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「本当の」友達

 そうして私は江口先輩のお皿にサッと卵をのせる。


「ケチャップソースを作ってかければ、あとは食べて大丈夫ですよ」


 まだまだフッ素加工がきいているのか、キレイに卵がフライパンから離れていく。するっと斜めにして、ケチャップライスの上へと運ぶ。木べらでそっと押していく。ケチャップライスの下に卵を滑り込ませた。


「おお……オムライスだ。なんだかお店みたい」

「お店みたいに生のパセリはありませんけどね。でも、確かに寂しいかも……。オニオンスープでも作りましょうか?」

「できる?」

「ちょっとだけお時間かかりますけど、といっても10分ほどです。玉ねぎだけで良ければ」

「お願い」

「まあ、私も食べたいので……仕方ありませんね」

 

 お湯を沸かしながら、さっと玉ねぎを取りだして薄切りにしていく。トントンとまな板の上の包丁の音がキッチン内に響いた。鍋にバターを入れた。コンロに火をつけ、しばらくしてバターを投入する。ジュッと音と立ててバターはすぐさま溶けていき、あぶくがたったころ合いに玉ねぎを投入していく。玉ねぎがしんなりしたら、お湯を入れてコンソメを。塩、コショウで味を整え。


「できましたよ」

「もう? せっかくだからさ、一緒に食べようよ。その方が美味しいじゃん」


 さも当たり前のように、そういったモテ言葉がいえる江口先輩は凄い……。これで過去の私含め、一体何人が殺されたのだろうか……。


 そうこうしているうちに、私の分のオムライスも完成した。フライパンから卵を移し、席に着く。


「じゃ、早速食べようか」


 そういって私たちが互いの席につくと、リビングの扉が開く音がした。みやると清水くんが目をこすり、よろよろと私たちの方へ歩み寄ってきた。


「あ、起きたんですね。オムライスが余ってますけど、食べますか?」

 

 私がそういうと、清水くんは小さく頷いた。江口先輩は後ろに立ち、私の目の前に新しいお皿を出してくれた。この皿に清水くん分をよそえということだろう。席を立って、用意をする。


「美奈、ちょっと瑛太のご飯少なくない? もっと食べるから盛っていいよ」


 その言葉に私は頷くと、チキンライスを追加した。そして、ざっと作った卵を乗せて私の向かいの席に置いた。


「……え、美奈、って?」

 

 清水くんはそういって私と江口先輩を交互に見ると、訝いぶかし気な表情を浮かべる。


「……どうして……? いつの間に呼び捨て? 大塚さんを」

「私はやめてくださいって。そう何度いっても、呼ぶので諦めました」

「別にいいじゃん。呼びたかったら瑛太も美奈っていえば?」

「本人がいいならそう呼ぶけど……」


 そういって、私の方をチラリと見る。

 それは、どう……返答すればいいのだろうか。


 江口先輩はさんざん拒否しておいて、清水くんはあっさりと受け入れるなんて……、そんなことをしたら私の気持ちが、それこそバレてしまうのでは……。


 清水くんは私の方へきて、正面の席に座った。


「……それに江口と揉めたくない。友達だし」


「《《認めるんだな?》》 いや、それはいい。でも俺らは《《本当の》》友達だろ? それなら俺も、お前も――お互いに遠慮はいらない。それならどうだ?」


 そういって、江口先輩は不敵に笑う。

 黙り込んだままの清水くんはじっと――私を、見ている?


「瑛太、ちなみに俺はどんな卑怯な手段でも使うからさ。それでも恨みっ子なしで、よろしく」


 江口先輩の含みを帯びたその言葉に、清水くんは「……そっか。江口らしくて、そっちの方が確かにいいかも」と、少しだけ嬉しそうに頷いた。


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