15章
*登場人物
・山本しょうた(主人公)
20歳、大学生。奥手でありながらプライドも高い。親と子、3人家族。父親は公務員、母は専業主婦。単発バイトでお金が無くなった時だけ働く。
・宮内ダイチ(大学の友達)
しょうたの大学生の友達。同い年。大学デビューで自身の本来の明るさを出し始めた。性格は少し天然であほ、しかし素直、行動的である。連絡できる友達も多い。
・岡田遥(大学の可愛い女の子)
しょうたが可愛いと思っている女の子。適度にノリも良く男女関係なく仲良く話すことが出来る。居酒屋でバイトをしており、同僚のたくみを気にかけている。
・小島洋子(遥の友達)
遥の友達。まじめで大人しく将来のこともしっかりと考えている女の子。恋愛したい気持ちもあるが今は勉強が大事だと思っている。
・ユウタ
しょうたの高校生の同級生。ミディアムヘアの同族男子。
・未来
ラブメイトランド相談員。しょうたの相談相手。
今日は岡田さんと同じ授業、ちらっと彼女を見ながらメールを確認していた。ラブメイトランドから新着のメール、中を開くと「未来ちゃんから掲示板にメッセージが届きました」と書いてあった。授業中なのでこそこそとスマホをいじるが、よりこそこそとリンクを開く。サイトの掲示板に未来からコメントが届いておりビックリマークが付いている。そこを開くとメッセージが表示された。「よろしくお願いします。しっかり話を聞いてアドバイス出来るようがんばりたいです!」。無難なコメントだと思った。淡々としている。ここからのアプリの流れはこうだ。一度に掲示板を通して送れるメッセージは40文字以内、これを1日5通交換できる。スタンダートプランだとこれが週に2日可能とのこと。正午0時になるとその日1通しか送ってなかったとしてもアウトになる。貴重な一通だがとりあえず最初の挨拶メッセージを送ろうと思った。「こんにちは。相談の受け応えよろしくお願いします」。無駄な一通だと思った、続けざまにメッセージを考えた。「大学の子を上手く誘いたいです。メッセージの送り方を教えて欲しいです。」。その後15分ほどしてメッセージが返ってきた。「もう結構仲良い感じですか?相手の好きな事、食べ物とか分かってますか?」。好きな食べものか・・・、焼き肉の会話を思い出しながらメッセージを作っていった。「焼肉とか紅茶とかパン系が好きらしいです。映画も好きだそうです。」。「なら好みに合わせて誘えば良いと思いますよ。ごはん、又は映画に行かないかって?」。軽く拒否反応が起こりすぐにメッセージを送った。「急じゃないですか?いきなりはちょっと、もう少し様子を見たほうが良くないですか?」「隠さずストレートに言った方が良いです。あなたと行きたいと。分かりやすい方が良いかと。」。ここで今日の分は全て消化してしまった。思った以上にあっという間だった。4通って少ない。これで980円か・・・、高いな。ただ女性からこうした方が良いというアドバイスはダイチに比べればとても心強かった。次の日も週2回の2回目をすぐ使った。どの様なメッセージを送れば良いか相談した。内容はストレート、あなたと話したい、ごはん行きたいと言うことが大事とのこと。どう送るかよりも適度にコミュニケーションを数回取ることが大事とのことだった。連絡を取る回数を増やせば2人の関係は強くなるとのこと。やりとりしていて、もうこれ以上のアドバイスはないなと思った。実際に行動に移した後でないと彼女は何も言えないだろう。
「・・・送るか。」。考えれば大学生同士、連絡を取ることは変なことでない。
勢いよくスマホを取り、メモ帳を開いて書き出した。理由は間違えて送らないよう、又文面をしっかりと考えたいと思ったからだ。
打っては消し、打っては消しを繰り返しとりあえず完成。
「こんにちは。話したくて連絡しました。今何してますか?」。
・・・、なんか違う気がするような、でもシンプルで良いのかな。
うーん、うなりながら考えてみる。無駄に書き足しては削除してを繰り返した。
「授業お疲れ様です。話したくて連絡しました。今何してますか?」。
うん。良い。無駄に考えたあげくとてもシンプルに出来上がった。冒頭を変えただけで全然違うなぁと思った。
さて、送るか・・。
・・・。
怖い、いや、気になる女性にメッセージを送る。何も変じゃない。皆んなやっている事だ。そうだ。送信ボタンと指の間の距離を埋めることが出来ない。時間を見ると夜の7時半。良い時間のはずだ。「勢いが大事!」大地の言葉が頭を流れる。
「いいや!」。送信ボタンを押した!
がばっ!怖いのかすぐアプリを閉じスマホを投げ出して枕に顔をうずめた。送ってしまった・・・。もう取り返せない。変な後悔が強かった。
その後しばらくぼーっと天井を眺めていた。
10分経ったが通知は無い。気晴らしにテレビを点けた。紛らわせようとしているのか、いつもさ流し見するくせにやたらとテレビに集中しようとしていた。お笑い芸人の軽快なトークにも上手く反応して笑えないでいた。
「ピロン!」
来た。時間は40分ほど経っていた。恐る恐るメッセージを開く。
「お疲れ様です!今家に帰ってきました。どうしました?」
来た・・・。思った以上にリアクションが良い。岡田さん、良い人だなと思った。
「どうしました?」との答えをどうしよう?どうしようか。「素直が一番」、未来のアドバイスが頭に響く。なるべく早く返さないとと思いながらも、考えて返信した。
「具体的な話じゃなくて、岡田さんと話したくて連絡してしまいました(笑)。すいません。」・・・。どうだろうか。(笑)はキモイか?
ピロン!「そうですか(笑)。全然、私で良かったら話しますよ。」。うん、やはり優しい、気を遣ってくれてるだろうが。
とりあえず会話をしてそれからごはんに誘おうかと思った。「ありがとうございます。(笑)岡田さんはカフェに行くといっていましたがコーヒーとか好きなんですか?」。
ピロン!
「コーヒーも好きですけど、最近は紅茶派です。アールグレイとか好きですね。」
「そうなんですね。おしゃれです。スタバとかで飲むんですか?」
「スタバも行きますが個人店も好きですね。行きつけもあるし、良い雰囲気の所は入ってみたくなります」「個人店行けるとか凄いな。俺は緊張しちゃう(笑)」「初めては私も緊張しますよ。(笑)でも慣れてしまえば大丈夫。個人店は独特でおしゃれなんですよね。」。
ここまでの内容を見ても素敵感が強い。個人店行くのかー、凄い。テンポよく進んでいたま楽しく連絡を交換していたがこのままだとダラダラ行く気がした。ここらで正直に誘ってみるか・・・。変に間延びしてはダメなので文面を急いで構成した。
「もし良かったら今度カフェに二人で行きませんか?」。
しばらくメッセージを送ろうか悩む。メッセージの文面をよく見てから気合を入れ、送信ボタンを押した。又現実逃避ですぐアプリを閉じた。誘ってしまった!もう前の関係に後戻りできない!。枕に顔をずっしり鎮める。20分程時間が経っていた。途絶えたな、こりゃダメだ。しょうがない、これも経験。この教訓を活かして次は、
「ピロン!」。
鳴った・・。来た!流石に今回はメッセージを開くのが本当に怖かった。何て返してきたかな。少し目を閉じ、薄めの状態でアプリを開いてみる。
「予定を見てみるんで又連絡してもいいですか?」。
ガバっと体を起こし高速で打ち込みすぐに返信する。
「全然大丈夫です!予定が空いていればで良いので。それじゃあまた、お疲れ様です!」。
ピロン!
「うん!それじゃあまた!」
「ふー、あー!」ぐたっとベッドに寝ころび天井を向いて目を閉じていた。終わった。・・・うまく行った?とりあえず悪く無い?
お疲れ様です!は少し硬かったかな?いやいや!とりあえず誘うことが出来た!やったぞ俺!やればできるじゃないか!誘えたぞ!
誘えたことが嬉しかった、話せたのも嬉しかった、自分が成長している気がした。ごろっと横を向いて寝ころび目を閉じた。安らかな笑顔になっている事が分かった。嬉しい・自分の心に淡いピンク色の気持ちが充満しているのを感じていた。