まずは自己紹介から
状況を整理しよう。
僕の名前は月城創人。ツキシロソウト、と読む。ありふれた16歳の高校生だ。ちなみに誕生日が来てないだけで2年生。趣味は読書とベランダにやってくる小鳥を愛でること。
そして平日の今朝、いつも通りにベランダへ続く窓を開けたら、そこにはいつもの白い鳥ではなく真っ白のノースリーブワンピースを纏った美少女がいた。何を言っているかわからないと思うが僕にもさっぱりな状況だ。
長い睫毛に縁取られた、よく磨いた黒曜石のような瞳。さらさらと風に揺れる長い金糸のような髪。抜けるように白い肌。の、美少女。
驚いて情け無い悲鳴めいた声をあげて、僕は後ろに倒れ込んだ。すると彼女も驚いた顔をして、僕に覆い被さり怪我はないですかと
連呼し始めた。
大丈夫だからと押しやったところ、先程の台詞が出たわけだ。
「わ、わたしのこと、好きなんですよね!?その胸にあるのは愛ですか?愛ですよね!せ、責任取ってわたしのつがいになってくださいっ」
「待って待って待って!話がさっぱりわからない!君は誰なんだよ!?どうして人のワンルームマンションに侵入してるんだ!?っていうか裸足だけど大丈夫!?そっちこそ怪我してない!?」
「ああ……あなた様はやはりお優しい……わたしの心配までしてくださるだなんて……このレティシア、どこまでもついて参りますわ」
恍惚と頬を赤らめて、レティシアと名乗った彼女は鈴を鳴らしたような心地好い声で告げる。
「改めまして、自己紹介をいたします。わたしはレティシア・コーディリア・ブランシェ。天界より参りました、天使にございます。そしてあなた様をつがいに望んでおります。どうか、わたしを娶ってはくださいませんか?」
優雅な口調に、柔らかな笑みを浮かべた口許にどきっとする。
それにしても、天使?つがい?……どういうことなんだ?まるで飲み込めないぞ。