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ユキちゃん出ていっちゃうの?!

「ごめんねぇ、彼氏が一緒に住みたいっていっちゃってさぁ。私も美奈と一緒にいたかったけどほら、女の友情より男っていうじゃない」


 それを自分で!?


 いや、ユキちゃんはさっぱりした性格なので、そこがまたいいところなのだけれど。そもそも、出ていくというのはユキちゃんが選んだ選択肢なんだから、仕方がないと思う。私のことに構わず、そうすべきだとも思うし。


「でもほら、美奈もさ、男性陣がシェアハウスにいた方が安心でしょ? かよわい女の子が一人暮らしするより、セキュリティ上さ」


 トランクを片手に、ユキちゃんはいつものようにカラカラと笑う。


「でもそれじゃ私と清水くんと江口先輩だけに……」

「あの草食系男子と点数系男子なら大丈夫でしょ」


 ……点数系男子というのを初めて聞いたが、言い得て妙すぎる。


 確かに元々ユキちゃんもそうだったしなぁ。それに、どちらも私は相手にされてない。安全どころか――どうでもいいとすら思ってそうだ。


「じゃあ、引っ越し先を教えるから、遊びにきてね。ところで」


 ユキちゃんは私の耳にこそっと近づけ、囁ささやいた。


「……本当に、どちらとも何も……ないの?」


 その言葉に、私の胸の中は凄まじいことになっていた。


 清水くんとの間接キス……腕組み、不可抗力の頬へのキス……うん、やらかしすぎている。


 関係的には何もないんだけれど、なにもないの定義がまた難しい。


「……ない、と思う」


 微妙な返答になってしまったが、彼氏できたら絶対にいってね、とだけいい残しユキちゃんは旅立った。


 さよならと胸中でハンカチを振り、ぼんやりと扉の前に立っていたら江口先輩と清水くんが出かけようとしていたのか現れた。


「大塚さん、どうしたの? こんなところで立ち尽くして」

「ユキちゃんが出て行っちゃったので、見送りを」


 私の言葉に江口先輩はそうだ、と思い返したようにいう。


「ユキちゃんに俺らも挨拶されたな。突然決まったらしいね。彼氏と住むって」 

「ああ、そうか。飯田さん、引っ越すとはいってたけど……彼氏と同棲だったのか」


 そういえば彼氏できたっていってたな、とあっさりと清水くんは頷く。


「そうなると大塚さん、寂しくなるんじゃない?」


 清水くんにいわれ、そうですといいたい気持ちをこらえる。


「ユキちゃんがいないのは寂しくなりますが、どうやらここから近いところらしいですし。大学でいつでも会えますから」


 ぽん、と私の頭の上にその大きな手のひらをのせて、「そっか」と笑顔を向ける清水くんに鼓動が跳ねる。一瞬だけ、江口先輩は私の顔を、恐らく様子を伺った。

 

江口先輩をチラリ、と私は見返したが、そのまま先輩は何も物言わなかった。

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