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不本意なデート

「創人さま、お味見をお願いします」


淡いピンクのエプロン(下校時に買ったものだ)を身につけたレティシアは、味噌汁を一口分ほど椀に取り、そっと差し出してくる。


ふわりと香る味噌の良い匂いと、口の中に広がる旨みに、僕は頷く。


「うん。上手にできてる。美味しいよ」

「まあ!ありがとうございます!あなた様のご指導の賜物です」

「レティシアが頑張ったからだよ。ごはんの量、これでいい?」

「はい。おかずとお味噌汁、運びますね」


なんでもない夕飯時の光景。けれど、幸せそのものの場面だ。


レティシアと食卓を囲んで、食べ終えたらじゃんけんで負けた方が洗い物をして。テレビを見たり会話を弾ませたりしてから、それぞれお風呂や水浴び(彼女は節水のためか小鳥の姿でそれをする習慣は変わらない)をし、そして歯磨きをしベッドに入る。


いつものように、少女の姿のレティシアをベッドに招くと、嬉々として僕の腕の中におさまる。


そんな平和な日々を過ごしているけれど、刻々とリミットは迫っている。


僕らは打開策を見出せないまま、幸せ順風満帆な恋人たちのように過ごしている。


首元を、焦りがじわりじわりと絞めてくるけれど、本当にどうしたらいいのかわからないのが現状だ。


そんなとき……満月を1週間前に控えた金曜の夜、レティシアは唐突に言った。


「創人さま、お願いがあります」

「なんだろう」

「明日ですが、一日ご予定は何もありませんでしたよね?」

「……友達もいないしね」

「良いのです、そんなことは!こほん。明日はあなた様には、デートへ行っていただきます。よろしいですね?」

「もちろん、構わないけど……」

「よかったです。それでは、おやすみなさい」

「え?あ、うん、おやすみ……」


少々強引な口調は緊張も孕んでいて、彼女らしくないと思ったけれど……僕はそのまま眠りに身を任せた。


そして翌朝。


目覚めた僕を迎えたのは、腕の中にいたレティシアがラグマットに正座して神妙な顔をしている事実。


そして……


「随分と寝坊をするのね、ツキシロソウト」


黒いキャミソールとホットパンツに身を包んだ、悪魔の少女だ。


……悪夢か?


「おい、こら、寝るな」


再びベッドに寝転んだ僕の肩を掴み、悪魔はくすくすと嗤う。


「天使様公認のデート相手よ。早くあたしをエスコートしろ」


「創人さま、約束でしたよね?デートする、と」


「僕はレティシアとはデートするけど、お前とはどこにもいかない!」


「あなた様、約束は守ってくださいまし」


頑固そうにのたまうレティシアだが、どういう風の吹き回しなんだろうか。

彼女のすることに全幅の信頼を置くならばまずはなぜ、は放っておいて悪魔とデートに行くべきなのか?


逡巡していると悪魔は呆れたように颯爽とドアを開け、


「さっさと着替えて出て来い。待っていてやるわ」


と宣言し、乱暴に閉めた。


「レティシア」

「なにも聴かないでください」


レティシアは微笑して、僕に着替えを手渡す。


「今日は彼女とデートをしてきてください。わたし、待っておりますから。あまり遅くならないようにしてくださいね?妬いてしまいますから」

「どうしてこんなことを仕組んだのか訊くのもいけない?」

「ええ」


そして繰り返す。天使の微笑を崩さずに。


「なにも聴かないでください。ね?」


……そうして僕は、天使様公認の悪魔とのデートに出掛けることになったのだ。不本意だ。

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