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軽やかにソーダを

「デートだというのに、その仏頂面はなんだ、ツキシロソウト」


悪魔は不満げに指摘し、僕の腕にその手を絡ませる。


「今日はデート日和だぞ。あたしと出掛けられることを光栄に……」

「触るな、悪魔」

「邪険にし過ぎよ。それと、悪魔じゃなくてヴァイオレット」


悪魔は更に身を寄せると、ぞっとするような声で命じるように言った。


「分をわきまえよ。これはお前の天使様からのご指名だぞ。あたしと天使様に従え。……出来るな?」


……返事ができずにいると、悪魔はするりと僕から離れてこちらを見据える。


「こんなにも美しい女と逢瀬ができて、何が不満だと言うのよ」

「僕はレティシアにしか心動かされたりしない」

「健気だこと。けれど、その天使様はあっさりとあたしにお前を明け渡したようだな」

「そんなことあるものか」

「だろうな。今日一日だけという約束だ」


悪魔は近くの自販機に駆け寄ると、行儀悪くガンとそれを蹴った。ぎょっとして駆けつける。


「何してるんだよ!?」

「飲み物が出る機械だと聞いていたのに、何をしても出ない。いつもこうだ」

「いつもこうだって、……ああもう、どれが飲みたいんだよ」


仕方なく小銭を入れてやると、悪魔は嬉々として自販機を見つめてじっと待った。


「……ボタン。押さないと出ないから」

「おお。これか」


ぴ、と細い指が軽やかにボタンを突く。

がこんと音がしてソーダが落ちてくる。


悪魔はそれをなんとか取り出すと、なぜか僕の方に差し出した。


「飲め、ツキシロソウト」

「そっちが喉渇いてるんじゃないの?」

「お前への贈り物だ」

「僕のお金なんだけど……」

「なに、そう恐縮することもないわ。有り難く受け取りなさい」

「悪魔からの贈り物を受け取ると地上に帰れないとか、神話じゃよく言うけど」

「なんの話だ。いにしえの事は知らんが、現代だぞ。意外と頭のかたい男ね」

「わかったからほっぺに缶を押し付けないで……」


冷たい汗をかいた飲み物を受け取ると、悪魔は朗らかにわらった。


まるでどこにでもいる悪戯好きな女の子のように。


「さて、ソウト。あたしは行ってみたいところがたくさんある。すべてつきあえ、今日を楽しめ。あたしのことだけを考えていろ。それだけが大切なことなのだから」

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