表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/36

間接キス②

 さきほどまで少しだけ涙ぐみそうになっていたのに、今はもうそれどころではない。


 清水くんの手には私が使っていたグラスがある。当然ながら、目の前には清水くんが使っていたグラスが。しかもどうしたことだろう、ストローという、絶対に口をつけるのが不可避なやつだ。


 ……黙っていようか。


 でも、私はこれを飲まなければならないのでは。

 それはそれで、ちょっとハードルが高すぎやしませんか。


 気づいていないらしく涼しい顔をしている清水くんだが、対照的にたぶん私は真っ赤だ。絶対に耳まで真っ赤になっているハズだ。


 私も知らなければ、気づかなければ良かったのに。


 ……もうこうなると無理だ、私が手をつける前に交換してもらおう。

 決意すると、私はようやく口を開いた。


「清水くん、それ……私のグラス、です」


 なんとか、これで察して欲しい。


「……あっ」


 そこで、私のいわんとすることを認識したらしく、清水くんはかあっと耳まで赤くなった。 


「ごめん! いや、そんなつもりじゃ」


 ただ、純粋に交換してもらおうと思っただけなのに、墓穴を掘ったらしい。


 いや、違う。


 そのまま手をつけなかったら――単純に黙ってたら良かったのかもしれない。コミュ(りょく)ゼロの私は、そのことを考えつきもしなかった。


「ごめん、俺の飲んでいいから」

「えっ!? 違ッ、そういうことじゃなくて……!」

「あっ、でもそれじゃあ、俺のが……あれっ?」


 待って待って、なんだか間接キスを自らアピールしたみたいになっている!? 


 どうしたものか、私たちは二人ともあわあわしながら混乱している。

この収拾をつけてくれる人など、ここにはいない。


「も、もういいです! ふ、二つとも飲んでくださいッ」


 パニックになったまま私は思わず清水くんの部屋を飛び出し、恥ずかしさで爆発せんばかりの心臓を抱えながら、そのまま助けを求めるべく――ユキちゃんの部屋へと逃亡した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ