8章
*登場人物
・山本しょうた(主人公)
20歳、大学生。奥手でありながらプライドも高い。親と子、3人家族。父親は公務員、母は専業主婦。単発バイトでお金が無くなった時だけ働く。
・宮内ダイチ(大学の友達)
しょうたの大学生の友達。同い年。大学デビューで自身の本来の明るさを出し始めた。性格は少し天然であほ、しかし素直、行動的である。連絡できる友達も多い。
・岡田遥(大学の可愛い女の子)
しょうたが可愛いと思っている女の子。適度にノリも良く男女関係なく仲良く話すことが出来る。居酒屋でバイトをしており、同僚のたくみを気にかけている。
・小島洋子(遥の友達)
遥の友達。まじめで大人しく将来のこともしっかりと考えている女の子。恋愛したい気持ちもあるが今は勉強が大事だと思っている。
・ユウタ
しょうたの高校生の同級生。ミディアムヘアの同族男子。
・未来
ラブメイトランド相談員。しょうたの相談相手。
「じゃあ作戦通りで。授業終わったらすぐ向かう。」。ダイチは足早に授業へ歩いていった。
今日は彼女と同じ授業だ。いよいよか・・・、戦う前かの様な妙な緊張感が体をたぎっていた。バイキングでは食事を楽しみたいダイチと真剣に相談したい俺が交差しやり合いながら作戦を考えた。全種類の小籠包と中華料理、杏仁豆腐を胃に詰め込みたいダイチは話半分でバクバクと食べていた。ニラ入り小籠包を食べながらダイチにどうするか尋ねるとダイチはこう答えた。「ノリ良く話しかければいける。」。そこから始まりうだうだと話し、作戦が決まった。
教室を出た彼女を二人でノリ良く勢いで話しかける。凄い単純。あれこれと考え最終的にはノリが大事、と言い負かされた。名前と学部を適当に聞いて上手くやるから任せろと、ラーメンをすすりながら話していた。そんなんで大丈夫なのか?と思いつつその馬鹿さ加減が逆に良いようにも感じていた。
もうこれで行くしかないし、頑張ろう。そう思い教室へ入った。まだ彼女は来ていない。いつも通りの席に座った。緊張していたもののダイチの心強さから気分は良かった。なんとなく、何とかなる様な気がしていた。
静かな教室。そろそろ来るかなと思うっているとドアを開く音が聞こえた。静かにドアが閉じる音がすると右通路側から足音が近づいてくる。
彼女が現れた。黒のニット、グレーのチェックのワイドパンツ、ショートの髪形、メイクもバッチリと決まり、肌もキレイだつた。今日は右斜め2個前に座った。今日この距離感で座るのは運が良いのか悪いのか分からないが、変にテンションが上がった。今日これから話せるかもしれない。
退屈な授業を聞きつつ、さりげなくスマホで、大学 声掛けられる、で検索する。サイトに入って見てみると気持ち悪い、嬉しい、警戒する等のコメントが出てくる。「よほど変な男性でない限り、言い寄られるのは女としてうれしいですよ」。掲示板のコメントを見て嬉しくなった。このコメントだけをやたら過大評価してしまっていた。彼女を見ながら「今日こそは・・」と思った。
時計をちらちらと見ていた。授業終了15分前。そろそろだ・・・。
終了のチャイムが鳴った。音を出さずにささっと早めに片づけた。彼女に目をやりながら早歩きで教室を出る。ダイチはまだ来ていない、もうすぐ来るだろうと思い脇のほうで待っていた。脇で合流し彼女が出てきたら声をかける予定だ。そろそろ来るはず・・・、心強さと緊張感が程よく上がっていた。
授業を終えた生徒たちがぞろぞろと出てくる。足早に出た時よりも騒々しくなってきていた。
・・・来ない。もう来ても良いはずなのに・・・。「どうした、早く来てくれ!」。そう思っていると彼女が教室から出てきた。作戦ではここで声を掛けるはずなのに・・・。彼女が次の教室へと歩いていく。うっ・・・、どうしよう・・・、もう!。焦りとイライラが最高潮に達していた。
「ごめん!」ダイチが後ろから出てきた。必死な顔は今まで見たことない位だった。「遅れた!授業長引いて!あの子は!?」。「あそこ!」。姿が小さくなっていく彼女に指をさす。「行こう!」。ダイチが彼女に向っていく。この状況で行くのか!?と思いつつ何も言わずダイチに足早についていった。異常に早く彼女との距離を詰めていく。
彼女にたどり着く。「すいません、すいません!」ダイチが彼女を呼び止めた。彼女はびくっと体が動き、振り返り驚いた顔をした。キュッとした綺麗な黒い目の瞳孔が広がる。後ろの俺と大地を交互に見ていた。「はい・・・、何か?」。「あ、あの、すいません、急に話しかけて。おっ驚きますよね~」。ダイチは明らかに下手だった。声も変な調子になっているし。「以前から僕らそちらの事気になっていて、何学部ですか?」「あの、・・経済ですけど」「経済ですか !僕らも経済です!なっ?!」「そうね!」。普段出さない声で返事をしてしまった。「あ・・、そうですか。(笑)」。笑ってくれた!?。行けるかもしれない。「僕宮内ダイチです!こいつはしょうた!山本しょうた!」「あっ・・はい・・」「いや、実はこいつが可愛い子がいるって貴方のこと言ってて、声かけてみようと二人でなってね~。」。余計な事を、反射的にぐーで軽く殴っていた。「いや・・、そんな事ないです(笑)」。又彼女は笑ってくれた。「出来たら連絡先交換しません?SNSでも何でも良いので!」。いきなり!それは無茶だよ・・。「・・んー、どうでしょうかね・・・。」。彼女が少し引きつっているのが分かった。厳しいような気がしたので「良いよそれは」と言った。「いや、嫌とか思ったらすぐ消すなりしてくれて良いので!お願いします!」。ダイチは深く大げさに頭を下げていた。「・・・、えーっと、・・・分かりました(笑)」。・・・え?いいの?彼女はゆっくりとスマホを出した。「ありがとうございます!。」飲食店顔負けのお礼をダイチが大声で言うと彼女は笑ってくれた。ダイチもすぐスマホを取り出しアプリの連絡を交換していた。交換していると時に俺から声をかけた。「すいません・・」「あ、・・はい(笑)」。
これが初めて彼女と交わした言葉だった。