きっともう。
「ゴメン……聞いちゃいけないことを聞いちゃって」
そういって、私がひとしきり泣き止むまで黙って傍そばに居続けてくれた。
泣きはらして、みっともない私にずっと。
でも清水くんは、その間に一体何を考えていたのだろう。
さすがに申し訳なくなり、今度差し入れしますから、というと少しだけほほ笑んでくれた。
「……慣れ、ってすごいですよね。平気になってきました。清水くんと話せるようにも、もう目を会わせられるようにもなって――」
先日からそう感じていた。
もしかしたら、私はもう先輩とも話せるようになったんじゃ――。
「そう、なのかな?」
「はい。清水くんとは普通に話せるように、なったと思います」
清水くんは少しだけ笑うと何かを考え込んだ。私は清水くんの様子を伺う。
「自信が持てました。これだけできれば――他の男の人も、それに先輩の顔ももう、見れそうな気がします」
「……そう、だったね。目的は、そうだった」
清水くんは再び何かを考えこんでしまった。
ここまでできるようになったら、次に進む必要がでてくる。
「私……先輩に言おうと思ってます。過去にフラれて、勝手に気まずいからって態度が悪くて……ごめんなさい、って。もう今は好きじゃないので安心して欲しい、って――伝えようと、そう思っていて」
「別にいわなくても、いいんじゃないかな」
「でもなるべく早めにいわないと、後から気づいたときになんで、って気まずいですし……」
「ああ、それもそうか……」
この目の腫れが消えたら伝えよう。部屋を出ていこうとしたときに、清水くんは扉の前で一度立ち止まった。
「本当に、もう大丈夫? もう少しいようか?」
いつもよりも一段と優しい口調で、声をかけてくれて。
――はい、大丈夫です。と軽く苦笑いするだけで精いっぱいだった。




