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今を生きる事  作者: 橘 螢雪
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無職になる


「辞めます」


 長い沈黙を切り裂くように発せられたその言葉は場の空気を重いものへと変化させた


「本当にそれでいいのか?」


「はい……」


「仕事がキツイなら他の仕事に変える事もできるし、鬱病みたいな感じなら病院に行く事も」


「鬱病とかではなくて、ちょっと説明が難しいくて……」


 辞めたいから辞めますなどと言えるわけがない。辞める理由もなく続ける理由もない。

生きるために働くと言われても実感はわかないし、好きな事をするために働く事も理解ができなかった。


「理由は別に聞かないけど、本当に良いんだな?」


「はい……」


「わかった。 来週までに辞表を書いて持ってきてくれ。 自己都合による退職でいいだろう」


 これで私は無職になる。


 成り行きでこの会社に勤める事になっただけで、やりたい仕事かと言われたら別である。やりたい仕事をできている人間の方が少ないのは承知の上だが、それでも自分の興味ある事や好きな事を仕事にしたいと思うのは自然の事だろう。ただ、問題があるとしたら私自身に興味のある事好きな事が無いと言うこと。


 幼い頃からそうだった。将来の夢なんて無くてその場の思い付きで適当に答えていたし、授業の作文も書いていた。周りの人間は自分の夢があり、実現させるために努力を怠らなかった。

そんな人間が眩しかった。


「父親には連絡しないと」


 仕事中だろうからrainでいいかな。なんて言われるのだろうか。説教でもされるのだろうか


『辞める事にした』


『そうか。お前がそうしたいのならそれが正解なんだろう』


 意外な返信だ。普通仕事を辞めると言ったらもっと咎められるものだと思ったのに。私が辞める事は想定済みだったのかな。


「帰ったら寝ようかな」


 何が正解で何が間違いかなんて私にはわからないし、誰かにわかる事ではない。ただこの選択が私の人生で大きな分岐点になる事だけは間違いないと思う。


 暫くは休憩して、来月から新しい仕事探せばいいでしょ。どうせすぐに見つかる


 まだ夏と呼ぶには早すぎる6月中旬 私は無職になった

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