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とろけるプリンと天使様

「……とろける……プリン、とは……?」


レティシアの転入で慌ただしい一日を送った僕。

すぐさまベッドに横たわりたい気持ちだったが、独り暮らしの身としては、下校中にスーパーに寄らなくてはならない。健康のためにも自炊は大事だ。


そうして食品を品定めしていると、レティシアはなぜかデザートコーナーのプリンに釘付けになっていた。


「とろけるとはどういうことでしょう。意味が……はっ!口に入れた瞬間、口内が溶け落ちてしまうということ……!?」

「そんなわけないからね」


僕は彼女の眼前からとろけるプリンをふたつ手に取り、かごに入れる。


「食べてみたらわかるよ。今日のデザートだ」

「まあ!ありがとうございます!楽しみです……!」


無邪気にはしゃぎながら、カートを押す僕の後ろを従順な小鳥のようについてくる天使様はやはりどうしても人目を惹くようだ。


本人は一切気にしていないけれど……老若男女、皆が彼女の綺麗な髪や瞳、肌に見蕩れてはためいきをつく。


十年前、悪魔は観たことのある僕でも、天使は……今朝が初めてお目に掛かるものだった。確かにその美麗さに感嘆の吐息をつくことはわからないでもないから、今度顔を隠すための帽子や眼鏡を与えてみようかな、なんて思った。


とりあえずレティシアはどうやら、僕の部屋で暮らすことに決めたようだし。


「創人さまのごはんっ、あなた様のごはんっ」

「あんまりはしゃがないで。人並みの腕だし……美味しいかもよくわかんないし」

「創人さまが愛情込めて与えて下さるパンと水が、わたしにとっては最上の味でしたよ?お料理、楽しみです」


何も返せず、僕はエコバッグの持ち手を握り直した。


「持ちましょうか?」

「いや、大丈夫」


レティシアの向けてくる愛情表現はまっすぐだ。あまりにもまっすぐすぎて、眩しい。

こんなにも愛しげなまなざしや物言いはあまりに僕に不相応で、……少し物怖じしそうになる。


そして少し泣きそうになる、というのは、きっと気のせい。



「いただきます」

「頂戴いたします……!」


僕の手料理を前に、祈るように指を組み、そう宣言した彼女は綺麗な箸使いで食事を始める。


レティシアは、何をするにおいてもとにかく所作が綺麗だ。思わず一瞬見蕩れて、慌てて味噌汁を掻き込んだ。


「ピーマンの肉詰め、たまねぎのお味噌汁、お米も美味しゅうございます!あなた様がお料理上手で、レティシアは幸せ者です!」

「大袈裟だなぁ」

「今度わたしにも作り方をご教示くださいませ!お料理というものは天界にはありませんから、わたしもやってみたいです」


ふにゃりと笑い、綺麗な所作でぱくぱくと食べ続けるレティシア。……不思議な感じだ。なんだろう、この胸のあったかい感じ。

誰かと食事をするのって、こんなに……


「ごちそうさまでした!さあ、あなた様。とろけるプリンをいただきましょうっ」


プリンよりも蕩けそうな笑顔を向けられて、僕は僅かに口許を緩ませて肯いた。


確かにこの子は、天使様、だ。そう思いながら。

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