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12章

*登場人物

・山本しょうた(主人公)

20歳、大学生。奥手でありながらプライドも高い。親と子、3人家族。父親は公務員、母は専業主婦。単発バイトでお金が無くなった時だけ働く。


・宮内ダイチ(大学の友達)

しょうたの大学生の友達。同い年。大学デビューで自身の本来の明るさを出し始めた。性格は少し天然であほ、しかし素直、行動的である。連絡できる友達も多い。


・岡田遥(大学の可愛い女の子)

しょうたが可愛いと思っている女の子。適度にノリも良く男女関係なく仲良く話すことが出来る。居酒屋でバイトをしており、同僚のたくみを気にかけている。


・小島洋子(遥の友達)

遥の友達。まじめで大人しく将来のこともしっかりと考えている女の子。恋愛したい気持ちもあるが今は勉強が大事だと思っている。


・ユウタ

しょうたの高校生の同級生。ミディアムヘアの同族男子。


・未来

ラブメイトランド相談員。しょうたの相談相手。

秋になり空が暗くなるのも早くなってきた。夏のいつまでも明るい夕方とのギャップでどこか寂しい気分になってくる。学校を下校する生徒も心なしかどこか気落ちして歩いているように見えた。

俺はだけは違っていた。何かが始まる様なワクワクした気持ちに包まれていた。今日は4人で焼肉を食べに行く日。4人とも同じ時限まで授業があり終わった後行こうという話になった。珍しくネットで服を新調した。無難なカーキのシンプルなジャケット、濃い目のジーンズ、あまり気合いを入れていると思われたくなかったのでこんな感じにした。それとは逆に今日に向けて気合いが入っていた。凄くドキドキしていた。集合場所はいつもの帰り道とは違う裏出口、その違いが余計に特別感を際立たせていた。彼女達につまらないと思わせない様に話を盛り上げようとダイチとは連絡を取りまくっていた。「どういう話題で行く?」「変にプライベートなことをいきなり聞かない。」「下ネタ系は無し」「彼女たちが乗ってきたら?」「それでも無し!」。色々やり取りした結果、作戦は彼女たちが食いつく話題をとにかく広げて頑張ろうというざっくりな答えになった。そうこうしているうちにダイチが走ってやってきた。「おいっす!お疲れ!」。俺以上に変なテンション、女性と食事をすることがうれしいのであろう。明らかに舞い上がっていた。「いやー、来ましたねー!今日は楽しんじゃいますよ!」「何で敬語なんだよ。変なことを言うなよ。下ネタはダメだ。」「分かっているよ、うるさいな。あ!来た!」。ダイチがおーいと手を振ると2人が軽い小走りでやってきた。

「お待たせしました。」「いや、全然待ってません。大丈夫ですよ!」。二人はダイチの変なテンションに笑っていた。「テンション高いですね(笑)。」と岡田さんが言った。黒のワンピースにジーンズ、シンプルでかわいい格好だった。小島さんは清楚に紺のトップスにスカートだった。暗くなった時間帯、街頭に照らされた二人は少しセクシーに見え一段と可愛かった。気のせいかいつもより化粧をしっかりしてる気がした。「じゃあ行きましょうか。皆で焼肉食べちゃいましょう!」。ダイチは皆を煽り焼肉屋へ向かった。「変な奴ですいません。」。俺の突っ込みに二人は笑い、皆で焼肉屋に向かった。「焼肉最近行きました?」「いや、久々です。だから楽しみ」「良いですね!たくさん食べましょうよ。ニンニクとかがっつり食べて下さい!」「えー、臭くなっちゃいますよ」「全然気にしませんよ!」。微妙な距離感と照れを持ちつつ皆で仲良く話しながら向かっていた。店に着き予約している事を告げると6人掛けの席に案内してくれた。綺麗で仕切られた空間でプライバシーもありすごい良いと思った。他の客の声もさほど邪魔にはならなかった。ダイチが勢いよく先に座ったせいで岡田さんと対面でなくなった。気を使ってほしいものだ、まあ逆に緊張しなくて良いが。スマホでメニューを注文する準備をしつつパンフを見る。「韓国フェアおいしそー」「美味しそう、キムチとかいいね。」。近年の韓国ブームは飲食店でも起こっていた、特に女性には刺さるものがあるらしい。こういうの好きなのか、とさりげなく思いつつ「好きに注文して良いですよ」と言った。「山本さんは何が好きですか?」「何でも食べるし何でも好きです」「そうなんだ。好き嫌い無いとか偉いですね。」「いやいや、そんな。」。小島さんは気を使ってくれるし優しい人だと思った。「とりあえずお酒頼もうか!」。店員を呼びつつ「とりあえずこのカルビ頼まない?」「良いね、あとこのチョレギサラダは?」「うん、じゃあこれを2個ずつ頼もう」。活気の良い店員が来て注文した。少し話したところでお酒はすぐに運ばれてきた。「よし、じゃあとりあえず乾杯しようか!」ダイチが言うと皆グラスを持った。「えー、じゃあそれではですね・・」「お前が仕切るのかよ」。女性陣が吹いて笑った。「良いだろうもう!じゃあ初めての飲みなので今夜は楽しく飲みましょう!乾杯!」「乾杯!」。笑いながらみんなでグラスをぶつけ合った。「お待たせしましたー!」男性店員がお肉を持ってきてくれた。率先して焼こうとすると女性陣はすかさず手伝ってくれた。「あっありがとう。」「いいえ、美味しそう」「ねっ」。ダイチはうまそーというだけで手伝い遅れていた。「お前はやらないんだな」。女性陣は又笑ってくれた。「というか同い年だし敬語辞めましょうよ!敬語禁止で」。ダイチがナイスな提案をしてきた。「(笑)。わかりました」「使ってますよー!禁止です。」「・・・分かった(笑)」「おー、いいですね~」。そこからみんなワザとらしいため口の感じがありそれがどこか面白くみんなで笑った。空気がとても良いと思った。「二人も経済だよね。どう?授業は順調」「うん、特に問題無いかなぁ。プレゼントか少し面倒だけど、まあ何とか。」「すごいじゃん。俺なんか一個単位落としたもん。ネットのコピペでやったらばれた。」「(笑)。まあやりますよね。結構友達でもそれで落とされた子多い」「そもそも課題に見合っていればネットでも良いと思うんだけどなー。」「うまくやらないと駄目だよ。まんまコピーじゃばれる。」「お前は器用だよ。単位も落としてないし。」「山本君は落としてないんだ?」「うん、まあ一応。」。岡田さんは偉いと小さな声で言ってくれた、嬉しかった。「二人は休みの日は何しているの?」「私は古着を回ったりカフェでお茶したり、家でドラマ見たりしているかな〜。」「へ〜、カフェとかお気に入りのお店とかあるの?」「ある、いつも行く所とか、たまに新しい所入ったりしているよ。」「へ〜、おしゃれだね。」「うん、良いね。」。岡田さんの見た目にぴったりの過ごし方だった。なんかいけているというか。「小島さんは?」「私は無印とか買い物行ったり、後は家で過ごしているかな。遥とそんな変わらない。家で動画見たりしている。」「無印好きなんだ。良いですよねデザインとか。」自然的なデザインが好きという所が見た目的にもとても似合っていると思った。「2人は何してるの?休みの日。」「ラーメン食べに行ったり、家では動画見てる。2人で遊ぶ事もあるよ。」「へー、仲良いんですね?あっ、良いんだね。笑。」「あっ、次行ったらアウトだよ。」皆んな笑っていた。「山本くんは?」「基本は家で動画見たり、あまりみんなとか笑いと思う。たまに服を買いに行ったり、外食したりかな。」「へー、お気に入りの店とかあるの?」「中華とか、後はチェーン店、牛丼とかが多いかな。なんか好きで。」「そうなんだ、美味しいよね。」。「そういえばいきなり声をかけてしまってごめんね。驚いたでしょ?」「驚いた。私?振り返ったら走ってきていたから。(笑)。」「怖いですよね。すいません。」「周りからすごい注目を浴びていたから。(笑)」「本当、皆見てたよ。」「いやー、申し訳ない!」。「結構ゼミとかでも女性と食事と化しているんですか?」。小島さんがサラダを分けつつ聞いてきた。「いや、そんなに。大学生の女性と食事に行ったのはこれが初めて。」「俺も。」「へー、そうなんだ。」。二人はどこか表情が良く良いリアクションをくれた。「2年だから一応来年から就活だね。」。ダイチが肉を口に運びながら話し出した。「そうだね。何か少し仕事したくないなぁ。今の時間がもう少し続いてほしい。」。岡田さんが現実に呼び戻されたかのように嘆いた。「確かに(笑)。私もまだ全然考えてない。」「いやいや、俺も全然だよ。小島さん以上に何も考えていない。」「俺も。まあ何となく決めるのかね?皆そうしてきているわけだから。」「そうだね。そうやって当たり前のように就職するんだろうね。仕事するという事にネガティブな印象を持っている、同世代らしい連帯感を感じより仲良くなった。「そういえばさぁ、二人はどんな男が好きなの?」ダイチが聞いた。「唐突だな(笑)」。女性陣も笑った。「良いだろう?こういう場所なんだから。興味あるし。」。女性二人は目を合わせ、岡田さんが話し出した。「私は・・価値観が合うとか、精神的にしっかりしている人かなぁ。あと自分の考えがしっかりしている人」。「ふーん、しっかりしている男っていう感じだね。」「そうだね、そういう人が好き。」「見た目とかは?」「見た目はあまりないかな。こういう顔が好き、みたいなのはないなぁ。」。岡田さんらしい好みな様な気がした。しっかりとした男。「小島さんは?」「私は明るい人かなぁ。自分が少しネガティブだから、その方がバランスが良いというか。あとは、いつも一緒みたいな、べたべたな関係よりもある程度お互いの時間を認められる人がいいかな。」「あー、それはそうだよね。分かる。」。岡田さんは小島さんに同調していた。こういうのテレビとかで見たことあるなぁと思った。「二人は?」。ダイチが「えー、何となく守ってあげたくなる可愛い感じの女の子かなぁ。見た目とか感じ的に。」「へー、どっちかと言うとおとなしい感じなんだ?」、岡田さんが応じた。「そうだね、そういう子に弱い。(笑)」「何笑っているんだよ、気持ち悪いな・・。」。ダイチの変な笑いにみんな笑った。「山本君は?「俺は・・、芯がしっかりしている人かなぁ。価値観とかもそうだし、何か全体的に。」「あー、まあそう女性かっこいいよね。」「うん、そんな感じかな。」。「今気になっている人とか居ないの?」。少しドキッとした。いつもなら突っ込むはずのダイチの発言だがナイスだと思った。「私は特にいないかなぁ。」。小島さんが先に行った。「遥は・・・、どうなの?(笑)」。小島さんの笑みは確実に何かを含んでいた。「まぁ、居るは居るけど。好きなのかなぁ?」「そうなの?大学の人?」「いや、バイト先の人。気になっているというか、まあ少しだけど・・・。」「へー、そうなんだ。バイト先でそういうのあるんだ。俺の所は全く無いよ。(笑)」「そうなの?(笑)」。皆がいい感じで笑い俺も応じたが心穏やかでなかった。「で、その人とは両想いなの??」。ダイチが攻めて聞いてくれた。「んー、向こうは気づいてないかな。こっちもそういう感じ出してないから。ただの友達」。「そうなんだ。」「気持ちは伝えないの?」。小島さんがズバリ聞いてくれた。「今はなんも考えてない。無いんじゃないかな?んー、分からない。」「そうなんだ。まあ色々あるよね。」「なんだその〆は。」。ダイチの変なボケと俺の突っ込みでみんな笑ってくれた。「でもさ、二人とも見た目の好みないとか嘘だよ。何かあるでしょ?」「えー、本当に何もないよ。」「小島さんは?」「んー、まあしいて言えばメガネかけている人とか。(笑)。」「なんだよー、俺コンタクトだよー。」「お前が眼鏡かけてもダメだよ。」「すごい山本君残酷。(笑)」「ホントだよ!残酷すぎる!」。みんな笑っていた、俺も笑っているが岡田さんに好きな人がいるという事がどこか引っかかっていた。お酒のおかげでそこまでではないが、それでも心に引っ掛かりを感じていた。

その後もわあわあ盛り上がりみんな仲良く話していた。「明日もあるし、そろそろ終わりかな?」時間は9時を回り俺が促してそろそろ帰ろうということになった。会計はほんの少し男が多く出す言うと彼女達は「全然出すのに」と申し訳無さそうながら感謝していた。そんな所も素敵だと思った。

帰り道、皆少し疲れた感じで横一列で並んで歩いていた。「美味しかったね。」「うん。でもお酒飲んだせいか疲れた。」「いやー、でも本当今日はありがとう。すごい楽しかった。」「俺も、本当に楽しかった。」「いえいえ、こちらも。ね?」「うん、楽しかった。こういうの言いね。ストレス発散になった。」。焼肉とアルコールのおかげであっという間に仲良くなった。大学生でみんな同じ学年、少し青春っぽさを感じていた。岡田さんが横にいた。うれしい反面好きな人がいるという情報のせい少しむなしい。どんな奴なんだろうな。そんなことを考えながらちらっと岡田さんを見る。やっぱり可愛い。地下鉄のホーム、男性陣、女性陣は互いに逆のホームで電車を待っていた。こっちの電車が来るというアナウンスがする。僕ら二人は手を振った。女性二人も明るく手を振った。電車が僕らを遮りゆっくりと到着した。電車の窓越しに彼女たちを確認し、軽く手を振り電車は出発した。

「いや~お疲れ。楽しかったね。上手くいったよ」「そうね。二人とも楽しそうだった。上手くいったと思う。」「そうだろ!俺のおかげだな。」「そうだな。ダイチの勢いが良かった。」。ダイチは突っ込まない俺を不思議な目で見た。「まあそうね。勢いでいけば良いんだよ。」。少し悲しく、アルコールで疲れていた俺はダイチに突っ込む余裕もなかった。

夜の電車、無機質な地下の景色に電灯はすこしまぶしく感じた。電車に揺られながらさっきまでの彼女が頭で繰り返し流れていた。

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