9章
*登場人物
・山本しょうた(主人公)
20歳、大学生。奥手でありながらプライドも高い。親と子、3人家族。父親は公務員、母は専業主婦。単発バイトでお金が無くなった時だけ働く。
・宮内ダイチ(大学の友達)
しょうたの大学生の友達。同い年。大学デビューで自身の本来の明るさを出し始めた。性格は少し天然であほ、しかし素直、行動的である。連絡できる友達も多い。
・岡田遥(大学の可愛い女の子)
しょうたが可愛いと思っている女の子。適度にノリも良く男女関係なく仲良く話すことが出来る。居酒屋でバイトをしており、同僚のたくみを気にかけている。
・小島洋子(遥の友達)
遥の友達。まじめで大人しく将来のこともしっかりと考えている女の子。恋愛したい気持ちもあるが今は勉強が大事だと思っている。
・ユウタ
しょうたの高校生の同級生。ミディアムヘアの同族男子。
・未来
ラブメイトランド相談員。しょうたの相談相手。
「さて何を食べようかなぁ~♪」「1000円ちょいしか出さないからな」。根が安いファミレスに入り何を食べるか考えていた。ダイチの下手ながらも奇跡のファインプレーで連絡先をゲットした。自然とその後はご飯をおごってやろうと思った。店に入ってメニューを平き眺めているこいつを見ておごりを後悔している自分がいる。
2人はハンバーグセットとドリンクバーを頼み、各々好きなドリンクを取りに行った。俺はカフェオレ、ダイチはメロンソーダを手に取った。「いやー、お疲れ!。」席にドカッと座るとダイチが言ってきた。大学の疲れの事を指していない事は直ぐに分かった。「いや、良くやったよホント」「いやいや、大したことはないよ。でも言っただろう?ノリが大事だって?」。わざと嫌味っぽく言っている。いつもなら冷めた感じでスルーするのに今日は笑ってしまった。「岡田遥さんか、可愛らしい人だな~」「うん、可愛い。」。連絡先から名前が分かった。妙に凛々しく素敵な名前だと思った。連絡先を交換した時に顔を近くで見て思った。やっぱり彼女はかわいい。
「早速メッセージを送ろうよ」「え・・・」「さっき交換してこのタイミングで送るのは普通だよ。明日送る方が変だろ。」。確かにそうだけど、どんどん進む展開に追いついていけなかった。「今?」「うん。今の勢いでいっちゃおう」「んー、でも、何て送る?」。「そうねぇ」。ダイチは軽く唸りながらスマホを打ち込んでいく。「先程はすいません!急でびっくりしますよね。」これから俺らと仲良くしてくれると嬉しいです!」。「これで良くない?」。「あほみたいじゃない?」「何を言っているんだよ、これで良いんだよ」。ダイチはささっと送信を押した。「え?送った?」「うん」「何だよ、もう少し悩めよ。」「いいよこれで。」。まあメッセージはダイチからだし俺は関係ないから大丈夫だと思った。「いやーしかし焦ったね~。」。連絡先を交換した話、必死の顔や上ずった声、クールに装う俺の態度を二人で談笑しながら盛り上がっていた。ハンバーグが運ばれてきた。「今日はおごっていただきありがとうございます。」「はい、嫌だけど。まあでも助かったよ。ありがとう」「いただきます!」。ハンバーグを切り分け一口食べる。「うん、安定の味だな。普通にうまい」。
ピロン!
スマホの音が鳴った。20分位経った後だった。「来た~!」「何て返ってきた?」。おーっと唸り、スマホの画面をこちらに向けた。
「大丈夫です。よろしくお願いします」
「おー!悪くない反応!?」「そうだよな!さて、次はどうするか」「上手く盛り上げないと」「とりあえず自己紹介するか。」。ダイチはスマホに素早く打ち込んでいく。「これで良いか」「見せて」。「俺らも経済学部で、サークルは東京13同好会というアイドルサークルに入っています!ほぼ出ないけど(笑)」。「えー、これは嫌。言うの?」「参加してないから別に良いじゃん。」「そうだけどさぁ」「何だよもう。最悪俺だけ入っているということにしてやるよ。」。ダイチが送信を押してしまった。「送ったの?」「うん。」「えー、終わったかも」「大丈夫だよ。何とかなる」。不満がありながらもダイチの勢いに打ち負かされていた。結果を出しているせいか否定しきれない自分がいた。少し冷えたハンバーグを食べながらしゃべり、時にスマホを二人でちらちらと見合った。
ピロン!
「来た!」「うわー、怖い。」。アイドル話のせいか緊張感が走る。「私はサークル入ってないです。バイト忙しくて。私も東京13好きです。花帆ちゃん推しです。」。「・・おー・・・まさかの共通点!」「好きだったとは。」。夏帆ちゃんは俺も好きで押しの中でも上位に入るメンバーだ。顔が小さくて目が大きく、猫っぽい気まぐれさと愛くるしくて綺麗なダンス、人気もトップクラスでセンターを他のメンバーと交互に交代している感じだ。とりあえずそれの返答を送ろうという話になった。「夏帆ちゃん可愛いですよね。俺らも大好きです!最高!」
ピロン!
返信はすぐ来た。「本当に可愛いと思います。あの顔の小ささは羨ましい。」。
「良い感じだね。」「うん、結構良い感じ。次はどうしようか?」。「後はお前から連絡すれば良いんじゃないの?飯とか誘えば?」「うーん、まだハードル高いな。」「何だよ。じゃあどうする?」「うーん、学食を一緒に食べるとか?」「おっ、良いね。俺も行くの?」「うん、出来たら来てほしい。」。「分かった。・・・・、これで良くね?」。メッセージは簡潔に食堂でご飯を食べないかという内容だった。「あっ、それとお前に連絡教えて良いか聞いておくよ」。「うん、ありがとう。」。「良かったら今度学食一緒に食べませんか?それと今日一緒にいた山本しょうたに連絡を教えて良いですか?」。ダイチはメッセージを送った。送った後に気付いたようにドキドキしてきた。これでノーだったらどうしよう。もし交換したくないと言われたら凄いショックだ。・・・怖い。
ピロン!「おっ、来た!」
「はい、どちらも大丈夫です。わかりました」。
思わずガッツポーズが出た。「おし!・・あっ。」。ダイチがこっちを見ている、少しして笑った。「そんなガッツポーズ取る?そんな声聞いたことないよ!」。ダイチは笑い転げている。「うるさいな・・・。喜んで何が悪いんだよ。」「そうだけどさ(笑)。そんなリアクション取る?!いやー、ツボに入った。(笑)。」「うるさいな。ドリンク取りに行くぞ。」「あー(笑)、俺も行く!」。こうして彼女と連絡先を交換することが出来た。不器用では無様ではあるがゴロゴロと前に進んでいる。カップにコーラを注ぎながらダイチはまだ俺を馬鹿にしてくる。いわゆるキャンパスライフを送っている・・・、すごい楽しんでいる気がした。