士、町や村の自警団、雇いの傭兵など、戦闘職が他の地域より多いそうだ。

 モンスターの稀少素材と山で採れる鉱石、林業による収入が主で、鉱業や林業と戦闘職を兼ねる人も少なくないという。


 強さを尊ぶ風潮があり、領主であっても武に秀でていないと尊敬されないため、領主一家の誰かが先陣を切るのも珍しくないそうだ。

 相手の強さによって誰が行くかが決められ、長男のアルピウムは何度か戦闘に参加しているという。


 レオントポディウム辺境伯領の貴族階級は通常の剣や槍、弓などの武器に魔道回路と魔法石をしこみ、強力にした魔法武器を使うことが多いそうだ。

 アルピウムは槍が一番得意だが、いつか姫の騎士になるのを夢見ているため、室内で立ち回りやすい剣もがんばっているという。全力で応援したい。今はこの国に姫はいないけれど。

 自分の実家、トゥーンベリ公爵領から買い入れている魔法石は質がよく、今後ともよろしく頼みたいという話で終わった。


(外見は怖そうだけど、いい方ね)

 体格がよくて目つきが鋭いから、賢良学科の中には怖がっている人もいた。話すと実直な武人という感じで好印象だった。



 神学科の2人、同い年のウルヴィと2年生のカレン、そこにフォンと自分を加えた4人のお茶会の日になる。

 苦手意識というのはやっかいだ。そう思わないようにと考えてみても、カレンと面と向かうのは気が重い。4人になったのはよかったかもしれない。


(今回はフォン様からのお菓子の差し入れはありませんわよね)

 予定外で来た時には1人分を用意してくれていたけれど、前回のアルピウムの時からは持ってきていない。

(って、何を期待しているのかしら。あさましいですわ)

 アルピウムの時はここまで抵抗感がなかったから、いつものお菓子でも十分だった。けれど、今はもう一段上の癒しがほしい。


(もしわたくしがフォン様をおとしいれようとしていることが知られたら……、きっともう2度となくなりますのね)

 あのおいしいお菓子も、ニコニコと笑ってくれることも。そう思うと涙が出そうになるけれど、それはまだ先のことだ。まずは今日のお茶会を乗り切らないといけない。

 お茶会用に借りた部屋のドアの前で、両方の頬をパンと叩いて気合いを入れる。


「かわいいマシュマロほっぺが痛くなるのはイヤだな」

 後ろ斜め上、耳に近い位置にささやきが落ちた。

(ひゃんっ?!)

 振り返るとフォンの顔が近い。考えこんでいたからか、まったく気配に気づかなかった。


「フォ、フォン様っ! ま、ま、まだ早いですわよ?!」

 ホストとしての準備のために、約束の時間より早く来ている。このタイミングにフォンが来るのは予定外だ。


「うん。こんなに早く来るのは客としてはマナー違反だよね。気にしないで。ちょっとだけアリサを見たら、また後で来るから」

「わたくしは見せ物ではありませんわ」

「アリサにはない? 誰かの顔を見たくなるの」

「すぐに会う予定がありますのに? それに、生徒会かお茶会かで毎日お会いしておりますわよ?」

「うん、そうだね。毎日会ってるし、すぐに会う予定があるのにね」

 言葉では肯定しているのに、なんとなく肯定されていない気がする。


「あれ? フォン様、早いですね」

 少し離れた廊下からワントーン高い声がした。すぐに明るいピンク色の髪、カレンが駆けてくる。

「もう入ってもいいのでしょうか?」

 フォンの隣に立ったカレンがフォンに尋ねる。まるでそこに自分はいないかのようだ。


(こういうところですわ……)

 生徒会室でもよくある。仕事に関わる時や必要な時には会話をするけれど、それ以外はフォンしか見えていない感じだ。他のメンバーの中でも、なんとなく男性が優先という印象がある。それを不快に感じるのは自分の心が狭いのだろうか。


 フォンが普段通りの笑顔で答える。

「まだ早いからね。約束の時間にまた来るって言ってたとこだよ」

「なら、それまでわたしとお散歩しませんか?」

「部屋に戻ってやることがあるから、また後で、お茶会の時にね」

「それは残念です」


 カレンが女性らしいしぐさで上目遣いにフォンを見上げる。が、フォンの視線が向くのは自分の方だ。

「じゃあ、またね。アリサ嬢」

「はい、お時間にお待ちしておりますわ。カレンさんも、どうぞ気楽にいらしてくださいませね」

 笑顔を向けたのに、なぜかムッとされた気がする。意味がわからない。


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