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デートの日

「ああっ、あなた様……!いけません、こんなこと……!」

「どうして?喜んでるみたいだけど」

「わ、わたし、わたし、おかしくないでしょうか?」

「じっくり見てるけど綺麗だよ」

「は、恥ずかしい、です……」


もじもじと試着室の開いたカーテンの奥で羞じらうレティシアに、女性店員さんがよくお似合いですーと笑う。僕もそう思う。


レティシアは涼しげなブルーのワンピースを身に纏っており、それは僕が店員さんに頼んで見立ててもらったものだった。華奢な身体に纏わり付くその服は本当によく似合っていたし、パールつきの白いサンダルもとてもよかった。


「すみません、どっちもこのまま着せていくのでタグ切ってお会計してください」

「かしこまりましたー!お買い上げありがとうございますー!素敵な彼氏さんでよかったですね!」

「創人さま!ですからこんな贅沢、いけませんってばっ」

「そのワンピース、よく似合ってるけど。嫌い?」

「いえ!とても気に入りましたが!」

「お会計で」

「はぁーい」

「えぇええ!?」


レティシアの悲鳴を背後に、レジへ向かう。


会計を済ませ、真新しい服を身につけたレティシアと手を繋ぐ。


「あ、あなた様~……本当によろしかったのですか?」

「今日はデートだから。それにレティシアは制服の他にワンピース1枚しか持ってなかったろ」


普段僕の部屋にいるときは小鳥の姿であることが多いため、なにも問題はなかったのだけれど……今日は特別だ。


「レティシアの着飾ってる姿も見てみたかったからいいんだ。よく似合ってるよ」

「……ありがとうございます。うれしい」


ふんわりと微笑み、ワンピースの裾を持って会釈するレティシアはまるでお姫様のようだ。


「それに今日はご両親のお墓参りですものね。綺麗にして参りませんといけませんね。さあ、参りましょう!」

「あ、そろそろ映画が始まる」

「え?」

「行こう、レティシア。映画。ここのショッピングモール、シアター入ってるから」

「お、お墓参りはー!?」


珍しく僕に振り回されるレティシアの手を引いて、シアターのあるフロアへ急いだ。

なんだか少し愉快な気分だ。



「わぁ……すごいですすごいです創人さま!ふわふわのパンケーキですよ!」


映画を見終わったら昼時だったので、カフェに入ることにした。僕はこういうところに入り慣れていないし、レティシアはもちろん初めてだったから戸惑ったが、無事に注文を済ませると、豪華なパンケーキがクリームやフルーツを飾られた状態で現れた。


レティシアは先程見た動物映画の感想をはしゃぎながら話し、パンケーキをぱくぱくと食べ、無邪気な天使様っぷりを存分に発揮していた。


「……でも、あなた様?」

「なに?」

「今日はなんだか普通のデート、みたいです。あの、お墓参りは……?」

「これを食べ終わったら行くよ」

「なんだか今日はぐいぐいモードですね?」

「嫌だった?」

「幸せすぎてこわいくらいです」


レティシアは笑ってフォークを動かす。


「なんだか気持ちが浮ついてしまいます。この前の水族館も素敵でしたけど、お買い物と映画のデートも叶えてくださるなんて……こんなに暢気で良いんでしょうか」

「まあ、思い詰めるのもよくないし。いいんじゃないかな、こういうのも」

「はい。でも、食べ終わったら絶対にお墓参りへ。だって……命日、なのでしょう?」


そうなのだ。


僕がレティシアを両親の墓前に連れて行きたい理由のひとつ。


今日が、大切な両親の命日だから。


悪魔と契約した、あの日からちょうど10年なのだ。

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