アイスクリームとコーンのかけら
「……つけられていますね」
それは放課後のこと。公園のアイスクリームワゴンへ熱視線を注いでいたレティシアに、三段重ねのアイスクリームを与えていたときだった。
ぺろ、と桃色の舌でアイスクリームを舐めて幸せそうに笑っていたレティシアは、不意に重々しくそう言った。
「つけられてるって、なに?」
「尾行されているってことです。つい先日からちらほらと気配を感じてはいたのですが、どなたなのでしょう。あなた様のストーカーでしょうか?思い当たる節はございますか?」
「僕にストーキングする物好きなんているわけない。レティシアのストーカーの可能性が高い。だとしたら」
「だとしたら?」
「心配ではある」
「ふふ。大丈夫なのです。わたしとあなた様、どちらを狙っていようがこてんぱんにして差し上げますから」
力こぶなんかできそうにもない細腕を振るうレティシアだけど、そもそも誰かにつけられてるなんて本当なんだろうか。
あるとしたらやはりレティシア関連なのだろうと思うけれど。
「おいしいです!あなた様にも、あーん」
「僕はいいよ」
「おいしいのですよ?」
「レティシアがおいしそうに食べてるのを見ておく」
「まあ。あなた様ったら」
ほんのりと頬を桜色に染める彼女。
……カップルみたいな会話をしてしまった。いかんいかん。
「あら、手がべたべたになってしまいました」
「ハンカチあるけど」
「お手洗いで綺麗にして参ります。待っていてくださいね?」
にっこりして、レティシアは小走りで公園のトイレへ向かう。
僕はレティシアが微かに地面へこぼした、アイスクリームのコーンのかけらに鳩たちが群がるのを眺めていた。
……そんなのんきなことを、している場合じゃなかったのに。




