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王子様とお姫様と、それからわたし。

月城創人くん、というクラスメイトがいる。


物憂げな面差しに遠慮がちな優しい声をした、細身のすらっとした綺麗な男子だ。決して派手ではないけど、指先まで色白で、洗練されてる、と思った。初めて見たとき。


「早乙女さん、職員室まで資料一緒に運んでくれてありがとう」


囁くような声が降ってきて、わたしはどきどきしながら月城くんを見上げ……られなくて、そっぽを向く。


「べつに、同じ日直だしっ。月城くんのためじゃないし」


ああ、やだ、なんでこんな言い方しちゃうんだろう。

心の中で頭を抱えたけど……


「そうだね。それでも、ありがとう」


程好く低くて落ち着いた声が、礼儀正しくそうこたえた。


……王子様みたいだ。

なんて思う。


ぎゃはぎゃは笑う品のない男子たちと、月城くんは全然違う。孤高で、潔癖で、言葉少なだけどそこがかっこいい。

なのに、最近は。



「創人さまっ。こちらにいらしたのですね!」


ぱたぱたと可愛らしい足音がして、月城くんとシンクロするようにそっちを見たら。


「レティシア」


胸を弾ませて立っていたのは、……天宮レティシア。

転入してきた女子で、絶世の美少女。


王子様にお似合いの、お姫様みたいな子だ。


この子が来てから、月城くんは少し変わった。


どうやら彼女とは恋人らしくて、今まで見たことない柔らかく優しげな顔を向けるようになったし、いつも彼女と一緒にいる。話によると同棲しているともいう。……すごくいやだ。


暗澹たるわたしの胸中なんか知らない天宮さんは、澄んだ瞳を向けてくる。


「早乙女さんも、ごきげんよう。創人さまをお借りしてもよろしいでしょうか?」

「……べつに、いいし。全然」

「ありがとうございます」


天使みたいな笑顔をつくり、自然と月城くんと手をつないで歩き出す。


その後ろ姿が、憎いと思う。


今までは、誰も月城くんの魅力に気付かなかった。わたしだけが知っていた。


なのに、そうじゃなかった。

そうじゃなくなった。

王子様とお姫様とみすぼらしいわたし。敵うわけがない。


でも、でも、月城くんは、わたしだけが知ってる憧れの人でよかったのに。どうしてこんなことになったの?


胸が黒い想いでいっぱいになる。もやもやと充たされて、充たされてもなお止まらない。


天宮レティシア。あの子がいなかったら、わたしはもっと月城くんに近づけたかもしれないのに……


そのとき。


「あの女が憎いか?」


不愉快な声、と認識する前に。

ばくん、と心臓が強く胸を叩いた。


「では、おまえがあの女を消してしまえ」


みるみるうちに視界が、いや、意識が暗くなって、わたしは漆黒の闇に飲み込まれた。


何が起きているか、わからないまま。

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